2017-11-11

虐待されて育ったうちの犬

うちの犬は元繁殖犬だ。繁殖犬というのは、ペットショップなどに子犬を売るための母犬のことで、しばしば恐ろしい程にひどい環境虐待されて育てられる。生涯、一畳ほどのケージから出られなかったり、ろくに掃除をされず排泄物まみれだったり、もちろんむりやり妊娠させられたり。役割が終わったら文字通り使い捨てる。こういった業者はパピーミルとか言われる。子犬を売るというビジネスの特徴上、特に規制もない状態では、利益の最大化のために命が軽んじられているのが現状だ。

から、もし犬を迎えようという人がいたら、どうかペットショップでは買わないでほしい。需要が、そういった供給を生み出すから。生育環境をチェックして、良心的といえるブリーダーから、少し高いかもしれないけど、命に敬意を払って迎え入れてほしい。

さて、うちの犬、仮にKとすると、Kもまたそういったパピーミル虐待されて育った母犬のチワワだった。パピーミルからボランティアの手で救出され、放置されたままだったヘルニアと目の病気治療してもらい、避妊手術を終えて、うちにやってきた。Kは人間を信じられなくなっていて、私たち家族ボランティア譲渡会に訪れたときも、ひとり(一匹?)ケージの隅で丸くなり、外を睨んでいた。他の元繁殖犬がわりあい人懐こかったので、余計にKの辿ってきた時間過酷さを思い知った気がする。「この子はなかなか、引き取り手が見つからなくて。お試しでもらわれていっても、返されてしまう」とボランティアさんは言っていた。そりゃそうだろう。Kは愛嬌ゼロで、沈んだ目をしていたから。

私たち家族はKを引き取った。引き取りにかかった実費と手術費などを負担するしくみなので、7才のKを引き取るのに8万円ほどかかった。安い業者ならチワワの子犬が買える値段だ。これも、Kを引き取る人がなかなかあらわれなかった理由なのかもしれない。うちに来てからのKは、ずっとケージの中で寝て、私達を睨んでいた。ウンチをすると怒られていたのか、私たちにバレないようにウンチをして、それを食べてしまうのを繰返した。まるで死ぬのを待ってるみたいだった。

三ヶ月ほどして、獣医から無理矢理にでも散歩に連れて行ってみてはとアドバイスされ、Kを外に連れ出すことにした。Kは外に出たことがなく、田舎私道で車のない静かな小道でも、とたんに怖がって体を震えさせていた。私たちはKの匂いがついたタオルを嗅がせて安心させながら、少しずつ、本当に「今日は三歩も歩けたね」と言った具合にして、Kとの散歩を続けた。

ある日のことだ。Kが道路脇の草に興味を持ち、においを嗅ぎだした。どこかの犬がおしっこをしていたのかもしれない。Kはその上から自分おしっこをかけ(うちの私道なので問題ない)、急に、何かせきを切ったように、すくすくとあるき出した。その日から5分、10分と歩く時間を伸ばし、今では小さなチワワの体で、毎日、合計で一時間半ほど、元気に散歩するようになった。

散歩をしてからストレスが発散されたのか、Kは自分ウンチを食べることがなくなった。ケージの外に出て、家の中を散歩したり、家族おやつをおねだりしたり、散歩をおねだりしたり、ストーブの近くの温かい一等席を陣取るようになった。好奇心にあふれた丸い瞳で、家にあらわれたヤモリなんかを見つめるようになった。寝るときは、家族と一緒に寝るようになった。Kは出迎えなどはしてくれないけど、私たちはKが少しでも人生(犬生?)を取り戻したことに、本当に満足している。

Kの正確な誕生日はわからない。だからうちに来た日を誕生日にしている。それで、今日はKの誕生日だ。Kの大好きな鳥ささみとさつま芋を茹でて、ささやかにお祝いしようと思っている。K、ずっとずっと、長生きしてね。

  • https://anond.hatelabo.jp/20171111115905

    怒られるとうんこ食うのか。すげーな。頭が良いから起こる不幸だな。

  • anond:20171111115905

    いい話だ うちもパピーミルから逃げ出してきた子犬が明らかに虐待されていたので、お金を払って引き取ったよ 元気に生きて天寿を全うした 日本はこの辺にもう少し法規制が入っても...

  • anond:20171111115905

    犬や猫といった小動物が可哀想な目に合うのがダメすぎる みんな可愛がられて幸せになってほしい 想像しただけで泣けてくる

記事への反応(ブックマークコメント)

 
 
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