サウジ司法長官、11兆円が不正流用と指摘 汚職摘発で
サウジアラビアのシェイク・サウド・アル・モジェブ司法長官は9日、組織的な汚職や横領で少なくとも1000億ドル(約11兆3300億円)の公金が不正流用されていたと述べた。
モジェブ長官によると、今月4日に一斉摘発が始まった汚職捜査で、合計201人が事情聴取のため拘束されている。名前は明らかにされていないが、高位な王族や閣僚、有力経営者が含まれているもよう。
同長官は、「この不正行為の証拠は非常に強力だ」と述べた。さらに、汚職摘発はサウジ国内の経済活動に影響を及ぼしていないと強調し、凍結されたのは個人の銀行口座のみだと語った。
モジェブ長官は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32)によって最近設置された反汚職最高評議会による捜査は「とても迅速に進んでいる」と語った。これまで208人に事情聴取を行い、うち7人は不起訴で釈放されているという。
同長官は、「判明した汚職行為の範囲は非常に大きくなる可能性がある」とし、「過去3年間におよぶ捜査に基づき、数十年間にわたる組織的な汚職や横領で少なくとも1000億ドルが不正流用されたと推計している」と述べた。
最高評議会が捜査を次の段階に進める明白な権限が、法律によって与えられていると同長官は指摘。7日には「重要参考人」の銀行口座を凍結したと語った。
長官は、「捜査を受けた個人の身元や容疑内容をめぐり、世界中で多くの憶測がされている」と述べ、「サウジ法制の下で保証された法的権利が完全に適用されるのを確実にするため、現時点で個人に関する詳細は明らかにしない」と語った。
拘束者には、富豪で投資家のアルワリード・ビン・タラル王子や、前アブドラ国王の息子で4日に国家警備隊長の職を解かれたミテブ・ビン・アブドゥラ王子、その兄弟で元リヤド州知事のトゥルキ・ビン・アブドゥラ王子が含まれているとみられている。
このほか、テレビ局MBCを所有するアルワリド・アル・イブラヒム氏、サウジアラビア投資庁元長官のアムル・アル・ダッバグ氏、王立裁判所元長官のカハリド・アル・トゥワイジリ氏、建設大手ビンラディン・グループのバクル・ビンラディン会長が拘束されたもよう。
拘束者の一部は、首都リヤドの外交施設が集まる地域にある5つ星ホテル「リッツカールトン」に留置されているとみられる。同ホテルの滞在客は4日遅くに部屋を明け渡すよう求められ、ホテルの外にある門は5日以降閉鎖されている。
米政府は7日、サウジ政府に対して捜査に続く訴追が「公正で透明性のある」かたちで行われるよう求めた。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは、サウジ当局が「拘束者一人ひとりについてそれぞれ法律および証拠上の根拠をすぐに示し、拘束者全員が法的権利を行使できるようにする」よう訴えた。
サウジアラビアでは宗教家や人権活動家、知識人などの拘束が相次いでいるが、当局は拘束の理由を明らかにしていない。
(英語記事 Saudi anti-corruption probe 'finds $100bn was embezzled')