【音楽理論No.2】ピアノの白鍵と黒鍵の並び順はどのようにして決まったのか?等の数学的説明

こんにちは。@ackcvanilla1(Rana_34164)です。

音楽を習っていると、どうしても次のような疑問にぶつかると思います。

  • なぜ1オクターブは12音なのか?
  • なぜメジャースケールは全全半全全全半で7音なのか?
  • ピアノの白鍵と黒鍵はなぜあのような配置になったのか?
  • 4度圏(5度圏)の並び順はなぜあのような並び順なのか?

これらの疑問は、

  • 2音を同時に鳴らしたときに綺麗に聴こえるのはその周波数比が簡単な整数であるという音響物理学的な知見
  • ピタゴラスが編み出した、最も綺麗に聴こえる周波数比に執着した音の分割方法が世界中で大ヒットした

という2つの事柄を数学(の計算)を使って裏付けていくとすっきり解決します。

以下、それを説明していきたいと思います。

不協和曲線

ある音 f0f[f0, 2f0) を同時に鳴らしたとき,どの程度心地よい響きになるかという実験を行った結果,2f0, fの周波数比 f0:f が簡単な整数比で表せられるほど心地よい響きになるという知見が得られた.

特に,互いに素な整数で表せる最も簡単な整数比 2:3 が最も響きが良いことが分かった.

ピタゴラスの音作成方法

ピタゴラスは「万物の根源は数である」という物の考え方をして様々な事象に向き合った人である.音の響きについても,上で書いた音響物理学的な知見が得られる遥か昔に同様の結論(互いに素な整数で表せる最も簡単な整数比 2:3 が最も響きが良い)に達したようである.ピタゴラスは,その知見に基づき,音楽を奏でたいのなら,

「ある音 f0 を起点に,その周波数を32倍した音を次々と作り出して響きの良い音を集め,それらを使って音楽を奏でるとよい」

と考え,音を次々と作成していった.ただし,単純に32倍していくだけだとどんどん周波数が上がっていき,人間の聴こえない音だらけになってしまい音楽の意味をなさなくなるので,オクターブの関係を持つ音は同じに聴こえるという性質を使って,オクターブの区間内におさめるように制限を置いた.

では,実際にピタゴラスの音作成を行う.起点とする音の周波数をf0=1とし,オクターブの区間[1,2]に収まるように2で除しながら32を乗じる操作を繰り返す.実際に計算を行うと,13個目の音がオクターブの右端2に非常に近づいたため,ピタゴラスはそこで操作を打ち切った.なお,3m2nは任意のn,mを選んだとしても2ピッタリにはならないため,ピタゴラスは最初に最も2に近づいたと実感できる13個目の音を作成した時点で打ち切ったと思われる.計算結果を表で示す.f0=1fiの整数比は2ni:3miである.なお,表中のセントciとは,音の距離を測るときに用いる尺度の一種で,ある音の周波数を f とするとき,次式で定義される.

c=1200log2f

セントでオクターブの区間[1,2]を測ると[0, 1200]となる.

計算結果は周波数の小さい順に出てこないので,小さい順に並び替えてある.計算して出てくる順番を知りたければ,3の数 m の順番をたどると良い.

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さて,この状態ではf12がオクターブからはみ出しているので,はみ出ないように,c12=1200にすると,次表となる.

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表のうち,最も簡単に表されていないi=5をなんとかしよう.今,i=4からi=6について,距離(セントの差)が

c5c4=113.685c6c5=90.225となっていて合わせてc6c4=203.910となっているが,これを

c5c4=90.225c6c5=113.685としてc6c4=203.910となるようにすると,次表になる.

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さて,以上の議論をもとに,最初に挙げた疑問に答えてみよう。

(※上表はピタゴラス音律ではない.ピタゴラス音律はさらに整数比の簡単化を図るためにさらなる修正を行っている.)

なぜ1オクターブは12音なのか?

ピタゴラスの音分割法により定められた12音がよく響き合う音で、かつ、原理を知っていれば誰でも再現可能な方法であるため、世間一般に浸透しやすかったからである。

なぜメジャースケールは全全半全全全半で7音なのか?

表を見ると、整数比の中でも特に簡単な整数比となっているものがあり、それを試しに7つ抜き出してみると、それがまさしくメジャースケールとなっていることが納得できるはずである。

ピアノの白鍵と黒鍵はなぜあのような配置になったのか?

表を参照。簡単な整数比になっている音を白く、なっていない音を黒くしてメジャースケールの音とそうでない音の見分けがつくようにしたからである。

4度圏(5度圏)の並び順はなぜあのような並び順なのか?

3の数 m の順番に並び替えてみよう。そういうことである。

自分でも考察をしてみると面白いです

例えば、3の数の出現パターンは7を足して12で割ってその余りを次々とつなげたものになっているし、セントの距離のパターンも2種類しか出てこない。表を自分なりに考察してみると、より理解が深まるものと思われる。