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初めてお読みになる方はこちらからどうぞ→『第一話 来年から幼稚園』
前回までの内容
来年幼稚園の入園を控えた息子“たける”は、超がつく、繊細で感受性の鋭い気質の持ち主。
「ママと離れては幼稚園に行きたくない」という意志を示すたけるにとって何が必要なのかを考え、集団での活動に慣れるため、保育園児との交流保育に参加したたけるとママ。
しかし、勢いに圧倒されるゲームに心が折れたたける。
ふたりは隅で見学し、交流保育の時間が終わるのを待った。
“たける”のように、繊細さや感受性の豊かさ鋭さ、敏感さを生まれ持つ気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)=人一倍敏感な子と言います。
HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思案・行動することを好みます。これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。
また、HSCは些細な刺激を察知し、過剰に刺激を受けやすいせいもあって、家や慣れている人や場所では絶好調でも、新しい人や場所、人混みや騒がしい場所が極端に苦手なのです。
さらに他の子は問題なくできることを怖がったり、小さいことを気にしたりしがちですので、「内気」とか「引っ込み思案」とか「臆病」とか「神経質」などとネガティブな性格として捉えられ、「育てにくい子」として扱われてしまう傾向にあります。
これらはHSCの、微妙な刺激や変化を敏感に感知する繊細さ(先天的な気質)にあるのです。
5人に1人は、HSCに該当すると言われています。(*HSCはアメリカのエイレン・アーロン博士が提唱した概念です)
HSC・HSP(Highly Sensitive Person)の特徴
①刺激に対して敏感である。ちょっとした刺激でも感知してしまう。すぐにびっくりする。
②過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒され、人より早く疲労を感じてしまう。人の集まる場所や騒がしいところが苦手。誰かが怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られているシーンを目にするだけでつらい。
③場の空気や人の気持ちを読み取る力『共感する能力』に秀でている。細かな配慮ができる。
④自分と他人との間を隔てる「境界」がとても薄く、他人の影響を受けやすい。他人のネガティブな気持ちや感情を受けやすい。
⑤直感力に優れている。漂っている空気や気配・雰囲気などで、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。先のことまでわかってしまうことがある。物事の本質を見抜く力がある。物事を深く考える傾向にある。思慮深い。
⑥モラルを重視する。正義感が強い。
⑦自分のペースで思案・行動することを好む。自分のペースでできた方がうまくいく。
⑧静かに遊ぶことを好む。集団より一人や少人数を好む。1対1や少人数で話をするほうがラク。大人数の前や中では、力が発揮されにくい。
⑨自己肯定感が育ちにくい。外向性を重要視する学校や社会の中で、敏感な気質ゆえに求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまく行かなかった場合に自信を失いやすい。
⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応(様々な形での行動や症状としての反応)が出やすい。人の些細な言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。
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「ずっと幼稚園に付き添ってるママがいるよ」
交流保育終了後、支援センターのお部屋に戻って本を読んでいたたけるとママのところに、同じく交流保育に参加していた“こうたくん”がきました。
「たけるくん園庭で遊ぼう!」
「うん」
「こうして気の合う子と少人数で遊ぶのは平気なんですよね」
「たけるはさっきみたいな大人数や騒がしさが苦手で。先日幼稚園を見学させてもらったんですけどね、入園も一筋縄ではいかなさそうです」
「緑ヶ丘幼稚園に行ってきたの?」
「えぇ。少人数でたけるに合ってそうだし、本人もとても馴染んで楽しんでいたんです。だけど入園は別。『ママと一緒でなくては行かない!』って意志が固くて」
「そういえば、私の知り合いに毎日子どもと一緒に幼稚園通いしたママがいるよ」
「え!? 送り迎えだけじゃなくて?」
「うん。詳しくは聞いていないけど、入園から卒園までずっと、一緒に登園して降園まで園舎で待って過ごしたとか」
「それはママと子どもさんどちらの意志だったんだろう?」
「子どもさんが希望したみたいよ。その子はもう小学生で今は普通に通ってる」
「そんなことできるんだ・・・」
こうたくんのママから聞いたこの話は、疑問点もたくさんあったけど、模索していた、“たけるにとって必要なこと” を見つけるための重要な手がかりとなりました。
一緒に、かぁ・・・
夫婦の会話
「パパ、他の幼稚園に通ってた親子でね、1年間ずっと子どもさんに付き添って幼稚園に通い続けたママがいるんだって。すごくない?」
「へぇ、すごいね、そんなことできるんだ」
「でしょ?考えもしなかったよね。子どもさんの希望だったらしいけど、実際どんなかんじだったんだろう。気軽に過ごしたのか、居づらいけど頑張ったとか?・・・。先生もやりにくさとかなかったのかなぁ?」
「どうだろうね」
「でもどちらにしても、ひとつ選択肢が増えたんじゃない?」
「うん、それができると有難いよね」
「入園」への重圧がふっと軽くなったよ、希望の光が差し込んできたみたい」
「うんうん」
「あ、でもその間仕事できなくなるね」
「うん・・・、それでも、できるんだったらお願いしたいな」
「うん、覚悟だね。じゃあ、たけるにもこのこと言って良い?」
「うん」
「たける、今いい?」
「今日こうたくんのママに聞いたんだけどね、他の子のママで、子どもと一緒に幼稚園に行ってあげてたママがいるんだって」
「うん」
「幼稚園に送るだけじゃないよ、ママも帰らないで終わるまで幼稚園にいるの」
「うん・・・?」
「たけるは初めてのところが苦手でしょ。幼稚園、慣れるまでママが一緒だったら行こうって気持ちになる?」
「うん!」
「だよね!よし、たけるに合った方法は見つかった。入園前までに先生にお話ししてみようね」
親が子どもに付き添って幼稚園で過ごすことを、先生や園がどのように受け止められるのか、
いつまで付き添うのか、
そもそも本当にそれが可能かどうか、
仕事はどうするか・・・
まだ見えない部分はありましたが、トラウマを負いやすい敏感・繊細気質であり、ママと一緒でなくては幼稚園へは行かないという意志が固いたけるが集団生活へ移行するための解決策がひとつ、私たち家族に提供されたのでした。
次回につづく・・・
(*この物語は、実話をもとにしていますが、個人名や団体名、エピソードの一部に変更を加え、事実と異なるところがあります。)
ー著書紹介ー
~幼かったあの日の私を抱きしめに行こう。
本当の私(ママ)になるために。~
というキャッチコピーの本、『ママ、怒らないで。』を出版しています。