老華僑と新華僑が衝突 横浜中華街で勃発「2つの中国」問題
横浜中華街の家庭ゴミ集積所に、飲食店から出た大量の残飯が捨てられるケースが相次いでいるという。老舗中華料理店の支配人はこう憤る。
「本来、飲食店から出る事業ゴミは有料で処理すべきもの。でも彼らはルールを守らず、深夜にこっそり大量のゴミを出すのです」
“彼ら”とは、ここ十数年の間に中華街に進出した中国人=新華僑を指している。
「ITバブルで儲けた福建省出身者が多く、日本の環境に馴染もうとしない傾向がある」(地元の不動産業者)という彼らの振る舞いが、古くからこの地に住む“老華僑”の怒りを買っている。
「観光客にしつこく付きまとって甘栗を売りつける新華僑が問題となったこともあります」(前出の支配人)
老舗店を中心に構成される横浜中華街発展会協同組合の広報担当者によれば、中華街で営業をする約520店舗中、組合加盟店は約330店舗。新華僑を巡る問題について、こう答えた。
「新華僑という括りで区別することはないが、来日して日の浅い方は日本の環境やルールに慣れず、多少問題になることがあると思われる」
ゴミ問題や悪質な栗販売は改善されつつあるとも回答。一方で、新華僑系に多い“激安食べ放題店”でのトラブルの存在を認めた。老舗中華料理店の店員はこういう。
「派手な立て看板を路上に広げ、キャッチを使って客引きをする。老華僑中心の組合ではこうした行為の自粛を取り決めているが、組合に加盟していない新華僑の店はお構いなし」
入店した客からは「食べ放題と言われたが飲み物で高額な請求をされた」、「メニューの写真とぜんぜん違うものが出てきた」などの苦情があるという。
実際に記者が中華街を歩くと、福建省出身というキャッチの女性に「お兄さん、うちはテレビでも有名!」と片言の日本語で話しかけられた。だが、彼女が言う有名店は“満席”で、裏通りの「別館」に案内された。
店名からしてまったく違うこの店は「本格中華が1600円で食べ放題」がウリ。ところが、肉料理を中心になぜか「品切れ」ばかりで、「名物」と勧められた小籠包を注文すれば、茹でたての水餃子が出てくる始末。値段相応とはいえ、不満は残る……。中華街でキャッチを始めて3年目という福建省出身の男性に話を聞いた。
「確かに新華僑の商売の仕方は乱暴かもしれないが、食べ放題や立食形式など、新しい工夫をしている。老華僑のお店はランチで5000円もザラ。美味しいのかもしれないけど、高級すぎる。それに、先に来たから偉いってもんじゃないでしょ」
“2つの中国”の溝は簡単には埋まりそうにない。
※週刊ポスト2017年11月17日号