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発刊:2016年7月21日(文藝春秋)
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November 10, 2017 08:30
by 『THE ZERO/ONE』編集部
米国のセキュリティ企業「IOActive」に所属するセキュリティエンジニア、ルーカス・アパ氏が「スカイネットが来る前にロボットをハックする」と題してロボット、特に家庭向けの製品に関するセキュリティ・リスクについて「PacSec2017」で講演を行った。
ルーカス氏はネットに公開されているツールや製品マニュアルを丹念に読み解くことで、脆弱性を探し出していく手法をとっている。そして実際に様々なセキュリティホールを発見してきた。今回のプレゼンでは、UNIVERSAL ROBOTS社やUBTECH社の製品の事例を紹介しつつ、ソフトバンクロボティクス(以下ソフトバンク)のPepperも取り上げた。
氏が調査したロボットの脆弱性を「クリティカル」「ハイ」「ミディアム・ロー」の3段階にわけたグラフを示したが(下の図参照)、他のロボット(業務用も含む)と比較しても、ソフトバンクのPepperとNAO、そしてAlpha 1S/2に多数の脆弱性があることがよくわかる。
Pepperには様々なセキュリティ・リスクを発見したとルーカス氏は語る。特にPepper内で稼働しているサービスやデータベースに外部から容易にアクセス可能であった。そんな弱点を抱えているPepperが、とある金融機関において、バックエンドで銀行のシステムに繋がっていたケースもあった。
なぜPepperにこれほどまでに脆弱性が多いのか? それは使われているシステムのバックグラウンドに原因がある。ソフトバンクはフランスAldebaranRobotics社を買収し、この会社が持っていたロボット技術を使ってPepperを製品化した。
しかしAldebaranRobotics社のロボット技術は研究目的に開発されたものであり、商用を目指しているものではない。研究用のロボットはその性質上、柔軟性を持たせるため、あえてセキュリティを低く開発されている。しかし、ソフトバンクはこのセキュリティレベルを適切にしないまま、ロボットを商品化して売りに出されたため、このような事態となっていると、ルーカス氏は指摘する。
家庭用ロボットがハッキングされると2つの危険性が顕在化する。1つはプライバシーの侵害だ。家庭用ロボットの多くに、カメラやマイクを搭載している。もし、第三者が外部からロボットを自由にコントロールできる状態になれば、家庭内の様子が簡単に盗聴・盗撮できることを意味する。
※参考リンク:IoTヌイグルミは口が軽い!? ユーザー情報82万件がダダ漏れに(前編)
2つめはロボットが人間を襲う可能性がある。工業用のロボットは力が強いため、もしハッキングされ人を襲えば、人間に致命的なダメージを与えることができる。家庭用のロボットでも人に危害を加える可能性はある。ルーカス氏は家庭用ロボットの「Alpha2」をハッキングした。そしてホラー映画「チャイルド・プレイ」の主人公チャッキーの声を出すように改造し、手に持ったドライバーを高速に動かす実演を行なった。さらにデモ用の動画には、ハッキングされたAlpha2がドライバーでトマトを滅多刺しにする様子も公開した。
※参考リンク:IoT洗車機が人を襲う日
壇上でドライバーを振り回す家庭用ロボットの「Alpha2」
ルーカス氏は研究を通じ、複数のロボット製品にいくつもの脆弱性を発見し、各メーカーに連絡してきた。ソフトバンクにPepperの脆弱性を指摘したところ、アップデートで対応すると回答をもらう。しかし、連絡してから3ヵ月後に「修正できない」という返答がきた。報告を受けたメーカーの対応はいろいろあり、脆弱性に対して全く関心のないメーカーもああれば、脆弱性は認識しているけど対応する予定はないという返事をしてしてきたメーカーもあったという。
現在発売されているロボット製品のように、研究用のシステムをベースにして市場に展開するのではなく、開発当初からセキュリティ重視した製品を作るべきだとルーカス氏は主張する。なぜなら製品をある程度開発してから、セキュリティを実装するのはコストも高く、リソースも消費するからだ。
そして、今後の家庭用ロボットはセールスポイントとして「セキュリティ」に転換するが必要である。「ロボットは安全である」ということが一般的に考えるようになれば、セキュアでない製品は市場にでなくなるからだと、ルーカス氏は述べた。
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