NTTドコモは11月9日から11日にかけて、東京・お台場の日本科学未来館で、同社の最新技術を展示する「見えてきた、ちょっと先の未来~5Gが創る未来のライフスタイル~」を開催。これに合わせる形で、11月9日から10日にかけ、企業や大学など学術関係者などに向けた、同社の技術研究に関する展示や講演をするイベント「DOCOMO R&D Open House 2017」も同時に実施している。
5Gによってわれわれの生活はどう変わるのか? イベントで披露されたデモをレポートしたい。
イベントに先駆けて実施された記者向け説明会で、ドコモの先端技術研究所 5G推進室室長 主任研究員の中村武宏氏は、5Gの現状について説明。5Gはまだ標準化作業が進められている段階だが、現在主流の通信方式である「4G」(LTE-Advanced)と5Gをセットで動作させるノンスタンドアロン運用の標準化が2017年末には完了するとのこと。そこでドコモでは、このノンスタンドアロン運用で、2020年に5Gの商用サービスを開始するとしている。
中村氏によると、5Gは4Gと比べた場合、大きく3つの特徴を持つという。1つ目は、下り最大20Gbpsもの高速通信を実現する「高速大容量」。2つ目は、1キロ平方メートルの中で、100万ものデバイスを同時接続できる「超多数端末」。そして3つ目は、通信時の遅延が0.5ミリ秒程度と非常に小さい「超高信頼低遅延」だ。
2020年の商用サービス開始当初は「東京五輪があり、ビデオ動画のやりとりが増える」(中村氏)ことから、ドコモでは5Gを活用した高速大容量通信を最優先に展開したいとのこと。また超高信頼低遅延に関しても、「非常に興味があるが、ユースケースをしっかり作って対応した方がいいと思う」と中村氏は話し、高速大容量よりも優先順位は下がるものの、積極的に取り組む考えを示している。
一方で超多数端末に関しては、「LTEをベースにした仕組みが先に導入されるので、当面はそちらを使うことになる」(中村氏)とのことで、3つの中では優先順位が最も低くなるようだ。そうしたことから今回の各イベントでの展示も、5Gの高速大容量と、低遅延をアピールするものが多かったようだ。
高速大容量と低遅延を生かした取り組みとして注目したいのが、Intel、Ericsson、デンソー、トヨタとの協力による「コネクテッドカー」の実証実験だ。自動車業界では現在、モバイルネットワークを活用し、自動車がインターネットにつながることで新しい価値を生み出すコネクテッドカーの実現に向けた取り組みが大きく盛り上がっており、高速で遅延が少ない5Gには高い期待が寄せられている。
今回の実験に用いられたのはトヨタが提供するもので、そこにEricsson製の5G端末と、Intel製のアンテナを搭載。その実装をデンソーが担当したとのことだ。会場では外で走行している車から、5Gネットワークを通じて車載カメラからのライブ映像や、車の各種情報などをリアルタイムに送信するデモを見ることができた。
そうしたコネクテッドカーを活用する事例として、住友電工との協力で実施された、5Gを用いた高度化ITSシステムの展示もなされている。これは車両からの情報に加え、街中に設置されたセンサーから車や人などの情報を収集して解析し、車両に配信するというもの。ドライバーの目視だけでは把握しきれない道路状況を把握できるようになることから、見通しの悪い場所で歩行者を検知したり、事故情報を検知してルートの変更を促したりできるなど、より安全でスムーズな運転ができるようになるわけだ。
ソニーが開発した「ニューコンセプトカート」にも注目したい。これはソニーのイメージセンサーとディスプレイを搭載し、映像を見ながらゲームのコントローラーで運転できるカート。フロント部分にも窓ではなくディスプレイが搭載されており、外側のイメージセンサーから映し出された映像を見ながら運転する形となる。
NTTドコモとソニーでは、コンセプトカーとの車外にある6面のディスプレイに、4Kの映像を伝送し、デジタルサイネージとして活用する共同実験を実施。現時点では車の制御などに直接5Gが関連しているわけではないが、このカート自体、スマートフォンをカートにすることをコンセプトとして開発されている。それだけに、今後の5Gとどのような融合を果たしていくのかが、非常に気になるところだ。
高速大容量通信を活用した展示としてもう1つ挙げられるのが、凸版印刷と東京大学暦本研究室との共同研究である「IoA仮想テレポーテーション」だ。これは文字通り、自分の分身となる「分身ロボット」を通じて、仮想的なテレポーテーションを実現するものとなる。
大画面の有機ELディスプレイが備えられた「伝送ルーム」に人が立つと、分身ロボットに搭載された360度カメラの映像が、5Gを通じてディスプレイに送られることで、あたかも現地にいるかのような体感ができる。それだけでなく、伝送ルームに搭載されたカメラで映し出された人の映像をリアルタイムで送り、分身ロボットに投影することで、ロボットの近くにいる人達とコミュニケーションを交わすことも可能だという。
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