「会計力」こそ会社人生に必要不可欠な能力だ
冨山和彦氏から学生・社会人への大胆直言
企業間競争は激しさを増し、イノベーションも相次ぎ起きている。そうした中、企業経営の中で会計的リテラシーが果たすべき役割は重要性を増すばかりだ。企業再生のプロである経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦CEOは、会計数字は、企業経営の基盤であると同時に、経営の意思を現場へ浸透させるために最も客観的かつ非常に普遍的な言語だ、と位置づける。
では学生やビジネスパーソンが、そうした会計的リテラシーを身に付けるには、どうすればいいのか。『会社四季報から始める企業分析 最強の会計力』(東洋経済新報社)にも登場する冨山和彦氏に、そのノウハウを解説してもらった。
バイトや模擬店で儲けを経験してみる
――決算書には企業小説を書けるくらいの内容が書かれているといわれます。たとえば、私が学生だとして、簿記の資格を得ました。さあ、就職活動を始めようと思いますが、決算書からストーリーを考えるきっかけにすべきことを教えてください。
1つはバイトがいい。アルバイト。外食企業でアルバイトして、ちゃんと観察すると、いろいろなことが見えてくる。材料原価に経費や付加価値を積み上げたものが、たとえば、すかいらーくの損益計算書になる。そこで「この店舗の売上高はこれだけ。テーブルサービスをするために、これだけ人間がいる。実はレストランは不動産の値段が高いので、確かに食材原価を30%くらいに抑えないと利益は出ないな」とわかる。
文化祭の模擬店も悪くない。すごく売れても、値付けを間違えると、意外と儲からなかったりする。繁盛したけど、結局、おカネが残らないことがあるでしょ。その瞬間ごとに損益計算書と貸借対照表が存在している。そこで経理担当をやっていると、「ああ、商売って、こういうふうになっているんだな」とわかる。ほかにも、売れて材料が足りなくなったので、あわてて無理して仕入れたら、そこから後は全然儲からなかったりする。限界費用が上がっちゃうから。
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