私たちを苦しめる「アホ脳」とは? ~科学界のインディジョーンズ・長沼毅氏が語るストレス時代の生き方~

”科学界のインディジョーンズ”こと長沼毅先生

仕事でヘトヘトなのに、飲み会の三次会まで行ってしまう。お腹いっぱいなのに、シメのラーメンを食べてしまう。趣味でもないのに、誘われたからゴルフに行ってしまう…なぜ私たちは、分かっているのに、「無理」をしてしまうのか?

”科学界のインディジョーンズ”の異名を持ち、著書『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』の中で、その理由を解き明かしている長沼毅先生に「無理してしまう理由」と「その対応策」をインタビューしました。

「脳はアホである」と知ろう

柳内:本日はテレビ出演や講演でお忙しい中、ありがとうございます。早速ですが、教えてください。なぜ私たちは無理をしてしまうのでしょうか?私自身も無理をし過ぎて、体調を崩してしまうことがあるんです。ぜひ先生の話を聞いて、生活に活かしたいと思います!

長沼先生:無理してしまう理由、それは一言でいえば、周りの評価を気にしすぎてしまうからです。「上司に嫌われたらどうしよう?」「友達に嫌われたらどうしよう?」そうやって人間関係に脳を使い過ぎる結果、悩んじゃったり、疲れちゃうんですね。

柳内:なるほど。自分基準で生きず、他人に振り回されてしまう結果、ヘトヘトになってしまうわけですね。でも、私もサラリーマンなので分かるんですが、やっぱり周囲とうまくやっていく事は大切なんじゃないですか?

長沼先生:もちろん、周囲と上手に人間関係を構築することは大切です。けれど、現代においては、人間関係に脳を使い過ぎている。だから皆さん、もう少し自分に優しくしていいと思いますね。

柳内:どうすれば自分に優しくできるんでしょうか?特に日本人って自分に優しくするのが下手な気がしてまして。

長沼先生:脳がアホなことを知ることですね。

柳内:脳がアホ??

長沼先生:そう、脳っていうのはね、アホなんですよ。アホ脳。

柳内:アホ脳ですか!?

長沼先生:はい。正確に言うと、この5万年で人間の知性が発達し過ぎた結果、私たちの脳は、「楽をする」ということを忘れてしまった。体の欲求に反して、頑張り過ぎちゃう「バグ」を抱えているんですね。

柳内:頑張ることって素晴らしいことな気もしますが、「バグ」なんですね。

長沼先生:だって、他の動物は眠くなったら寝るし、疲れたら休みます。それをしない動物って、人間くらいですよ。

柳内:確かにそう言われると、頑張り過ぎって不自然な気もしてきました…

長沼先生:もちろん、向上心や好奇心があって、無理をするからこそ、今の人間社会の発展があります。けれども、それでストレスを抱えすぎて、体を壊してしまったら、元も子もありません。今はこの発達した脳が人間を苦しめてしまうケースが増えてきているのかもしれませんね。

アホ脳をすっとばすためにルールを作ろう

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柳内:発達したからこそ私たちを苦しめるアホ脳。罪な存在ですね。では、そんなアホ脳とどうやってうまく付き合っていけばいいんでしょうか?

長沼先生:それはズバリ「脳がアホだ」と自覚し、ルールを作っておくことですね。

柳内:ルールを作る?

長沼先生:はい。ルールを作れば、アホ脳をスルーできるので、悩まない。だから、疲れない。

柳内:なるほど。例えば、どんなことですかね?

長沼先生:たとえば上司との付き合いで言うと、飲み会は最後まで行くけど、週末ゴルフは断るとか。そういうルール作りですね。無理はせず、嫌われない程度のルールに則って行動すれば、人間関係の悩みもグッと減りますよね。

柳内:イジワルな質問かもしれませんが、ゴルフも断れない人っていると思うんですよ。そういう人はどうすればいいんですかね?

長沼先生:その場合は、ゴルフじゃなくて、お互い共通の別の趣味に誘ってみるとか、別の提案をすればいいと思いますよ。目的は、人間関係の構築ですから。自分の負担にならないルールに持ち込めばいいわけです。

柳内:確かに、目的は円滑な人間関係を作ることですもんね。そのための方法論を自分なりに提案してみるのはありですね。

長沼先生:あと、ルールを作る時には「格言」を利用してみるのもオススメです。格言はアホ脳のバグを修正するために、先人たちが残した知恵。採り入れることで脳が起こすトラブルを事前に回避できます。書店にいけば、格言集がたくさん売ってますから、ぜひ買ってみてください。

ストレスは避けるのではなく、発散させよう

柳内:なるほど。私も早速やってみます!ちなみに先生は何かルールを作ってたりされすか?

長沼先生:私はガス抜きのために「クダを巻く」ことをルール化してますね。

柳内:クダを巻くですか?

長沼先生:はい。いわゆる「場末の居酒屋」みたいなところで、日本酒を飲みながら、グズグズ愚痴や文句を言う。人間は社会生活を送っていれば、ストレスはどうしてもあります。だから、マンガのような「ザ・クダ巻き」をすることで時々ガス抜きをしてるんです。ストレスを避けるというより、ストレスを発散する場所を持つのが大切ではないでしょうか?

柳内:なるほど!私は半身浴しながらの読書が好きで、「OLか!」と周囲に馬鹿にされることがあるんですが、これも実は大切なガス抜きだという事に気付きました。これからもガス抜き大切にしていきます。

自分の頭はアホ脳であることを知る。そんなアホ脳に振り回されないよう、ルール化する。さらにガス抜きする習慣を持つ。これでかなり生活のストレスが減りそうですね。本日はありがとうございました!

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