※追記1《外為特会》剰余金について、情報を追記しました。(2017/11/05 20:00)
※追記2 さらにソース情報を追記しました。(2017/11/05 21:45)
※追記3 頂いた情報を追記しました。(2017/11/05 23:00)
※追記4 頂いた情報を追記しました。(2017/11/06 02:00)
2017年11月3日に急に出てきた「イヴァンカ基金」なる謎の基金。
安倍首相、イヴァンカ基金へ57億円拠出 おもてなし効果いかに!?― スポニチ Sponichi Annex 社会
メディアでいきなり出てきたものだが、これは何でしょう?
以下のサイトに説明がありました。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/ivanka-japan2?utm_term=.lgWBoeQeE#.gdwVOeEeb
基金の正式名称は「女性起業家資金イニシアティブ」(We-Fi)。世界銀行内に設置されているもので、途上国の女性起業家や女性が運営する中小企業を支援する目的がある。
アメリカや日本、イギリス、カナダ、ドイツ、韓国など計14か国が支援を表明しており、総額3億2500万ドル以上の拠出が予定されている。
7月にドイツで開かれたG20サミットで立ち上げが決まり、10月の世界銀行・IMF(国際通貨基金)の年次総会で設立された。
ここに日本が5000万ドル(約57億円)を拠出する予定であるという事実は、外務省から7月のサミット中に発表されている。
この「女性起業家資金イニシアティブ」については、2017年7月に外務省からアナウンスされていたもののようです。
過去に表明済みの資金拠出を、設立に関わったイヴァンカさんの来日にあわせて、再度表明したに過ぎないもののようです。
また、イヴァンカさん自身は基金の提唱者ではあるものの運営などに関わることはないそうです。
世界銀行グループ、女性起業家支援のファシリティを新設、10億ドル超を動員へ
注:
このあたりのメディアの印象操作についてはいつものこととして、
今回の「女性起業家資金イニシアティブ」への拠出も含めて、
日本が行う開発援助(ODA)の資金について、
- ドルで表明された開発援助は、日本が保有する外貨準備金から支出
- 外貨準備金は国内では使えない塩漬けされたドル
- 外貨準備金は国民の税金ではないから開発援助に国民負担はない
とする主張をしばしばネット上で見かけます。
しかし調べてみると、この主張を裏付ける個人主張以外のソースが見つかりません。
これはいったいどういうことなのでしょうか??
素人がちょこっと調べてみた結果を以下にまとめてみようと思います。
-
「イヴァンカ基金(女性起業家資金イニシアティブ)」へは、どこから支出されるのでしょうか?
「女性起業家資金イニシアティブ」を外務省のHPで調べてみると、下記のPDFが出てきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000287241.pdf
これは、外務省が予算請求するための行政事業レビューの資料のようです。
行政事業レビュー点検結果の平成30年度予算概算要求への反映状況
資料には、以下の記載が見られます。
女性起業家資金イニシアティブ拠出金 1400百万 一般会計
(項)国際分担金其他諸費
(大事項)経済協力に係る国際機関等を通じた地球規模の諸問題に係る国際貢献に必要な経費
1400百万=14億 であるので、14億円分は《一般会計》から支出される予定であるらしいと分かります。
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14億円を支出する《一般会計》とは?
《一般会計》の歳入は、
『租税及び印紙収入+公債金(国の借金)+その他収入』
からなるもののようです。
[国の財政] 財政のしくみと役割 | 税の学習コーナー|国税庁
公債金(国の借金)は、一般会計から返済されるので、『租税及び印紙収入+公債金(国の借金)』の部分は、いわゆる一般的に認識される〈国民の税金=血税〉と言ってよいのかなと思います。
[国の財政] 財政のしくみと役割 | 税の学習コーナー|国税庁
ここで一つ後のために一般会計の『その他収入』について注釈を入れておきます。
現在、『その他収入』の中に、《外国為替資金特別会計(通称:外為特会)》剰余金の一部を一般会計に繰り入れたものが含まれます。
《外為特会》は、いわゆる外貨準備金とその運用に関わる特別会計の一種です。
しかし、この《外為特会》から一般会計への繰入は、《外為特会》剰余金の30%以上を《外為特会》の内部留保とし、それ以外(70%未満)を一般会計に繰り入れるということを原則ルールとしているものです。例外的に剰余金全額を一般会計に繰入たこともありますが。
外国為替資金特別会計の剰余金の一般会計繰入ルールについて : 財務省
ということは、当然《外為特会》剰余金がなければ繰入はされず、固定の歳入とはいえません。あくまで臨時収入という感じがします。
最近はほとんどありませんが、日銀が大規模な為替介入を実施した場合などには、為替介入用の《外為特会》から資金が支出され、剰余金がなくなる場合もあるのではないかとも思います。
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57億円ー14億円=43億円(残り)はどこから支出されるの?ODA予算とは?
外務省の資料にあった
(項)国際分担金其他諸費
(大事項)経済協力に係る国際機関等を通じた地球規模の諸問題に係る国際貢献に必要な経費
の表記から「女性起業家資金イニシアティブ」への拠出は、開発援助(ODA)のうち、【国際機関への出資・拠出(多国間援助)】であることが分かります。
ODAとJICA | 国際協力・ODAについて - JICA
それではODA事業予算はどのように構成されているのでしょうか?
平成29年度では、《一般会計+特別会計+出資・拠出国債+財政投融資》で
総額2兆1000億円で構成されています。
それぞれの金額構成比は、
一般会計(26.32%)
特別会計(0.07%)
出資・拠出国債(11.01%)
財政投融資(62.60%)
となります。
それぞれの財源の使用目的を確認すると
一般会計 ⇒ 二国間贈与、国際機関への出資・拠出、円借款
特別会計 ⇒ 技術協力、国際機関への出資・拠出(国連等諸機関のみ)
出資・拠出国債 ⇒ 国際機関への出資・拠出
となっています。
平成30年も同様であると仮定すると、国連機関ではない「女性起業家資金イニシアティブ」への拠出金は、《一般会計》+《拠出国債》ということになります。
現金の代わりに発行され、受け取った側が必要になったときに換金可能な債権になります。
https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2017/saimu2017-2-8.pdf
出資・拠出国債とは、交付国債の一種で(☞)、我が国が国際機関へ加盟する際に、出資又は拠出する現金に代えて、その全部又は一部を払い込むために発行される国債で、いずれも無利子、譲渡禁止、要求払い(当該機関が我が国の通貨を必要とし、その現金化について要求があったときは、いつでも現金化することが約束されている。)となっています。
平成28年度末現在、我が国の出資・拠出国債の発行実績は、国際通貨基金(IMF)など13機関で19銘柄となっています。国際機関に対して、国債による払込みが認められるのは、当該機関の運営上、当面通貨を必要としない場合であって、このことは各機関を設立する協定に規定されています。
また、国内法上は、各国際機関への加盟措置法等で、国債での出資や拠出ができるようになっています。
金利はつきませんので額面のままですが、国債の一種ですので国の借金です。
ということは、財政支出的にいうと、「女性起業家資金イニシアティブ」への拠出は、
- 当面の資金として《一般会計》から14億円
- 必要となったときに現金と交換可能なように《拠出国債》を43億円
という拠出構成になるのではないかと想像します。
「女性起業家資金イニシアティブ」基金としては当面の運営費があればよくて、女性起業家を支援する時に必要な資金は、今のところ現金である必要がないからではないかと想像されます。
ここまでのことで、外貨準備金(外為特会)が直接的に開発援助(ODA)などの海外支援に使用されるような記述はありませんでした。
ネット上の噂【ドルで表明された開発援助は、日本が保有する外貨準備金から支出】はどこから出てきたのでしょうか?
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過去に行われたIMFへの出資との混同?
過去にIMF(国際通貨基金)への出資を増資する話がありました。(実際には増資ではなく融資です。)
2008年に表明(取極締結は2009年)された1000億ドルの貸付と、2012年に表明・融資取極された600億ドルの追加資金貢献です。
これは必要な時に融資しますよと言っているだけで、その時直ちに融資が行われた訳ではありません。
http://www.imf.org/external/oap/pdf/mof0625.pdf
IMFに対する融資枠であり、直ちに実際の融資が行われるわけではない。(前回の1,000億ドル
の貢献も同様に融資枠であり、このうち実際に融資が行われているのは約110億ドルのみ。(2012年6月27日時点)
この融資については、外貨準備金(下図の外国為替資金)を担保としているようです。
この時には出資(融資)が10億円ではなく、1000億ドルであることが協調されたようです。日本円ではなくドルだから、税金(国庫)からではなくて外貨準備金(外為特会)からなので新たな国民負担ではないですよ、という論調です。
http://www.mof.go.jp/exchequer/summary/07.pdf
この図からもわかる通り、外為特会に関わる国際機関としてはIMFしか出てきません。
外貨準備金はIMF関連以外では、海外で使用できないのではと思います。
従ってドル建てだからといって、IMFが行わう訳でない開発援助(ODA)には、外貨準備金(外国為替資金)を原資として使用することはできないと思われます。
なお参考ですが、外国為替資金特別会計には外貨準備金としての莫大なドル資産がありますが、ほぼ同額の円建て負債(政府短期証券)もあります。
外貨有価証券:約130兆円
政府短期証券:約120兆円
http://www.mof.go.jp/budget/topics/special_account/fy2016/tokkai4gaitame.pdf
※追記3 (2017/11/05 23:00)
頂いた情報を追記します。
《外為特会》の法的根拠となる特別会計に関する法律に下記の記述があります。
特別会計に関する法律
第七十六条 外国為替資金は、外国為替等の売買に運用するものとする
7 外国為替資金に属する外国為替等及び現金は、加盟措置法第二条の規定による国際通貨基金に対する出資及び基金通貨代用証券の償還に充てることができる。
これを根拠にIMFへは出資できて、他にはできないということになるでしょうか。
追記3 終わり
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ODAと外貨準備金の関係は?
では、ODAと外貨準備金は全く関係ないのでしょうか?
実はドル建てで行うODAでは、開発援助金を海外に送金する際に外貨準備金を利用します。利用しますが、外貨準備金から支出する訳ではありません。
http://www.mof.go.jp/exchequer/exchequer_cash_management/13.pdf
上図のようにODAに限らず、海外にドル(平成19年4月から100万米ドル以上が対象。平成22年11月から100万米ドル未満も対象)及びユーロ(平成26年10月から対象)を送金する際には、円→ドル、円→ユーロに両替する際の手数料を節約するために、外貨準備金を利用するようになっています。
但し、上図で「外貨資金」に「円貨」が追加されている通り、このような海外送金に際して、外貨準備金が減っている訳ではありません。外貨準備金は、ドルまたはユーロが減って、その分と同額の日本円が増えていますので、差し引き0で増減しません。
送金フローは下記のようになります。
- 各省庁から日本銀行に対して海外送金を依頼
- 日本銀行において、日銀内の政府預金から国庫送金勘定を経由して送金所要額の日本円を外為特会の政府預金(当座預金)に振り替える
- 見合いのドルが、外為特会からニューヨークにある日銀勘定に振り込まれる。日銀はこれを送金担当銀行の口座に振り替える
従って、海外に送金されたドルの直接の出所としては外貨準備金となりますが、日銀内で円ドルの両替を行うのに外貨準備金を利用しているだけで、実際の支出は、日銀の政府預金(外為特会以外の国庫)からということになります。
このこともドル建て開発援助(ODA)が、外貨準備金から支出されていると誤解されている一因なのかもしれません。
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《外為特会》剰余金を《一般会計》に繰り入れたドルが使用されるのでは?
この疑問については、正直答えがわかりません。
《外為特会》剰余金から一部を《一般会計》に繰り入れられますが、それがどのような形なのかがよく分からないからです。
この場合は、例え支出が《一般会計》からであっても《一般会計》内の『その他収入』からの支出にあたるため、〈国民の税金=血税〉からの支出とは言えないかもしれません。
平成27年度の外国為替資金 特別会計財務書類によると、《外為特会》での運用収入2兆4694億円のほとんどは外貨債権の運用益ですからドルなどの外貨でしょう。
ですが、《外為特会》の全てがドル建てというわけでもありません。
外貨証券はほとんどがドル建て(米国債)と言われていますが、現金もあります。
円貨預け金:7兆6791億円
外貨預け金:13兆8041億円
この年の《外為特会》剰余金から《一般会計》への繰入は、1兆4280億円となっています。運用収入の外貨を円転換しなくても《外為特会》にある日本円を《一般会計》への繰入分に充てることができそうです。
http://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/special_account/gaitame/gaitame_zaimu2015.pdf
また、ちょっと古い資料からとなりますが、平成17年度の各省庁からの海外送金の実績が5676億円となっている資料があります。
http://www.mof.go.jp/exchequer/exchequer_cash_management/f1905d.pdf
この年の一般会計に計上された前年の《外為特会》剰余金から《一般会計》への繰入は1兆4190億円です。
もし、《外為特会》剰余金から《一般会計》への繰入がドルであった場合、一般会計上で利用できないドルが余ってしまいます。なんか変なことになりますよね???
また、日銀の資料によると、2015年のドル/円の為替スワップ市場規模が3000億ドルとあります。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2016/data/rev16j11.pdf
3000億ドルといえば、30兆円以上です。《外為特会》剰余金から《一般会計》への繰入分のほんの1~2兆円ほどをドルを円に換えたところでどれほどの影響でしょうか?
一気に資金を投入する市場介入ではないので、時間をかけて市場でドルを円に変えても問題になるほどの影響になるのかな?と疑問に思います。
例えば、2兆円分のドルを1か月かけて市場で円に換えるときの影響というのはどれほどのものなんでしょうか?やってやれないことはない気がするんですが。だめなんでしょうかね?
さらに、ちょっと暴論ですが、平成27年度の国の財務書類(一般会計・特別会計)によると
外貨預け金を除く現金・預金:約38兆4636億円
外貨預け金:約13兆8041億円
に上ります。
http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2015/national/fy2015gassan.pdf
これだけの現金があるなら、1~2兆円分のドルをこの中で円転換するくらいなら、なんとかできてしまうような気もします。(法律も会計もない超暴論ですが。。。)
とにかく素人の予想になりますが、《一般会計》に繰り入れた《外為特会》の一部剰余金がドルのままってことはないのではないかと思います。
また、復興特別税のような目的が決まっていない《一般会計》に繰り入れる以上は、何に使われるかは分からなくなるのではないか、そのお金に色がついていて《一般会計》の中で使用目的が決まっているとは思えないというのが感想です。
確かなソースはないですが、「《外為特会》剰余金を《一般会計》に繰り入れたドルが使用される」というのは考えにくいというのが個人的な感想です。
※追記1 (2017/11/05 20:00)
情報を確認できたので追記します。
日本の財政法は以下のように規定しています。
第二条 収入とは、国の各般の需要を充たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい、支出とは、国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。
ここでいう【現金】とは【日本円】ということになるのだそうです。
そこで、《外為特会》剰余金は、ドルだろうがユーロだろうが歳入に計上する際に、外貨準備金の原資となる外国為替資金証券(通称:為券)の政府短期証券(FB)を発行して剰余金と同額相当の日本円を調達するようです。
つまり、《外為特会》剰余金から《一般会計》に繰入る時には、繰入額と同額の政府短期証券(FB)を発行して借金して日本円を調達し、その日本円を《一般会計》に繰入しているため、《外為特会》は借金が増えてドルは減らないということだそうです。
外為特会「埋蔵金」の取り崩しで問われる民主党の財政規律 | ロイター
運用益として受け取ったドルやユーロについても、政府が同額のFBを発行し、歳入として計上する。この計上先が、民主党が「埋蔵金」とみなす「外為特会の積立金」だ。
運用益分までFBを発行するのは、日本の財政法が国の歳入・歳出を日本円の現金で計上することを定めているためだが、この特殊な会計のため、FB残高は、為替介入を実施していない時期にも、雪だるま式に膨らみ、昨年12月末時点で108兆円に達している。
この会計処理は問題点として以前から指摘している方もいらっしゃいます。
・論文 為替介入と外貨準備 20ページ
http://www.fbc.keio.ac.jp/~tyabu/profit.pdf
・日本の外国為替市場介入と外貨準備管理の問題点 3ページ
http://www.jsmeweb.org/ja/study_group/international_monetary/pdf/thesis_kumakura.pdf
以上のことから、 《外為特会》剰余金は日本円で《一般会計》に繰入されるため、このお金に使用目的が定まっているとは考えにくいということになろうかと思います。
追記1 終わり
※追記2 (2017/11/05 21:45)
茶番ですらない日本政府の予算編成 | 熊倉正修 中段くらい
追記2 終わり
※追記4 (2017/11/06 02:00)
財務省の過去資料に情報があったので追記します。
(注 2)外貨資産の運用収入については、特別会計法の規定に基づき、これと見合った金額を円貨の歳入とするため、同額の政府短期証券を発行し、円貨を借り入れています。こうした経理により、外貨資産と政府短期証券がともに増加しています。
http://www.mof.go.jp/budget/topics/special_account/fy2014/tokkai2612_09.pdf P.65
この財務省の「特別会計ガイドブック 第II編 特別会計各論 4.外国為替資金特別会計」は、毎年だされているものですが、上に引用した文言は、平成26年度の資料にはありますが、平成27年度以降の資料からは記載が削除されています。
ひょっとしたら、運用収入の外貨を日本円にするための政府短期証券を発行以外の方法を行い始めたのかもしれません。政府短期証券の発行一本やりではなくなったために削除されたとか。思いっきり想像ですが。
追記4 終わり
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最後に日本の開発援助(ODA)ってばらまきしすぎなの?
上にも書きましたが、ODA事業の予算総額は、平成29年度で約2兆1000億円、また平成28年度で約1兆8553億円となります。
これは多いのでしょうか?少ないのでしょうか?
主要援助国のODA実績の推移(支出総額ベース)
上図は2015年までですが、総額で世界4位です。(1位アメリカ、2位ドイツ、4位イギリス)
DAC諸国における政府開発援助実績の国民1人当たりの負担額(2015年)
しかし、一人一人の国民負担を見ると、世界19位となります。
また、国際的な目標を定めている支出総額の対国民総所得(GNI)比では、2015年0.21%でこちらも世界19位となります。
(ODA)2015年におけるDAC諸国の政府開発援助(ODA)実績(確定値) | 外務省
日本のODAは、支出総額としてはそれなりに多いとはいえるが、経済規模に見合った額
ではないということになります。
平成27年の開発協力大綱によると、対国民総所得(GNI)比でODAの量を0.7%にすることが国際目標とされています。
それにODA事業の国民負担と言える《一般会計》は、平成29年度で5527億円、平成28年度で5519億円となっていますが、実は’90年代~’00年代はもっと多かったのです。
現在の水準は、《一般会計》だけで見れば、1980年代中盤と同等くらいとなります。
日本の開発援助(ODA)の主役といえば円借款ですが、国民負担と言える《一般会計》からの支出は、円借款総額1兆2910億円のわずか3.50%である452億円となっています。
(ODA)平成29年度予算 | 外務省 (再掲)
それでは、円借款の大半を賄う財政投融資とはどんなものでしょうか?
財政投融資とは、
租税負担に拠ることなく、独立採算で
財投債(国債)の発行などにより調達した資金を財源として、
政策的な必要性があるものの、民間では対応が困難な長期・固定・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動(資金の融資、出資)です。
つまり、円借款とはかなり少ない国民負担で行うことができる開発援助であるといえると思います。
よく円借款の表明時に言われる「国外に税金をばらまいてないで国内に回せ」という主張はこのようなことを知らないからなんでしょう。(決して「外貨準備金から出るから税金じゃない」ということではありませんので、お間違えなく。)
近頃の開発援助(ODA)関連のニュースを見ますと、特に円借款については【国益に資するODAの更なる拡充】という政府目標を着実に実行していると個人的には感じています。
海上交通路の安全確保、緊迫する東アジア情勢などの課題に対するものとして、海洋国家・貿易国家である日本の国益にますます必要かつ重要なものであると考えています。
以上、素人なりになるべく公式的な情報をソースにしてまとめてみました。