水野誠一(みずの・せいいち)
株式会社IMA代表取締役。ソシアルプロデューサー。慶応義塾大学経済学部卒業。西武百貨店社長、慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授を経て1995年参議院議員、同年、(株)インスティテュート・オブ・マーケティング・アーキテクチュア(略称:IMA)設立、代表取締役就任。ほかにバルス、オリコン、エクスコムグローバル、UNIなどの社外取締役を務める。また、日本デザイン機構会長、一般社団法人日本文化デザインフォーラム理事長としての活動を通し日本のデザイン界への啓蒙を進める一方で一般社団法人Think the Earth理事長として広義の環境問題と取り組んでいる。『否常識のススメ』(ライフデザインブックス)など著書多数。
◆日本ではガンの発生率とガン死亡率が上昇し続けているのに、米国では過去20年間で22%も減少しているという「否常識」な事実
最近の日本では、国立がん研究センターによると2人に1人がガンになり、そのうち3人に1人が毎年亡くなっているといわれている。しかも勤労年齢の壮年層(30代〜60代)が中心のため、生産人口の減少の要因にもなっている。日本では、2015年のガン死亡数は、1985年の約2倍。2012年のガン罹患数は1985年の約2.5倍と、男女とも罹患数が1985年以降増加し続けているというのに、米国では1990年を境に20年間、継続的にガンの死亡率が下がり続けているという。
米国議会の技術調査評価局(OTA=Office of Technology Assessment)が1990年に発表した、ガンに関する代替医療レポートがあるのをご存知だろうか?
https://www.cancertreatmentwatch.org/reports/ota.pdf
その中で、「抗ガン剤・多剤投与グループほど”命に関わる副作用”は7~10倍」「腫瘍が縮んでも5~8カ月で再増殖」「多剤投与グループは腫瘍は縮んでも生存期間が短い」「腫瘍を治療しないほうが長生きする」……と現代の治療の”常識”を覆す治験結果が記されており、さらには「抗ガン剤では患者は救えない」「投与でガンは悪性化する」と結論付けていて、大きな反響を呼んだ。
事実、米国の1973年から89年の統計では、毎年1.2% 増加していたガンが、アメリカガン協会(American Cancer Society)が先頃発表した2015年版ガン発症・死亡推計によると、死亡数はここ20年間で22%減っているという。
だが、ここに至るまでには幾つかの経緯があった。
ことの始まりは、1977年の米国上院栄養問題特別委員会が提出した、膨大なレポート(「マクガバンレポート」)の中で、「現代医学は栄養問題に盲目的になっている」と述べたことだといわれる。この医学と栄養学の関係を多くの学者や医師が認め、国を挙げて取り組んだことだ。そして85年には米国立ガン研究所(National Cancer Society:NCI)のヴィンセント・デヴィタ所長が、米議会証言で、「抗ガン剤は全く無力であり、我々は深い絶望感にとらわれている」「抗ガン剤でガンが治せないことは理論的にはっきりした。農薬を使うと農薬が効かない害虫ができるのと同じように、ガン細胞でも抗ガン剤が効かないガン細胞が発生するからだ」と発言し、その根拠として、抗ガン剤治療を4週間以上続けると、ガン細胞のADG(アンチ・ドラッグ・ジーン=反抗ガン剤遺伝子)が作動して、抗ガン剤が全く効かなくなるという衝撃の報告をした。
ADGとは、抗ガン剤治療などによって、ガン細胞が自己防衛の手段として、自己の遺伝子を変化させ、抗ガン剤に対する「耐性」を備えることによって、抗ガン剤が全く無力になる状態をいい、反薬遺伝子のことを指している。
これと前後して、米上下両院議員の40人が連名で、「『通常療法(標準治療)』では治らないとされた末期ガン患者が、『代替療法(自然療法)』で治っている。議会はこれらの療法のことを詳しく調べ、国民に知らせる義務がある」として、OTAに「代替療法」を調査する専門プロジェクトを発足させたのだという。それによってOTA内にガン問題調査委員会が組織されて、通常療法(標準治療)と非通常療法(代替療法)の比較が行われた。これが、1990年に発表された「Unconventional Cancer Treatment」というリポートの登場の経緯なのだ。
ここでいう非通常療法とは①行動・心理療法②食事療法③薬草(ハーブ)療法 ④薬物・生物学的療法 ⑤免疫療法(IAT)――により身体の抵抗力を高めて、自然に治そうという考え方が主体の治療法だ。
その結果、非通常療法の方が副作用が無く、治癒率が高いという結論になった。レポートでは、米国立がん研究所(NCI)の現行治療には数十年で見るべき進歩がなく、政府はNCIへの研究補助費に疑問を投げかけ、国民のためのガン治療をしているとは言い難いとまで、NCIの責任を追及しているのだ。
さらに会計検査院(General Accounting Office)までも、87年の調査報告書では、NCIへの予算がガン患者の生存率に寄与していないという報告をあげている。
注目すべきは、一方で1988年のNCIによるリポート「ガンの病因学」でも、15万人の抗ガン剤治療を受けた患者を調べた結果、抗ガン剤は、ガンを何倍にも増やす増ガン剤だと認めているという事実だ。この潔い態度は尊敬に値する。それ以降、米国内での抗ガン剤の使用は慎重かつ限定的になったことも事実だ。
これを受けて1988年(平成元年)の日本癌学会大会でも、抗ガン剤問題が話題となったというが、国や製薬会社、メディア等が既得権益保護のために、その情報を故意に報道規制したという。そのため、医師でもこのADGに対して無知な状態のままなのだ。
したがって、厚生労働省の抗ガン剤の認可基準に、4週間以内に被験者10人中に1人でも、薬剤投与によって腫瘍の縮小がみられれば、「効果あり」で、抗ガン剤として認可されている事実がある。4週間を超えるとこのADG作動の問題が出てきて極めて不都合になるために、期間を区切っているとさえいわれる。4週間単位で様々な抗ガン剤を使用した患者は、やがて免疫機能や造血機能が壊滅的打撃を受け、最後は敗血症や多臓器不全で死に至るという。
その後、製薬業界の圧力なのか? いつのまにかうやむやになってしまったという。それ以降も、依然抗ガン剤大国として、抗ガン剤を無抵抗に受け入れている日本は、惰眠を貪っているといわれても仕方がない。
今回紹介した、米議会の技術調査委員会が1990年に発表したガンに関する代替医療リポートは、いささか極論に走っていたかも知れないが、その後、冒頭に述べたように、ガンの発生率と死亡率が米国を上回り、一方米国ではガン発生率と死亡率が、以降20年間で22%も減少しているという事実は無視できないではないか。そして、いまや日本はグローバル製薬業界の抗ガン剤在庫処分場(アウトレット)とまで揶揄(やゆ)されていることも事実だという。
※参考文献 OTAリポート~がんに関する衝撃的なリポート~
http://www.leventvert.org/archives/478
この論争は、なかなか収束しそうにないようだ。
最近も、某歌舞伎俳優の夫人が、自身の乳ガンの治療に標準治療ではない治療に頼ったが、経過が思わしくないので結局標準治療(抗ガン剤)に戻ったものの、残念ながら亡くなるという出来事があった。標準治療論者は、「ほれ見たことか」とばかり、十把一絡げ(じっぱひとからげ)にして非標準治療を叩いた。だが、標準治療の領域にしか正しい解が無いという決めつけはいかがなものだろうか?
もちろん、標準治療が全てのガン患者に効くわけではないように、非標準治療の全てが正しいわけではないし、まして全てのガンに効くわけではない。非標準治療といってもピンからキリまであり、標準治療領域同様、時代とともに進化していることも事実だ。中には厳しい治験をクリアして、新たな標準治療の仲間入りをしようとしているものも少なくない。
免疫療法といわれる領域もその一例だ。免疫療法では、第一世代から現在の第3世代まで分類できる。だから第1世代しか知らない医師が、「免疫料補など効かない」と断定することがあるが、第3世代では治験をクリアしているものもある。その高額性が話題になったガン治療薬オプジーボもそのひとつだったし、米国で話題になっている近赤外線を使った治療法など、一連の免疫療法も治験を目指している。
*参考URL: 近赤外線でがん細胞が1日で消滅、転移したがんも治す ――米国立がん研究所(NCI)の日本人研究者が開発した驚きの治療とは
https://www.mugendai-web.jp/archives/6080
また、民間療法の代表のように思われていた「温熱療法」でも、ハイパーサーミアのように、唯一保険適用ができるようになった例もある。標準治療の補助的な位置付けということでも、体温を上げて免疫力を高めることが、ガン細胞を消滅させる力になるという体内メカニズムの原点に回帰することは、十分に意味があるからだ。手術や放射線、抗ガン剤でガン細胞を叩くばかりではなく、毎日数千個も体内に生じているガン細胞を自然免疫力で消滅させているという本来の自然治癒力を信じ、免疫力強化によってガン細胞を消滅させることの意味である。
だからこの際、「標準治療以外は治療にあらず」という「非常識」扱いではなくて、常識的な標準治療自体も一度リセットしてみる「否常識」はいかがだろうか?
その具体的な動きについては、また折を見て触れてみたい。
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