レコーディング、とくに歌録りの時、
「1回歌っただけでOKテイクが録れた!」なんてことはまずありません。
何テイクか歌ったものの中から「いいとこ取り」で繋ぎ合わせていったり(=テイクコンピング)、
もしくは、気に入らない部分だけを細かく録り直したり(=パンチイン)、
そうやって、非の打ち所のない完璧な1本の歌を作り上げるのです。
いずれにせよ、別テイク同士を繋ぎ合わせているわけですが、
この時、ノイズが乗るなんてのは御法度ですよね。
それに、自然で、あたかも1回で歌ったかのように聞こえないといけません。
今回は、こういったテイクコンピングやパンチインの際、
自然に、そしてノイズが乗らないように波形を繋ぐにはどうしたらいいか、紹介していきます。
パンチイン箇所はブレス(息継ぎ)のあるところで
歌録りに関して言うと、パンチインはブレス(息継ぎ)のあるところで行うのが基本です。
たとえばこんな歌詞があったとしましょう。
ぼくはこれからも ∨ きみをずっと ∨ まもりつづけるよ
(「∨」がブレス)
こんな歌詞ありがちありがち笑
こういう場合、「きみを」だけ録り直すとか、「ずっと」だけ録り直すというのはオススメできません。
「きみをずっと」を録り直すのが基本です。
ブレスとブレスではさまれた箇所なら空白があるため自然に繋がります。
子音に注目すればブレスのないところでも繋げられる!
ただ、現実問題として、もっと細かい箇所の録り直しをしたい場面もあるでしょう。
つまり、ブレスがないところでも繋ぎたい!という場合。
そこで注目してほしいのが子音です!
子音、つまり「ka、ki、ku、ke、ko」でいうところの「k」の部分ですね。
この子音のタイプによっては、ブレスがないところでもキレイに繋ぐことが可能なのです!
完全に空気の流れが止まるタイプの子音
一息で続けて発声していても、舌や歯、唇の動き的に、空気の流れが止まる音があります。
このタイプの音は、子音の前に空白ができるので、そのポイントで繋ぐことが出来ます。
それが、
k
t
ch
ts
p
ky
py
です。
これらは、発声の際に空気の流れが完全に止まります。
実際の波形を見てみましょう。
子音の前に空白ができていますね。このポイントで繋ぐことができます。
たとえば、「ぼくはきみとちゃんと」という歌詞だとしたら、
ぼ/くは/きみ/と/ちゃん/と
上記の斜線のポイントで空気が途切れてます。
なので、斜線と斜線の間なら録り直すことができるんですね。
空気の流れは止まらないが繋ぎやすい子音
次に、空気の流れは止まらないものの、クロスフェードを書けばキレイに繋がる音。
それが、
s
sh
z
j
です。
このタイプの音は、子音が高い周波数でできています。
高い周波数の波形は非常に細かいため、クロスフェードを書けば自然に繋がるのです。
たとえば、「あおいしゃしんさえ」という歌詞だとしたら、
あおい/しゃ/しん/さえ
上記の斜線と斜線の間なら録り直すことが出来るんですね。
とくに何も考えず、上の画像のように子音同士を重ねる感じでクロスフェードを書けば繋がります。
繋ぐことが困難なタイプの子音
逆に、繋ぐことが難しい子音もあります。
基本的に、上記の子音以外がそうですが、
その中でもとくに、
n
m
y
r
w
ng (鼻濁音の「が」)
ny
my
母音のa
これらの音は、発声の際に空気の流れが止まらないんですね。
なので、クロスフェードを書いても100%繋がるとは言い切れません。
もちろん「プツッ」というあからさまなノイズは消えますが、不自然な繋がりになってしまう可能性が高いということです。
録り直したいところの前後も歌おう
ここまで、パンチインが可能な(繋ぐことが可能な)ポイントを紹介しました。
これらのポイントでパンチインを行えば、ノイズは乗りません。
ただし、もうひとつ重要な点があります。
それは、「録り直すときには前後も歌う」ということです!
たとえば、
ぼくはこれからも ∨ きみをずっと ∨ まもりつづけるよ
(「∨」がブレス)
の「きみをずっと」を録り直す際にも、
その前後の「ぼくはこれからも」、「まもりつづけるよ」も歌いましょうということです。
「きみをずっと」だけを歌うと、
・息の量に余裕があるため、そこだけ大きくなってしまう。
・次のフレーズを歌わないため、音符を伸ばしすぎてしまう。
という具合に、繋がりの不自然な歌になってしまいがちです。
これは歌に限らず、楽器のレコーディングの時にも同じことが言えます。
パンチインの際には必ず前後も歌う/演奏する ことが大切です。
まとめ
・空白で繋ぐのが基本
空白、つまり「ブレス」もしくは「空気の流れが止まるポイント」ですね。
・s、sh、z、j のポイントでも繋ぐことが可能
・録り直したい箇所の前後も歌う/演奏する
以上です!
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