Google Homeのおもしろさと、インターネット検索の限界

Google Home Miniを買ってしばらく遊んでいる。6480円で買えるおもちゃとしては最良のものである。

たとえば、子供に英語を教えるとき「○○を英語で?」とGoogle Homeに聞くと答えてくれるのが素晴らしい。子供自身も使える。

天気予報も教えてくれる。タイマー機能もある。ニュースも聴ける。ラジオも流せる。IFTTTとIRKitを組み合わせればだいたいの家電は操作できるし、さらにRaspberry PiとFirebaseを使えばゲーミングPCをWakeOnLanで復帰させてテレビの入力を切り替えるくらいまで出来る。魔法のようである。

これに比べると、子供に請われて買った「うまれて!ウーモ ワォ」は、9000円以上したのに、わおわお言って踊るくらいしか出来ない。ただ「うまれて!ウーモ ワォ」は双子なので、この比較は適切ではないかもしれない。

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改めて驚かされるのは、音声認識の正確さだ。正しく認識してくれなかった時は、こちらの発音が悪かったのかなと反省するくらいに良く出来ている。

音声認識を含め、機能のコアはすでにAndroidスマートフォンで、あるいはiPhoneのGoogleアプリで実現していたものばかりだが、こうしてアシスタントだけが独立し、誰でも、子供でも、操作できるようになったというところに価値がある。残念ながらその価値を発見したのはGoogle自身ではなく、スマートフォンの失敗から挽回を目指すアマゾンであったが。


一方、Google Homeに対してなんとなく失望の声があるのも確かである。

もし翻訳と天気予報とタイマーとニュース機能を備え、素晴らしい音声認識を誇るスピーカーを、名前も知らないベンチャーが発売していたら、みんな絶賛していただろう。

しかし、このスマートスピーカーを作ったのはGoogleだ。インターネットで、あるいは世の中で、一番全知全能に近い存在である。世の中のことも、私のことも、もっと知っていてもいいはずではないか。

現時点でGoogle Homeが出来ることと言えばあらかじめ決められたタスクばかりだ。Alpha Goやディープラーニング的なあれこれに驚かされっぱなしの私達には、Google Homeから大した知性を感じられない。

一つには、Googleは遠慮しているのかもしれない。家族に聞かれるかもしれない環境で「昨日は二次会のあともお楽しみでしたね! 今日こそ早寝しましょうね!」とか言わせるわけにはいかない。

あるいは、まだGoogle Homeは発展途上で、これからどんどん賢くなっていくのかもしれない。

(雨が降ってました)

そしてもしかすると、Googleはもうそれほど賢くないのかもしれない。

近年、Google検索の品質が批判されることが増えてきた。昔は奇特なインターネットユーザが雑多な情報を無料でどんどん公開していたが、今日では多くの情報がLINEやFacebookのようなクローズドな環境や、Twitterのような分断化された状態で発信されている。

Google Homeが社会や政治に関する質問にもなんらか答えてみることは可能だろうが、そうすると【悲報】みたいなことを言い出す可能性も大いにある。慎重に考えれば、Googleの知性はせいぜいWikipedia的なものに留めざるをえない。

そもそもGoogle HomeとAmazon Echoがスマートスピーカーの座を争っている、むしろ米国ではAmazonが先行しているということは、Googleだけが持つ膨大なインターネットの検索情報に基いた知性が、なんらアドバンテージになっていないということだ。

これからもインターネット検索は知性から遠のいていくのだろう。そのかわり、スマートスピーカーは多様なセンサーを備え、スマートフォンと連携し、個人の行動情報などに基いた知性を見出していくだろう。私の生活は私の生活で、そこにはGoogleを悩ませるようなスパムはないからだ。だからスマートスピーカーは、車の自動化や、ペイメントなどとあわせて、これからも重要な分野になるに違いない。

そして将来、ただ楽しいおもちゃだったGoogle Homeを懐しく思う日が来るのではないか。

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筆者の小関悠はIT研究者。三菱総合研究所、Facebookを経てBuzzFeed Japanで広告を売っている。