知識社会で生き残るための「頭の良さ」とは?

“感情の知能”を弱める「二分割思考・かくあるべし思考」に要注意

2017年11月9日(木)

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 社会がアメリカ型になってきたり、知識社会と言われるようになってくると、あるいは、単純労働がロボット(かつては移民)などで代替されるようになってくると、知的レベルの高い人間、頭のいい人間だけが生き延びるようなことが言われる。

 今回は、サバイバルのための頭の良さ、あるいは、それを獲得するにはどうすれば良いかを考えてみたい。

一流の大学院を出ているのに社会に出て成功できない人は、「思考力・判断力・表現力」は高いが、自分の感情のコントロール能力や自己動機づけ能力、対人関係能力が悪いことが明らかになった。(c)Asawin Klabma-123RF

頭の良さの定義は一つではない

 頭の良さの定義は、昔と比べて多様になっている。昔であれば、仕事の処理能力が高い人、あるいはペーパーテスト学力が高い人であれば、頭がいいと言われただろう。ところが、2020年度の大学入試改革の答申では、知識や数学の問題を解く能力などは従来型の学力と切り捨てられ、思考力・判断力・表現力を中心に評価すると明記されている。

 一方、現在の心理学(脳のソフト全般を扱う学問であり、知能テストは世界で最も使われる心理テストとされる)では、頭の良さの定義は様々な形でなされている。もともと知能指数が高い人間が頭のいい人間とされていたのだが、ハーバード大学のハワード・ガードナーという心理学者が1980年代に「多重知能論」というものを提唱した。

 言語的知能や論理数学的知能のように、一般にテスト学力につながるものだけでなく、音楽的知能や対人的知能など8つの知能を想定した。要するにいろいろなタイプの頭の良さがあると考えられたのだ。

 1990年代になると、ハーバードのビジネス・スクールのような一流の大学院を出ているのに社会に出て成功できない人が2割ぐらいいることが問題視されて、そういう人たちに欠けている能力の研究がされた。彼らにはペーパーテスト学力だけでなく、入試の際に面接も小論文も課されるし、講義だけでなくディスカッションもカリキュラムに組み入れられているから、文科省のいう「思考力・判断力・表現力」がみな高い人たちの集まりのはずだ。

 結果的に、そういう人たちは、自分の感情のコントロール能力や自己動機づけ能力、対人関係能力が悪いことが明らかになった。確かに東大、ハーバード大を出た政治家が感情のコントロールができず、議員の座を失ったが、この手の能力がないと頭の良さが吹き飛んでしまうのは確かだろう。これらの能力は「感情の知能」と呼ばれ、これをTIME誌がIQ(知能指数)に対抗してEQ(心の知能指数)と呼んだことから、EQという名で呼ばれることが多い。

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「知識社会で生き残るための「頭の良さ」とは?」の著者

和田 秀樹

和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

精神科医。『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(自己心理学)などが専門。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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