今年4~6月に放映されたドラマ『架空OL日記』(日本テレビ系)は、バカリズムが脚本・主演をつとめた新世代のOL物語だった。郊外の銀行に勤める5人の女子たちの、何が起きるわけでもない日常のドラマを、ライターの西森路代さんと恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田隆之さんは、高く評価している。
「ミソジニーの感じられるネタ」もあったバカリズムが、ありがちな「OLモノ」の展開を避け、リアリティのある描写と面白さを『架空OL日記』で成立させることができたのはなぜか。10月中旬にDVDの発売が予定されている『架空OL日記』の魅力に迫る。
* * *
清田 僕は『架空OL日記』をリアルタイムでは観ていなかったんです。バカリズムって、テレビのネタ番組で女子を戯画化してバカにするようなコントをやっていたりするから、「すごくミソジニーが強い人」というイメージがあって。そういう人の書くOLドラマだから、同じような感じなのかな、と思って当初は敬遠していました。実は、西森さんが主催した『文化系トークラジオ Life』(TBS)のトークイベントに出演させてもらったとき、「事前に観ておいてほしい」と言われて初めて観たんですよね。観始めたら、1話の冒頭からジェラート・ピケのパジャマ着て朝の身支度をするOL・升野(バカリズム)が出てきて、「うわ~、完全に女子をバカにしてるな~」って(笑)。
西森 「女子の朝の支度は長い」みたいなシーンでしたね。ヘアバンドして顔を洗って、鏡見ながらリップグロス塗ったりして。私は5話くらいの放送で偶然見たので、そういう構えた感じなくすんなり入れたのですが。
清田 そのあと、夏帆演じる真紀ちゃんと出勤途中で合流し、「寒いね」「マジ寒いね」ってひたすら言い合うシーンが続くんですが、これも「意味のない会話をする女たち」ってことなんだろうなと思って、ずっと身構えていました。でも、1話を観終わる頃に、「これはちょっと違うぞ……」ってなって。まず、OL5人の間にディスりあいが全然ないんですよ。世の中には「女同士で集まったら上辺だけの会話をして、陰で文句を言いあってる」というテンプレがあるけど、『架空OL日記』は全然そういう方向に行かない。そこから「これはもしかしてすごいドラマかも」って、冷ややかだった目線が一気に反転しました。
西森 バカリズムさん演じる「私」の後輩の紗英ちゃん(佐藤玲)が、ちょっと困った人なんですよね。更衣室のゴミを全然片付けなかったり、先輩たちの中の1人にだけ「彼氏いるんですか?」って聞かなくて変な空気にしたり。でも、そこで「あの子変だよ」と除け者にするわけではなくて、「こういう子だからね」って感じであまり関係性に響かない。ひとつくらい嫌なところがあるからって、排除する感じがないのがすごくよかった。
私自身がOLとして働いていたことがあるからわかるんですけど、会社の仕組みのせいでいがみ合わされるのがバカバカしい。それは後でわかったんですけどね。抑圧的にも聞こえるかもしれないけど、できるだけ穏やかに毎日が過ごせる方向に自然に持っていこうとしていたところはありました。
清田 その環境で生きていかなきゃいけない人たちならではの立ち居振る舞いが必要とされるわけですね。