11月の三連休最後の日、私たち夫婦は暇だった。
「やることが」
「ない・・・」
だが外はまぶしいほどの快晴である。どこかに行きたい。しかし特に行きたい場所も用事もない。午後2時すぎ、遠出をするには遅すぎるし、お昼ご飯はすでに食べてしまった。
とりあえず電車に乗って考えよう
能天気、もとい柔軟な我々はひとまず都営新宿線に乗ってみた。
浜町、馬喰横山、岩本町、小川町、神保町。しょっちゅう降りては散歩してる駅ばかり。小川町なんて昨日も行った。しかしあと10分もすれば新宿についてしまう。東京下町に住んでもうすぐ4年、我々は休日のマンネリを迎えていた。
ここで夫からの提案があった。
「市ヶ谷で降りてみよう」
「市ヶ谷、何かあるかな…」
思えば市ヶ谷駅を降りたことは一度もない。三島由紀夫が昔自殺をした場所だということしか知らない。「たしか釣り堀があったはずだよ」と、三島由紀夫の自殺よりは役立つ情報を持つ夫にしたがい、ここで下車してみることにした。
初めての駅「市ヶ谷」で降りてみた
駅を出てすぐ、線路と隣り合う釣り堀が見える。
「とりあえず釣り堀へ行ってみよう」
「そうだね…」
正式名称を「市ヶ谷フィッシュセンター」というらしい。
釣り堀へ向かう途中の坂道は、傍に無数の苗や植木が売られていて、熱帯魚ショップもある。しかし失礼ながら冴えない雰囲気が漂っている。
釣り堀へ到着
「・・・・・」
「・・・・・」
ド混雑であった。
ゆえに写真はない。東京の三連休、恐るべし。イメージ的に寂れてそうな釣り堀も大盛況。どうやらここは鯉と金魚しかいない釣り堀のようだが、家族連れで大変にぎわっていた。お値段は時間制で1時間750円(釣竿・釣餌は別)。
「釣りはいいか」
「釣っても食べれないしね…」
ケチゆえにさっそく暇になった我々であるが、駅の方面に戻ると急勾配の細い坂道を見つけた。いかにも何かありそうな雰囲気である。歴史の香りもムンムン漂ってくる。これこれ、こういうの!思うままに散歩しているからこそ、出会えるものってあるよね。
しかし登っても何もなかった。
やたら吠える犬二匹に追い立てられ、怯えて坂を下る人間二名であった。
亀岡八幡宮に救われる
コンビニでアイスを買った後、ベンチを探して歩き回っていた我々は、この地味散歩を盛り上げる最高のスポットに行き着いた。
長い石段の向こうにそびえる鳥居。左手には真っ赤な神社の建物。途方に暮れていた市ヶ谷散歩に、一気に「観光地感」が押し寄せてくるではないか。
「なんかちょっと『千と千尋』っぽくない!?」
「・・・・・」
見たことのない映画に雰囲気が似ていると騒ぎ出す私。このたったひとつの神社で、一気に散歩気分を盛り上げようとしている。
けっこう急な石段を登った。鳥居をくぐる手前、道端に置かれたコカコーラの赤いベンチに座る。
景色のいいところでお茶をするのは最高だよね
コンビニのアイスコーヒーって、最近めちゃくちゃ美味しい。
もしかしたら10年ぶりくらいに食べたかもしれないハーゲンダッツ。突然甘いものが食べたくなったのである。不思議!
「最高の気分だねぇ」
「本当だねぇ」
秋色に満ちた境内でお散歩をしたよ
どこまでも優しい午後の光に、はちみつ色のイチョウの葉っぱ。静かで豊かな景色に、ほっとする。この謎の途中下車散歩が、なんとかまとまってきたことにも!(亀岡八幡宮に感謝)
誰かが遊んだ跡に心はどこまでも和んだなぁ。
もちろんお参りもさせてもらいました。
「どんなことお祈りした?」
「何かいいことありますように」
常にザックリと幸運を祈っている夫であった。
神社の脇道を通ってみた
神社の脇道を抜け、「こんなところ行き止まりでは?」という小径を歩いていく夫。なんだかトトロについて行っているメイの気分である。(別に夫の体型がトトロというわけでは…)
中央に三本の樹がそびえる小径を抜け、ぜったい行き止まりだと思うのに右に曲がると小さな階段があった。
階段を降りると・・・
「・・・・・」
「・・・・・」
何もなかった。
何もないというか、誰もいなかった。時空を違えてしまったんじゃないかと錯覚するほど、しんとした街。しばらく歩いて、都営大江戸線の牛込柳町駅へたどり着いたところで今日の散歩はおしまい。
秋の空気、どこまでも澄んでたなぁ。
結論:予定は立てた方がいい
でも、立てなくても、とびきり綺麗な景色に出会えちゃったりするから人生は楽しいよね(ポジティブ)
Sweet+++ tea time
ayako
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