8日の東京株式相場はTOPIXが小幅に続伸し、26年ぶりの高値を付けた。日本企業の収益力向上を評価する買いが根強く入り、午後の取引で持ち直した。上期営業利益が計画から上振れたバンダイナムコホールディングスなどその他製品株が高く、業績へのアナリスト評価が高まったロームなど電機株も高い。
半面、米国の長期金利低下や為替のドル安・円高推移は重しで、銀行や保険株など金融セクターは終日軟調。主要株価指数の移動平均乖離(かいり)などテクニカル分析上の過熱感も投資家心理の底流にある。
TOPIXの終値は前日比4.31ポイント(0.2%)高の1817.60。リーマン・ショック前の2007年2月に付けていたバブル経済崩壊後の高値(1816.97)を10年ぶりに更新、1991年11月以来の水準を回復した。一方、日経平均株価は23円78銭(0.1%)安の2万2913円82銭と5営業日ぶりに反落。
岡三アセットマネジメントの前野達志シニアストラテジストは、「ファンダメンタルズは底堅く、為替がドル安・円高で推移しても電機や精密機器などは強い。稼ぐ力が世界に認められ、ドル・円相場と日本株はここ1カ月ほどデカップリングの傾向が見える」と話した。
7日の米10年債利回りは2.31%と前日に比べ小幅に低下。さらに日本時間8日朝には、米上院の共和党指導部が法人税減税の実施時期を1年延期することを検討しているとの米紙ワシントン・ポストの報道が市場に伝わり、アジア時間8日の時間外取引では2.30%台と低下トレンドが続いた。きょうの為替市場では、ドル・円が一時1ドル=113円60銭台と前日の海外時間帯に付けた114円30銭台からドル安・円高方向で取引された。
この日の日本株は、前日の欧米株軟調や海外金利、為替動向が嫌気されたほか、日経平均が7日に25年ぶり高値を更新した反動売りが警戒され、主要株価指数は安くスタート。TOPIXは一時0.5%安、日経平均は178円(0.8%)安まで売られる場面があった。日経平均の場合、前日段階で25日移動平均線からの上方乖離率が6.8%と目先過熱を示す5%を超えていた。
ただし、好決算銘柄やアナリスト評価が高まった銘柄を買う動きは継続的に入り、午前後半以降に下げ渋ると、TOPIXは午後の取引プラス圏に浮上。きょうのほぼ高値圏で引けた。岩井コスモ証券投資調査部の堀内敏一課長は、「日経平均がバブル後高値を更新した達成感、欧米株高の一服、米金利低下、円高で下げたが、企業業績予想は切り上がり、日本のPERは世界比較で割安、買い安心感がある」と言う。ブルームバーグ・データによると、TOPIXの来年予想PERは14.9倍と米S&P500種株価指数の17.7倍、ストックス欧州600指数の15.1倍より低い。
東証1部33業種はその他製品や海運、電機、化学、非鉄金属、精密機器、陸運、電気・ガスなど19業種が上昇。下落は保険、銀行、建設、鉄鋼、その他金融、機械、医薬品など14業種。保険や銀行株の下げについて、岡三アセットの前野氏は「米国の税制改革が先送りされれば、来年期待されている米景気の拡大期待は剥落、予想より長期金利は上がらないとの思惑からきょうのドル安・円高、金融セクターの下げにつながった」とみていた。
売買代金上位では、今期利益計画の上方修正と自社株買いを受けたトヨタ自動車が堅調。好決算を受け野村証券が目標株価を上げた旭化成、上期に営業黒字化したワコム、産業機器などマシナリー事業の好調で今期利益計画を増額したブラザー工業も高い。半面。1-9月期営業減益のクボタ、4-9月期減益の横河電機が安く、四半期増益率が鈍化したライオンは大幅安。清水建設や味の素、タカラトミーの下げも目立った。
- 東証1部の売買高は18億6822万株、売買代金は3兆3382億円、代金の3兆円超えは8営業日連続
- 値上がり銘柄数は1041、値下がりは890