ところで君はピーマン男の噂を聞いたことがあるだろうか。私の調査によると、実は全国にかなりの数のピーマン男が身を潜めていることがわかった。だが、ほとんどのピーマン男は私のように独身であり家庭など持ってはいない天涯孤独の身の上だ。だから誰もが見て見ぬふりをしたがっている。あなたも少しくらいは聞いたことがあるだろう。そしてできれば考えてみて欲しい、いったい誰がピーマン男でピーマン男じゃないのかを。
※この話は実際にあった実話を元に再現している。
ピーマン男
ピーマンの肉詰めは私のようなタンパク質欠乏症には打ってつけの食べ物だ。近所のスーパーに行き、新鮮なピーマンと合挽きミンチを購入すればいい。支払いは2ドルかそこらのコインで事足りる。
調理方法は簡単でグラフィックスに書かれているコードを読めば、誰にでもできる。まずピーマンに適量の味付けをしたミンチをジャックインさせる。キッチンスペースは広い方がやりやすいが、そうでなくてもテクニックで十分カバーできる。油を引いたフライパンにブツを入れたらあとは待つだけだ。5分経ったらフリップさせる。マニピュレータでひっくり返す。おっと、力加減に気を付けて、ピーマンとミンチがクラッシュしちまうぜ!無事、作り終えたらターミナルにドッキングさせ、冷蔵庫にしまい込み、出番が来るのを待たせる。
ベットで寝ている女が言った。「ねえ、お腹が空いたわ、何かあるかしら?」
ほらほら、来た来た。こういう場面でスマートにエスコートできる男が本当にモテる男なのだ。人生にはこうしたモテポイントがいくつかある。
待ってましたとばかりに電子レンジにブツを入れ、5分待つ。ちょうどタバコを一本吸い終わるぐらいの時間だ。私はその間に顔を洗い、吸いかけのタバコに口をつけた。
「ねえ、まだ?」ベットから女の声がした。私は深いため息をついた。待つだけの人間は気楽なものだ。飲みかけのウィスキーを喉の奥に流し込み、最後の作業に取り掛かった。チン!私は全裸のまま、そいつを寝室まで持って行き、ナイトテーブルの上のそっと置いた。女はまだベットで目を瞑っている。微かの白檀の香りがした。昨日の記憶が蘇ってくる。
私が寝室を出ようとすると「ドアを閉めて」と、女が言った。やけに乾いた声だった。私はミネラルウォーターを取りに部屋を出ようとした。どこかでピーマンをかじる音がする。私はそのまま振り返らずに静かにドアを閉めた。