現在、国立新美術館(東京・六本木)で開催中の展覧会「安藤忠雄展―挑戦―」は、多くの“一般人”でにぎわっている。学歴や師弟関係が重視される建築の世界にあって、安藤忠雄氏は独学で建築設計を学び、東京大学建築学科教授となり、「世界のANDO」といわれるまでになった。経済人や文化人にも安藤ファンは多い。建築専門誌「日経アーキテクチュア」の宮沢洋編集長が、安藤氏本人や安藤氏の関係者50人に実施したインタビューの中から、安藤氏の「言葉の力」を読み解く。連載は全7回の予定。
世界で最も有名な現代日本の建築家は誰か? 建築関係者にそう尋ねたら、10人に9人は安藤忠雄氏の名前を挙げるだろう。一般の人でも、顔写真を見れば「ああ、あの独特のヘアスタイルの建築家ね」と思い当たる人が多いのではないだろうか。
「元プロボクサーで、建築は独学」「拠点は大阪」「小さな住宅から設計活動をスタートし、今では世界をまたにかけて活躍している」──。建築に興味のある人ならば、そんなプロフィルをご存じかもしれない。けれども、安藤氏が実際に何を設計したのか、建築家としてどこが評価されているのかを問われたら、答えられる人は少ないのではないか。
現在、東京・六本木の国立新美術館では、安藤氏の大規模な展覧会「安藤忠雄展-挑戦-」が開催中だ(会期は12月18日まで)。10月末時点で入場者数は10万人を超えようとする勢いだ。建築の展覧会というと来場者の大半が建築関係者であるのが普通だが、安藤展の場合はほとんどが一般の人だという。
来場者のなかには熱烈な安藤ファンもいるだろうが、これだけ一般の人が押し寄せているのは、「何となく知ってはいるけれど、安藤忠雄は実際どうすごいのか」──。それを確かめに来ている人が多いからではないだろうか。
この連載「旧弊を打ち破る安藤忠雄の言葉」では、安藤氏が発した「言葉」を拾い出して、実現困難なプロジェクトを推し進めるヒントを学ぶ。今回と次回は、その前段階として、安藤建築の特質を以下の6つの観点から解説しよう。
①コンクリートと光
②常識外のアイデア
③小住宅にも全力
④境界を越える
⑤緑に隠す
⑥プロジェクトがつながる
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