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【首都スポ】

レスリング世界一女子高生 須崎優衣

2017年11月8日 紙面から

世界選手権で金メダルを獲得した須崎優衣。リオ五輪金メダリストの登坂と東京五輪代表を争う=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで(武藤健一撮影)

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 昨年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを4個獲得し、世界で強さを見せつける日本女子レスリング界にまた新たなヒロインが現れた。女子48キロ級の須崎優衣(18)=エリートアカデミー=は今年8月の世界選手権で初優勝。日本勢の女子高生としては、2002年の伊調馨以来の金メダリストになった。今季飛躍したきっかけは何か、さらにはリオ五輪同級金メダリストで、20年東京五輪代表を争う登坂絵莉(24)=東新住建=への思いなどを聞いた。 (千葉亨)

 須崎には忘れられない、いや忘れたくない光景がある。15年12月に開催された全日本選手権。初めて挑んだシニアの大会で決勝まで勝ち進みながら、7歳年上の入江ゆきに0-10と完敗したシーンは今でも脳裏に焼きついている。

 「パワーもレスリングも体力も技術も気持ちも、まだまだ全然足りないと思い知らされた。チャンピオンになるためには1日1日を大切にして練習を積まないといけない」。須崎にとっては小学5年以来の敗戦。「本当に悔しくて、こんな思いは絶対に2度としたくないと思った。この悔しさを忘れてはいけない」と準優勝の賞状を寝室の天井に張り付け、携帯電話の待ち受け画面も銀メダルの写真にした。

 さらに筋力不足を痛感したことから、体重増にも挑戦。15年の全日本選手権までは減量の必要がほぼない49キロだったが、筋力トレーニングを積んだことで半年後には53キロまで増やしてパワーアップに努めた。

 あれから2年近くがたち、努力が実って世界女王にまで登り詰めた。それでも天井に張り付けた賞状と待ち受け画面は以前のまま。「2年前に負けた時、『この負けがあったから、いま勝てているんだ』と思えるようになろうと決めた。あの悔しさを忘れてはいけない。初心を忘れないようにずっと変えないでいようかなと」。世界選手権後にあった10月の国体でも優勝。2年前の全日本選手権決勝で敗れて以降、連勝は再び「63」に伸びている。

 忘れたくない光景は、それ以外にもまだある。1年前、リオ五輪の女子48キロ級で登坂が金メダルを首にかけたシーンだ。須崎は登坂の練習パートナーとして現地入り。登坂のうれし涙と笑顔を目の当たりにした。

 「リオ五輪の試合の時とかは本当にすごいなって尊敬、あこがれの部分しかなかった。でも表彰台の一番上で輝いている姿を見た瞬間、『私は絶対にこの選手を倒すんだ』と決めました。この選手を超えなければ東京五輪に行けない。だから絶対に勝たないといけない。あこがれから『次の東京五輪では私が一番上に立つんだ』というふうに変わりました」

 登坂と須崎は過去に1度も対戦がない。12月の全日本選手権では東京五輪の新階級となる50キロ級で対戦する可能性もあるが、登坂は10月14日の練習中に左膝と左足首の靱帯(じんたい)を損傷。全日本選手権で世界選手権女王、五輪女王の頂上決戦が実現するかは分からない。それでも須崎は「登坂選手を倒したことはないので厳しい戦いになると思う。でも登坂選手と対戦できるところまで勝ち上がったら、しっかり勝って真のチャンピオンになりたい」と意気込む。五輪女王が相手であろうとも、気後れすることはない。東京五輪で自身が輝くまで負けるつもりはない。

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