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香川県立文書館 戦争資料が破棄対象 1万5000冊

多数の公文書が廃棄対象となった香川県立文書館=渡辺暢撮影

「特定歴史公文書には当たらない」

 香川県立文書館(高松市)に保管される歴史公文書約2万6000冊のうち、軍歴など太平洋戦争関係の資料を含む約1万5000冊が、県条例に基づき「廃棄」扱いにされていることが分かった。「将来的に評価が上がる可能性がある」と懸念した専門職員の機転で保管を継続しているが、市民が閲覧できない状態になっている。識者は「公文書を守るための条例なのに、専門知識のある職員が残すべきだと考える歴史公文書を残せないのはおかしい」と指摘する。

 香川県は公文書管理法施行(2011年)を受け、13年に県公文書管理条例を制定。県の行政文書は保存期間(内容に応じ1年未満~30年間)満了後、「歴史資料として重要」と判断されたものは特定歴史公文書として文書館に移管し、それ以外は廃棄しなければならないと定めた。

 これを受け、書類を保管する県担当部署と同館は、14年度の条例施行までに約1年間かけ、過去に県から移管された約2万6000冊を点検。このうち、軍歴関係書類や農地転用に関する書類などを含む約1万5000冊は、「個人に関わる内容などで『重要な政策決定の過程が記録されている』とはいえず、特定歴史公文書には当たらない」と結論付け、廃棄対象に決めた。

 しかし、廃棄対象文書を改めて確認した同館の専門職員から「軽々しく廃棄することはできない」との意見が出たことから、「再審査中」の扱いで保管を継続している。同館の嶋田典人・主任専門職員は「軍歴関係書類などは当事者にとって大切な資料。長期的に見れば『石』が『玉』になる可能性もある」と説明する。

 日本アーカイブズ学会会長で、人間文化研究機構国文学研究資料館の大友一雄教授(記録史料学)は「専門職の意見を生かす仕組みをつくり、保管すべきだと判断したものは正式な保管文書として扱えるようにすべきだ」と話した。【渡辺暢】

専門職の育成が課題

 公文書の保管・廃棄を適切に判断するには、専門知識を持った職員が欠かせない。香川県立文書館では公文書管理の研究を続けてきた専門職員が価値判断の中心となった。一方、第二次世界大戦の関係文書約500冊を廃棄し、うち91冊が内規に反して廃棄していたことが発覚した千葉県文書館は、専門職員が異動で不在だった。

 専門職員の配置や育成などの対応は、各文書館で異なる。

 文書館を置く37都道府県に毎日新聞が取材したところ、神奈川、広島など8都道県は、大学院などで公文書管理を学んだり、日本アーカイブズ学会認定の「アーキビスト資格」を取得したりした職員が常駐すると回答。大阪、香川など5府県は、大学で法制史を学ぶなど「同等の知識がある職員が常駐している」とした。そうした職員がいない文書館も、多くが国立公文書館で研修を受けさせているが、山形、愛知、和歌山の3県は研修を実施していなかった。

 西日本のある文書館職員は「予算減で専門職員が雑務も担当することになり、公文書管理に集中できない実態もある」と指摘。大友一雄・国文学研究資料館教授は「行政機関は歴史的な意味合いを考えず、単に『事務文書』と捉えがちだ。資料的価値を判断できる専門家の育成が進まない状況が続けば、千葉や香川と同様の問題が繰り返されかねない」と警鐘を鳴らす。

 より客観的に保管・廃棄を判断しているのが熊本県だ。担当課などが廃棄対象とした書類について、パブリックコメントや有識者への意見照会を実施し、最終的に専門家でつくる第三者委員会がチェックする仕組みを導入。公文書管理条例が施行された2012年度から15年度までに対象15万1490冊中2514冊を「政策決定過程の説明に役立つ可能性がある」などとして廃棄を差し止めた。

 同県は文書館を設置していないが、残すべきだと判断した公文書は県庁などで保管している。県政情報文書課は「将来必要となる公文書が廃棄される事態を避けるため、万全を期している」としている。【渡辺暢】

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