(英エコノミスト誌 2017年11月4日号)

ベネズエラ、原油価格表示を人民元に

ベネズエラ北西部スリア州の石油掘削機。(c)AFP/JUAN BARRETO〔AFPBB News

支払い能力を失った南米の左翼政権が国債市場でスターになっている。

 たいていの投資家はベネズエラという名前を耳にするだけでぞっとするだろう。

 ニコラス・マドゥロ大統領は、資本主義が「この惑星を破壊した」と述べ、社会主義のユートピアを建設すると誓っている。同国の経済生産は2014年以降で3分の1以上縮小しており、人々は食料や医薬品の深刻な不足に苦しんでいる。

 それにもかかわらず、この国には、どんな投資家でも舌なめずりをしそうなリターンをここ数年もたらしている資産クラスがある。

 ベネズエラ政府と国営石油会社PDVSAの発行した債券がそれだ。こうした債券は2015年1月以降、60%近い値上がりを記録しており、驚くほど高いレートのクーポン(利金)が期日通りに支払われている。

 「債券投資家にとって、ベネズエラほどありがたい友人はこれまで存在したことがない」

 米フロリダを本拠地とする投資会社RVXアセット・マネジメントのレイ・ズカーロ氏はこう語る。

 ベネズエラに資金を貸しつけている外国の債権者が太っていく一方で、その国民は飢えている(先日行われたある調査によれば、回答者はここ1年間で体重を平均9キロ減らしている)。

 そんな惨状は、政治的にとても擁護できるものではないだろうし、財政的にも持続不可能だろう。実際、マドゥロ政権はデフォルト(債務不履行)の瀬戸際にこれまで以上に近づきつつある。

 PDVSAは10月27日、社債の元本8億4200万ドルを償還したと述べたが、11月1日になっても投資家による資金の受け取りは始まらなかった。

 取引を仲介する金融機関も、送金は満期日の4営業日後に当たる11月2日になるだろうと顧客に伝えた。投資銀行の野村は、この一連の出来事を「ニアミス」と表現している。

 これとは別に、11月2日には12億ドル規模の支払いも行われることになっていた。これらの支払い義務を果たすために、ベネズエラは30日間の猶予期間を活用し、ほかの支払いを7億ドル以上遅らせている。

(注1=エコノミスト誌が印刷に回された後、マドゥロ大統領は2日夜のテレビ演説で、PDVSAは2017年償還予定の債券についてあと1度だけ返済を行い、残る債務は再編すると宣言した)