田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
日本のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)、特にその芸能関係において歴史的な3日間だった。元SMAPのメンバー、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による『72時間ホンネテレビ』(AbemaTV)は、世界水準での注目を集める一大イベントになった。しかも地上波のように計算され、緊密な展開の番組ではなかった。むしろメンバーの素に近い感情のふり幅が存分に映し出され、3日間の緊張と疲労からくるグダグダ感もあり、ただそれが全て新たな自由の息吹の前で素晴らしく昇華されていた。
グランドフィナーレの企画「3人だけの72曲生ライブ」を終え、他の出演者たちからの心のこもったエールが流されるエンディング。そこで本当の最後の最後に、元メンバーの森且行が出てきて「ずっとずっと仲間だから」と語ったとき、3人の目には熱いものが流れた。と同時に筆者もまた深い感動に打たれた。そしてTwitterでその思いを簡潔に以下のようにつぶやいた。
感動した。SMAPで感動したのはいつぶりだろうか? この1年、感動よりも息苦しい問題意識しか抱かなかった。それを薙ぎ払う、ともかくいい番組だった。
このつぶやきには、1000を軽く超えるリツイートと2000を超える「いいね」を頂戴した。SMAPについて書くといつも思うのだが、SMAPのファンの方々は本当に気持ちが温かく、また包容力のある方々が圧倒的に多いことだ。これは多くのアイドル批評家たちが共通して感じていることではないだろうか。
アイドル批評は、あくまでも客観的な観点からアイドルを評価するスタンスが求められる。それは時にファンの感情とは違う方向にいくだろう。筆者もSNSで何度かその「すれ違い」によってファンの方々からの批判、いやしばしば誹謗(ひぼう)中傷に遭遇することがある。ところが、SMAPの論説を書いたり、感想をつぶやいても、そのような目に遭うことは極めて珍しい。
むしろ、論説を書くたびに実感するのは、ファンの方々がみんなSMAPを愛し、そして彼らの未来に自分たちの未来も重ねて応援していることだ。その温かい心と秘めた思いに、筆者もまた心を打たれる。これは日本のSNSでは稀有(けう)な体験である。もちろんそれは筆者の個人的な体験だけではない。彼らを見守る世界の人々全ての感情だろう。今回の3人のホンネテレビへの出演で、長い間忘れていた言葉、「国民的アイドル」の本当の意味を思い出した。
SMAPは温かいのだ。そしてファンもまた温かい。