世界最大級のキリギリスを7種、新種として記載した論文が学術誌「Zootaxa」に発表された。
マダガスカル島でしか見られないこの昆虫は、ボディビルダーのような「上腕」をもち、時に非常に攻撃的になる。どちらもキリギリスとしては意外な特徴だ。(参考記事:「最大、最長、最重量、世界一の昆虫は」)
「この虫に近づくと、力強い前肢で指をつかまれて、大顎で噛まれそうになります」と、今回の研究論文の共著者であるジョージ・ベッカローニ氏は話す(同氏は、けがを防ぐため、このキリギリスをつかむときは長いピンセットを使った)。
「ほかのキリギリスでは、こんな防御行動は見たことがありません」
奇妙な同居者
ベッカローニ氏らは、マダガスカルの乾燥林を二度にわたって調査。採集できた標本と、博物館の標本をもとに、これらの新種を同定した。(参考記事:「まるで葉っぱ、新種のキリギリスを発見」)
乾燥林の調査で同氏は、専門であるゴキブリを見つけようと、石の下や樹皮の下といった隠れ場所を探した。すると偶然、体長6センチ以上もあろうかという風変わりなキリギリスを見つけた。(参考記事:「戦士か恋人か、戦略「選ぶ」ゴキブリを発見」)
肉食性のキリギリスはゴキブリを食べることもあるだろうが、ここではゴキブリとキリギリスは互いの存在を受け入れているようだ、とベッカローニ氏は述べている。「このような隠れ場所はわずかしかありません。ゴキブリもキリギリスも、日中の厳しい暑さや捕食者から身を守るためにこうした場所を必要としているのでしょう」
生涯の伴侶?
興味深いことに、ベッカローニ氏は何組ものキリギリスのつがいが並んで休んでいるのを発見した。もしかするとこの昆虫は一生添い遂げるのかもしれない、と言う。
「この論文で可能性が示唆された一夫一妻制、つまり長期的なつがいを形成する行動は、私の知る限り、ほかのコオロギやキリギリスでは見られません」と英ダービー大学の昆虫学者、カリム・バヘド氏はメールで回答してくれた。同氏は今回の研究には参加していない。
一夫一妻制をとる昆虫は珍しいが、ほかに例がないわけではない。たとえば、シデムシの一部は一緒に幼虫の世話をする。(参考記事:「共食いするシデムシ、動物界の“悪母”」)
隠れ場所の外でもオスがメスについていくのかなど、さらに研究する必要があるという点で、両専門家の意見は一致している。