<ヤフオクで猛威> 1年くらい前、ヤフオクで妙なBOXセットを発見した。それはPCエンジン
スーパーCD-ROM2のソフトが3本セットになっているもので、メーカーはPCE Worksという聞いたことないところ。やけに洗練された感じがしたので、復刻版なのかなと思ったんだけど、そんなものも聞いたことがない……
気になってツイッターで質問してみたことろ、フォロワーさんから「ドイツの業者が無断でつくって販売しているもの」と教えてもらい「なにそれ」って思った。そのときはそれ以上、興味が湧かなかったので忘れていたんだけど、先月とあるネット旧知の方から「このままじゃ、CD系レトロゲームがやばいかも」という不穏なメールを頂いてしまったため、飛び起きるように調査を開始したのだ。
※こちらは商品に付属するグッズの一部 なんでも最近、そのPCE Worksのコピー品がヤフオク!で猛威を振るっているらしいじゃないか。もう、偽物の類なんておなかいっぱいだよ。なんて思いながら調べてみたら、結局は驚いたのだ。
こちら……
※2017年8月~9月のオークション結果の一部 おいおい、なんだこれ!?
いつの間にか取引数がものすごい増えてるじゃん!しかも落札額が半端じゃない。これは本当にやばいことになってるぞ!?
<「PCE Works」は何者なのか?> 一般的なイメージとしてゲームソフトをコピーしているような業者は表舞台には出てこないものだ。しかしながらこのPCE Worksというメーカーは何を考えているのか堂々と公式サイトを開設しており、しかも通販までしていた。
・
PCE Works公式サイト なんなら現在、PCエンジン30周年セールをやっているくらいのポップさすらある。
本当にここライセンス無いんだよね。何度も確かめたくなっちゃうよ……
気を取り直して公式サイトを上から下までなめるようにチェック。
しかし、すごいな。
そのラインナップには正直、目を見張るものがあるのだ。いずれもPCエンジンのSUPER CD-ROM2ソフトのようだが、
見たことないパッケージもちらほら。このメーカーが最初に発表したのは2014年の「PCEメモリーズ」というボックスだったようで、『レニーブラスター』『風霧』『フォーセットアムール』『シルフィア』の4本がセットになったものである。いずれも鼻血が出るくらいのプレミアソフトじゃないか。
さらに『ツインビーりたーんず』
※1といった商品化されてないものや、『スペースファンタジーゾーン』
※2といった未発売品。さらにPCエンジンに移植されてすらいない『ロックマン』
※3といったゲームまで、ご丁寧に商品化されている始末。
何度も同じことを聞いて恐縮だが、これ全部
「海賊版」なんだよね?
しかもよくある本物そっくりにつくってる偽物と違って、わざわざ説明書の裏表紙やCO-ROM表面に「PCE Works」という
ロゴが刻印がされているっていう謎のこだわり仕様だ。
※1 PCE版『ときめきメモリアル』に収録されていたミニゲームのひとつ。※2 ほぼ完成していながら発売中止になった幻のソフト。※3 海外のアマチュアが無許可で勝手に移植した同人作品。<海外での評判> 売ってるものはだいたいわかった。クオリティは高いしラインナップも絶妙なものばかりだ。しかしこのような所業、海外ではどのように思われているのだろう。
さらに調査を進めると中心メンバーと思われる人物の名前を特定できた。Tobias Reich氏。彼はアップスキャンコンバーターの研究で欧州レトロゲーム界に名を馳せた人物だった。海賊版をつくってはいるが、そのスタンスは「アジア圏のひとたちが生活のために手を染めている」という従来の無断コピーへのイメージとはかけ離れている。
たったひとつだけ確実なことが言えるとしたら、それはTobias氏が
ガチのPCEオタだということだ。
そのため、マニアに対して痒いところに手が届くプロダクションスキルが尋常じゃないことは認めざるを得ない。独自のコレクターボックスや、オリジナルグッズなどへのこだわりは前述の通りである。
※例えばこれはパンティ付という驚きのコレクターズボックス。 しかしそんなTobias氏も過去にはPCエンジンCD-ROM2プレミアソフトの代表的作品である『銀河府警サファイア』のまぎれもない偽物をつくっていたり、現在でもゲームを英語へ翻訳する際に別の海外フォーラムの有志がつくったものを丸々パクってしまったりと色々やらかしているという話もあり、その評価は分かれるところだ。
たとえば2015年のこちらの海外フォーラム
Digitpress.comでは以下のようなやりとりがされていた。
「TobiasはコナミのIPを盗んでコピー品を売っているが、なぜコナミは動かないんだ?」
「ニッチな需要のために、新しいパッケージをデザインしたり、生産する技術を習得したりするのは大変なことだ。私は立派だと思うよ。」
「しかし、彼が過去に『銀河府警サファイア』の偽物をつくっていたことを忘れてはいけない」
「それが何か問題か? これだけのものを提供してくれているんだ。それなりの報酬があってしかるべきじゃないか」
「少なくとも彼が『ロックマン』を移植したことについてはコミュニティにも悪影響を及ぼしているね。本来PCEソフトでないものを出す意義がわからない」
「コナミのような大企業はレトロゲームで利益を出すことは無理だが、ライセンスの許可も出さないだろう。そのうち彼は訴えられると思うよ……」
一方、海外掲示板
RedditGamingや
NeoGAFでもたびたび以下のように言及されている。
「彼は犯罪者です」
「海賊版のくせに高過ぎるよね」
「私はいくつか持ってますが悪くない買い物でした」
「もしあなたがプレミアソフトを安く手に入れたいなら彼は神です」
また、フランスのフォーラム
gamopatではこのような意見も。
たとえば私はローレックスの時計が欲しくても中国製の偽物を5ユーロで買うつもりはありません。私がコレクターになったのはゲームの物資的な魅力だけでなく、歴史や希少性に価値を感じるからです。彼は歴史や希少性までコピーできますか?
<中心メンバーTobias氏を直撃> 海外での評判もだいたいわかった。しかし一番知りたいことがまだわかっていない。それは、このメーカーが
「何の目的でこんなことをしているのか」ということである。
こういうときは本人に直接聞くのが一番早いのだ。
今はネットの時代。しかも相手は普通に公式サイトを開設している人物である。買うふりして質問攻めにしてやるぜ!なんて思いつつ公式サイトに載っている連絡先へメールを送ってみたところ、あっさりTobias氏本人から返事がかえってきて、逆に恐縮してしまったのだった。(ヘタレ)
それではさっそく彼とのやりとりを、わかりやすくアレンジしつつ再現してみよう。
| | オロチ:あのう、これって正規品ですか? |
|
| PCE Works:我々の商品はほとんどが"repros"です。 | |
|
| | オロチ:つまり複製品なんですね? |
|
| PCE Works:そうです。NESやメガドライブと比べて、海外にはPCエンジンのファンが少ないのです。 | |
|
| | オロチ:それは少ないから問題ないという認識でしょうか。目的は何なんですか? |
|
| PCE Works:ひとつはプレミア価格に対抗するため。もうひとつは世に出ていないソフトの復刻です。 | |
|
| | オロチ:なるほど素晴らしいですね。目的だけは。しかし、だからといって偽物をつくるという手段についてはどのような見解をお持ちで? |
|
| PCE Works:reprosの歴史は長い。あなたはNESやSNESのタイトルを販売するウェブサイトを容易に見つけることができるでしょう。しかしPCエンジンについては存在しなかったのです。私たちが始めるまでは…… | |
|
| | オロチ:真実はこれからの歴史が証明するってやつですか。なるほど立派ですね。志だけは。 |
|
| PCE Works:我々の商品を見てください。ちゃんとロゴマークが入ってるでしょう。 | |
|
| | オロチ:そうか。あのマークはオリジナル品と区別をするためのものだったのか! ちゃんとした目的があって作ってるんですよというエビデンスとしての!? |
|
| PCE Works:まあ、そういうことですね。 | |
|
何回かやりとりして私オロチは思った。
やばい。このひと、ちゃんと受け答えしてくれるし、まともなひとだ。これがドイツ人気質ってやつかと。しかしそれだけに、なぜこんなことをしているのか不思議なのだ。裁くつもりはない。理解できないからこそ理解したくて仕方ないのである。あくまでも
追い求めるのは真実のみなのだから!
そこで私はあの話題を振ってみた……
| | オロチ:そんな、あなたがたの商品が日本のオークションを荒らしまくってるのをご存知ですか? |
|
| PCE Works:…… | |
|
果たして彼の反応はいかに!?
長くなるので今回はここまでにしておこう。後編では驚きの展開が待っているぞ。なんて煽ってみる(笑) 続きをお楽しみに!
(後編へつづく)
- 関連記事
-
海賊版を1万で買ってバラしてヤフオクに流すと3~5万になるとか、現状日本では転売ヤーの中でも下衆な奴らの資金源にしかなってないしな。