「MTV Unplugged」は1989年にアメリカ・ニューヨークでスタートして以来、世界各国で人気を集めてきたライブ番組。日本制作版ではこれまでに宇多田ヒカル、平井堅、布袋寅泰、長瀬智也(TOKIO)、加藤ミリヤ、VAMPS、水樹奈々、KinKi Kidsらが出演してきた。女性アイドル初の「MTV Unplugged」となった本日の公演には、抽選で選ばれた約320名が来場。番組の演出にあわせ、モノノフ(ももクロファンの総称)はペンライトを使用せずにももクロの歌声にじっくりと耳を傾け、曲が終わるたびに惜しみない拍手を送った。
開演と同時にまず、ストリングスカルテット、ギター、ベース、キーボード、ドラムからなるバックバンドが登場した。ももクロはハット、担当カラーのシャツに蝶ネクタイ、黒のサロペットという衣装を着て、横一列に整列。「サラバ、愛しき悲しみたちよ」「WE ARE BORN」と激しいロックチューンのナンバーを、原曲の疾走感を保ちつつもアコースティックなアレンジのバンド演奏にあわせて披露した。続く「DNA狂詩曲」ではリードを百田夏菜子、コーラスを玉井詩織、有安杏果が取る形で息の合ったハーモニーを響かせるなど、普段のライブ以上に歌の存在感が際立つステージが展開されていった。
少し落ち着いた雰囲気で始まったMCでは、百田が「お客さんの雰囲気も今日は違いますね」と話し、高城れにが「モノノフさんですよね?」とカジュアルな格好で来場したファンに語りかける。さらに玉井が「普通の服、持ってるんですね」と少し毒づくなど、テンポよく会話を弾ませていく。この日のステージがももクロにとって挑戦の場であると勇んでいた百田は、「今日は“本物の人”たちが立ってきたこの『MTV Unplugged』のステージなので、皆さん一緒にがんばっていきましょう」と呼びかけた。また彼女たちは、自己紹介がいつもと同じ段取りながらファンのレスポンスがないことと、伝統の「MTV Unplugged」であることを鑑みて、しっとりと挨拶。1番手の高城が「わたくしが」などとできる限り丁寧な口調を心がけた結果、語尾を「ござんす」にしてしまう場面もありつつ、それぞれが普段とは違った物腰柔らかな雰囲気の挨拶をしていった。
背の高い椅子に腰かけたももクロは、最新シングルの表題曲「BLAST!」を伸びやかに歌唱。さらに緩急の聞いたバンド演奏に乗せて、「モノクロデッサン」「今宵、ライブの下で」と優しくも力強い歌声を届け、会場を感動的なムードで包み込んだ。続く2度目のMCでは、佐々木彩夏が「『ピンキーとキラーズ』をイメージしました」と今日の衣装についてコメントし、百田が「初めてがたくさん詰まったライブっていいですね」と笑顔を見せた。
「白い風」では有安が抜群の歌唱力で観客を魅了。続く「青春賦」はガットギター1本の演奏をバックに5人が歌い始めた。この曲では途中からほかの楽器が演奏に加わっていき、徐々に壮大なアンサンブルになっていくというエモーショナルなアレンジで届けられた。またトーク中に高城が「感慨深いですね。8、9年雨は路上で歌っていた私たちがこんな素敵なステージに立てるなんて」と本公演に出演できた喜びを露わにし、百田は「ここ、東京キネマ倶楽部で初めてライブをやったときは前日にメンバーが1人抜けて、そのあと名前にZが付いて……。思い出がいっぱい詰まってますね」と改名時のエピソードを振り返った。
ライブ後半、「『MTV Unplugged』では異例かもしれない」と述べつつ、次の曲からはダンスを交えて楽曲を披露すると明かしたももクロ。軽快な演奏に乗せて「マホロバケーション」を歌い踊り、エンジンがかかった様子を見せた彼女たちは、続けて「行くぜっ!怪盗少女」をパフォーマンスした。間奏ではドラムセットの前に立った百田がスティックを両手に持ち、普段のライブでエビ反りジャンプを決める瞬間に背面でシンバルを叩くというテクニックを披露。「走れ!」を歌い終わったあと、改めて百田は「どうだった? 私のエビ反りドラム」とレアなパフォーマンスを振り返った。この日限りの歌、トーク、ダンスでファンを大いに楽しませた彼女たちは「MOON PRIDE」のあと、ラストナンバー「灰とダイヤモンド」を情感豊かに歌い上げた。
すべての演目が終了したあと、ダウンタウンももクロバンドのメンバーでもある佐藤大剛(G)は挨拶で「ももクロの高い音楽性が伝えられたと思います。バンドも楽しくやれました」と感想を語った。そしてメンバーもそれぞれ感想を口にする中、百田は「新しい挑戦でした。いつも音楽と真剣に向き合っているつもりなんですけど、今日はより真正面から向き合えたような気がします。有安さん、どうですか?」とあまりMCに参加していなかった有安に話題を振る。有安は「放送される日が楽しみだね。でも生で聴けたのはここにいるみんなだけだからすごいラッキーだと思います」と話した。そして観客を交えて大声を出すことに主催者側にあらかじめ許可してもらったことを説明したのち、「以上私たち、今会えるアイドル! 週末ヒロイン、ももいろクローバーZ!」とグループの挨拶をファンと共に叫び、大歓声を浴びながらステージをあとにした。
なお本日の公演の模様は2018年1月にMTVで放送予定。BSスカパー!では本放送を前に事前特別番組がオンエアされることが決定している。このほか11月に「ももいろクローバーZ Live History Part1 -2011~2014-」、12月に「ももいろクローバーZ Live History Part2 -2014~2017-」と題した関連番組のオンエアも予定されているので、気になる人はあわせてお見逃しなく。