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クライマックスシリーズは必要か?存在意義を熟考したい!

球場のグランド整備

今季もCSが終了し、セ・リーグは優勝チームの広島東洋カープが敗退。リーグ3位の横浜DeNAベイスターズが日本シリーズに進出した。リーグ戦での両チームのゲーム差は14・5。この大差がひっくり返ってしまうCSを「面白さ」の一言だけで片付けてよいのだろうか。

大雨の中で強行されたCSファーストステージ

10月15日に行われたリーグ戦の2位と3位が対戦するCS*1ファーストステージである「阪神」対「DeNA」。14時に試合開始予定だったが、午前中から降り続いていた雨のため、約1時間遅れとなった。

開始早々はグラウンドの状態が維持されていた。しかし、序盤に差し掛かり、水が浮き始める。5回が終了した時点には、さながら「水田」のような内野になっていた。ゴロの打球は水が飛び散り、急停止してしまう始末だ。

とても試合が続行できる状況ではなかった。それでも、水はけをよくするために何度も土と砂による応急措置が施され、試合は続けられた。結果は13対6でDeNAが勝利。誰しもが試合中止だと判断した悪天候の中、なぜ試合は強行されたのだろうか。

公式戦と異なる入場券

公式戦においてはご存じのように、「試合日」を選んで入場券を購入する形式である。しかし、CSでは「第1戦」「第2戦」などに分類し、日付ではなく試合ごとに入場券を販売しているのだ。

つまり、第2戦が中止になった場合、払い戻しにはならない。翌日の第2戦に入場券を利用できるのだ。「泥仕合」の様相を呈してしまったが、中止もしくはノーゲーム*2にしてしまうと、ファンに混乱が生ずる可能性も大いにあった。

公式戦での先入観から払い戻しになると思い込んだり、翌日の試合に第3戦の入場券を持って球場に足を運んだりの間違いも十分に考えられた。さらに、日曜日の第2戦が悪天順延となれば、仕事などの事情で泣く泣く観戦を諦める野球ファンも大勢いたはずだ。

これらの諸事情を勘案して、CSの試合開始前の中止を決裁する「セ・リーグ」の思惑が色濃く反映されたのではないだろうか。

5回終了時に阪神がリードしていたら?

「プレーボール*3」が宣された後は審判団が試合の中止について判断するが、試合が成立する5回まで続行できれば、コールドゲーム*4の選択肢もあった。

CSファーストステージは阪神の本拠地「甲子園」で行われていたので、阪神がリードしている展開であれば、その時点で即刻コールドゲームという「忖度(そんたく)*5」もあり得たかもしれない。しかし、試合はDeNAが終始リードする展開で、最後まで阪神が逆転することはなかった。

同じく雨の中の試合となったCSファイナルステージの第1戦「広島」対「DeNA」は5回終了時点でリードしていた広島が、コールドゲームで勝利している。審判団は甲子園で試合を敢行したことについて問われ、以下のように語っている。

それはそれ。今日は広島なので関係ないです。

(引用:株式会社デイリースポーツ

三者三様の思惑

セ・リーグによる強行開催と阪神の興行収益ばかりが大きく取り上げられがちだが、DeNAにも明確が動機は存在した。

CSファーストステージは予備日が1日しか設けられていない。ファーストステージで2勝先取したチームが進出するファイナルステージまでに日数を空けないためである。つまり、ファーストステージに登板した主力投手が、ファイナルステージで2試合登板することを制約しようとしているのである。それによりリーグ優勝のチームが優位に立つように配慮している。

阪神とDeNAのファーストステージ第1戦は阪神が勝利している。第2戦とその翌日も悪天候が見込まれていたため、もし2戦目が中止になった場合は阪神の負け越しがなくなり、横浜DeNAの敗退が決定してしまう。つまり、DeNAが「下克上*6」を果たすためには試合をせざるを得なかったのだ。

阪神の立場からも雨天中止によりファイナルステージに駒を進めることができれば万々歳だろう。ただ、目先にある1試合当たり3億円の売り上げが飛んでしまうのを見過ごすわけにもいかないだろう。

最終的な試合開催を判断するセ・リーグも「消化不良」のままCSを進めたくない。三者三様の思惑が重なったことが、試合強行を後押ししたことは否めない。

CSが存在する意味

そもそもCSの起端は集客の減少に危機感を持ったパ・リーグが導入したプレーオフ*7である。CSが行われる効果として消化試合*8が減り、興行収益も見込めることが主に挙げられている。ところが、野球ファンとしては143試合の長丁場に敗れた下位チームが、たかだか4勝しただけで勝ち抜けてしまうことに、どうも違和感を覚えてしまうのだ。

今年は日程の問題や1位と14・5ゲーム差のあった3位がセ・リーグを制覇したため、余計に議論に拍車を掛けたのだろう。しかし、資料をひもとけば、2位・3位チームが日本シリーズに進出したのは、過去に4度だけである。リーグ優勝のチームが82%の確率で順当に勝ち上がっているのである。

下位チームがリーグ戦での劣勢を引っ繰り返す驚きが試合に適当な緊張感を与えていると感じなくもない。

結果的に両リーグともに観客動員数は増加傾向にある。もちろんCSだけが要因ではない。ただ、観客が野球に興味を持ち、メディア*9への露出も増えている点では奏功しているといえるだろう。また、野球ファンの裾野を広げる効果も含めると一定の成果をあげている。

両リーグの優勝チームが戦う以前の形式に戻し、下位チームが勝者に成り得るCSを廃止すればどうなるだろうか。成果を挙げられる対案を示すことは難しいのではないだろうか。

そうなると現行のCSの骨子は残しつつ、日程の問題や10ゲーム以上の差がついたチームに対する「不利な条件」が必要不可欠のはずだ。見直していくことが現状における最善のはずだ。

まとめ

CSはまだまだ改善の余地がある。一方で、リーグ戦を終盤まで楽しめ、球場に足を運ぶ観客も増えていることから、それなりの結果を残している制度ともいえるのだ。「143試合の意義」や「泥沼の甲子園」などに端を発する今回のCSにまつわる物議には注目度の高さもうかがえる。

従来の制度では読売ジャイアンツの元監督の長嶋茂雄氏が「国民的行事」と表現した1994年の「10・8決戦」や、リーグ最終戦で近鉄バファローズが涙をのんだ1988年の「10・19決戦」などの「究極のドラマ」が生まれないかと思うと、一抹の寂しさもある。

しかし、新しい制度だからこその感動もあるはずだ。その期待を裏切らないように、現行のままでは不十分であることを日本野球機構には受け止めてほしい。野球ファンの声を傾聴し、選手たちのけがにも十二分に配意してもらいたい。そして、より良いプロ野球の未来に直結する野球制度が出来上がっていくと信じたい。

CSの消化試合の対策として「得失点差」を導入すれば解決できるのではないだろうか。また、各球場にいるかわいい売り子さんの頂点を決める「クライマックス・ビヤ・ガール」も検討してもらいたいものだ。

*1:〔和製語 climax+series〕プロ野球セパ両リーグで行う,日本シリーズ出場権を争う試合。ペナント戦の上位 3 球団が出場して,2 位・3 位球団が 3 回戦制で対戦,その勝者と 1 位球団(アドバンテージ 1 勝)が 6 回戦制で対戦する。ただし両リーグの優勝球団はペナント戦の勝率 1 位の球団とする。2007 年(平成 19)より実施。CS。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:〔和製語 no+game〕無効になった試合。野球では,五回が終了しないうちに雨や日没などで試合が続行できなくなった試合。無効試合。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【play ball】野球・バレーボール・テニスなどで試合を開始すること。また,審判が試合開始を宣する言葉。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【called game】野球で,試合が一定回以上進行したあとで,雨や日没,点差の開きなどにより途中で打ち切られた試合。勝敗はその時点での得点で決める。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:〔「忖」も「度」もはかる意〕他人の気持ちをおしはかること。推察。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:〔「下,上に剋(か)つ」の意〕下の者が上の者をしのぎ倒すこと。特に,室町中期から戦国時代にかけてあらわれた,伝統的権威・価値体系を否定し,力によって権力を奪い取るという社会風潮。国一揆や戦国大名の多くはこうした風潮の中から生まれた。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【play-off】引き分けや同点のときなどの,再試合・延長戦。同点者・同率者間の優勝決定戦。また,通常のリーグ戦終了後に行われる上位チームによる優勝決定戦。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:リーグ戦で,優勝が決まった後も,当初の日程を消化するために行われる試合。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【media】手段。方法。媒体。特に,新聞・テレビ・ラジオなどの情報媒体。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)