この稿は、中元日芽香と乃木坂46 その1~乃木坂46のシステム~ 中元日芽香と乃木坂46 その2 ~乃木坂46の選抜選考方法~ の続きですが、乃木坂46を1ミリも知らなかった中元すず香ファンの駄文ですので、どうか乃木坂46や中元日芽香さんファンの皆さまには生暖かく見守っていただければ幸いです。
「個別握手会参加券付CD」を何枚売り上げたかによって序列が決まってしまう乃木坂46のシステムについてとやかく言うつもりはない。
客観的なデータに基づき選抜を選ぶというある意味公平なシステムとも言えよう。
メンバーは仲間内で競うことを強いられ、そこにある基準は唯一売上至上主義のみ。
このような場で戦い続けた年頃の女性たちが、心をすり減らし、疲れ果て、辞める際はどこか達観したような表情で舞台を去っていくのは当然のことだろう。
一種の解放感が彼女たちを包むのかもしれない。
選抜発表の際の各メンバーのコメント聞くと、自分がいかに頑張るか、自分をいかに高めるのかという視点から発せられている言葉が多いことに気づく。メンバー間での競争を強いられている世界ではいたしかたないことだろう。
このブログの読者のかたはおわかりだろうが、中元すず香という人物を私が愛する理由の一つとして、中元すず香は「みんなで」頑張ることが好きな人間である、ということがある。
中元すず香は、さくら学院がデビューした舞台(TIF)の挨拶でいきなり「みんなで頑張っていきたい」と言うのである。当時若干中学1年生だ。
彼女のこのような真っ直ぐな思いは、一朝一夕に生まれるものではない。家庭環境や境遇が大きく影響しているはずであり、中元日芽香も同じ思いの持主だろう。
こちらは東日本大震災の際に、中元日芽香がつづったブログである。当時中元日芽香中学2年生。
M9.0の地震が起こってから5日
日々広がっていく被害の大きさに心が痛みます。地震が起こった日、妹が東京にいました。
物凄い人が道路を歩いて帰宅していたり、駅の改札に殺到したり、
コンビニの品物が床に散乱していたり、余震が起こるたびに悲鳴が聞こえてきたり、
いつもと違う東京がとっても怖かったそうです。電車が止まってしまって 連絡もつかず、迎えがくるのを一人で待っていたときに
となりにいた全然知らないおばあさんが妹にアメをくれたり、一生懸命話しかけてくれたようで
方言で話していたり、旅行バッグを持っていたようで
きっとおばあさんも不安だったと思います。
そんなときでもほかの人を思いやることのできるおばあさんに感謝しました。
電車が止まってしまった中で
何時間もかけて妹を迎えに来てくれたマネージャーさんも大変だったと思います。
https://ameblo.jp/spl-ash/entry-10832431267.html
私が感銘を受けるのは、中元日芽香が「全然知らないおばあさん」も「不安だったと思います」とし、「そんなときでもほかの人を思いやることのできるおばあさん」と、見知らぬおばあさんの心情も慮っている点。
中学2年生でここまで人の気持ちを思いやり、感謝の念を抱くことができ、それを文章に表現できることは並みの感性の持主ではない。
彼女は人の気持ちを思いやる心というか、大いなる母性というか慈愛というか、とにかく、まごころを持つ女性だと思います。
そんな彼女が、仲間を蹴落とさないと陽の当たらないグループでやっていくことは相当な精神面での負担を強いたことだろう。
また、中元日芽香の歌唱力、ダンススキルは相当なものである。
当ブログを読んでいただいているかたは、アクターズスクール広島の厳格な実力主義をよくご存知だと思うが、そのアクターズスクール広島内の公式ユニットであるSPL∞ASH(スプラッシュ)の初代メンバーに中元日芽香は選出されている。
天賦の才に加え、実力主義のアクターズスクール広島で鍛えに鍛え抜かれた彼女のスキルは、まっとうな指導を受けたことがないアイドルでは到底太刀打ちできるものではない。
乃木坂46の初期のレッスン風景を見ればわかるが、多くのメンバーのダンススキルはひどいものである。下手とかそういうレベルではなく、極端に言えば手を真っ直ぐ伸ばすことすらできないのだ。ステップなど踏みようがない。
歌については、生歌を聞いたことがないのでコメントは差し控える。
このような状況で、若干中学3年生の中元日芽香は悩んだだろう。
なぜこんな素人同然の女の子たちの下に甘んじなければならないのか。
彼女が知っていたのは、歌やダンスの実力で選ばれるアクターズスクール広島の世界。
まさか自分が飛び込んだプロの世界では、その2つの要素が全く無意味なものであるとは想像することすらできなかったであろう。
4thシングルで、それまで活動休止していた秋元真夏が突如選抜メンバー(2列目)に抜擢されたときの苦しい胸の内を吐露している。
中元「アンダーのモチベーション低下」
「なんというか、アンダーっていう言い方がいけなかったかもしれない。アンダーだった私の立場の個人的なあれなんですけど、そうですね、なんかあの、まだ選抜に入ったこともなくて、どうしたらいいのかなと思っているなかで、あの、真夏が・・・」(泣き出してしまう)
「でも、ほんと真夏が悪いわけじゃないし。いや、すごい思っていたので。なんか葛藤しましたね・・・」
「乃木坂って、どこ?」2015年1月4日放送回より
http://tvpot.daum.net/clip/ClipView.do?clipid=64950370
乃木坂46は、活動休止明けのメンバーや新規加入メンバーを突如抜擢するということを行う(4thシングルで活動休止明けの秋元真夏が2列目に抜擢、7thシングルで初選抜の堀未央奈がセンターに、10thシングルで活動休止明けの生田絵梨花が初のセンターに、12thシングルでAKB48兼業明けの生駒里奈がセンター返り咲き 等)。
この頃の中元日芽香は「まだ選抜に入ったこともなくて、どうしたらいいのかな」と悩み、「葛藤」を抱いていたという。
悩む必要はなく、結論から言うと「個別握手会参加券付CD」を多く売り上げるしか道はないのだが、彼女は悩んだのである。
メンバーの人気度で選ばれるシステムであるということは、年長組はおそらく薄々気づいており、割り切って個人ファン獲得に努めていただろうが、当時、中元日芽香は田舎から上京したての高校1年生。中元日芽香はそれに気づいておらず、悩んだのだろう。
乃木坂46のシステムは実に巧妙にカモフラージュされており、この番組でも秋元真夏が当時いかにダンスができずに歌が下手だったかを、これでもかとあぶりだす演出となっている。
「歌もダンスもできないのに選抜に選ばれて・・・」という感情をメンバーやファンに抱かせることによって、逆説的に歌やダンスも選抜方法に関係あると無意識下に擦り込ませる演出である。実際は全く関係ないのだが。
中元日芽香が葛藤を抱いたのも当然だろう。
彼女が乃木坂46のシステムに気づいたのはいつの頃からだろうか。
これまで見てきたように、売上至上主義のもと、メンバーの流動性が生まれるのは5thシングルの売上以降なので、それ以降であることは間違いないだろう。
中元日芽香の売上は思い出選抜に選ばれた7th以降急激に伸びているので、やはり6th以降そのシステムに気づき、個人ファン獲得に向けて努力を始めたのだろう。
彼女はいつからか、「仲間と一緒に頑張る」とか「他のメンバーを思いやる」というような気持ちに蓋をし、自分に嘘をつき、自分を応援してくれている人にCDをたくさん買わせるという現実に真っ向から向き合っていく。
心を鬼にし、ひたすら選抜への道を歩んだのだろう。
記録が残っている3rdシングル発売時期には、個別握手会が6部しか設定されないうえ、一つも完売させられない不人気メンバーだった中元日芽香。彼女の青春を賭けた戦いが始まった。
7thシングル(2013年11月27日発売、17歳)
10部中9部を完売させ、21位
8thシングル(2014年4月2日発売、17歳)
前回の売上げから部数が17部に増加。5部を完売させ、前回同様21位
9thシングル(2014年7月9日発売、18歳)
さらに部数が増加。22部中2部を完売させ、19位にランクアップ
10thシングル(2014年10月8日発売、18歳)
さらに部数が増加。25部中5部を完売。20位だったものの、ここで初めて選抜入りが見える位置につける。
11thシングル(2015年3月18日発売、18歳)
乃木坂のメンバーとなって3年半後の11thシングルで
22部中12部を完売させる数字をたたき出し、
CDを推定1万1千枚(約1千7百万円)売り上げ、
井上小百合、斉藤優里、堀未央奈といった選抜ボーダーラインにいるメンバーと激しい選抜争いを繰り広げるところまで到達する。
中元日芽香の数字は選抜入りしておかしくない数字だが、井上小百合、斉藤優里にその席を譲ることになった。
12thシングル(2015年7月22日、19歳)
さらに完売数を伸ばし、22部中18部完売という驚きの数字をたたき出す。
このときも選抜の最後の椅子を争ったのは井上小百合、斉藤優里、堀未央奈、中元日芽香の4人であり、結果として選ばれたのは井上小百合。
販売枚数にそれほど差がないのなら、これまで思い出選抜しか選ばれたことのない中元を選べばいいのにと思うのだが、19部しか設定されなかった井上小百合の後塵を拝する悲運に見舞われる。
売上枚数では明らかに中元のほうが上だったのにも関わらずだ。
「中元日芽香は正しく処遇されていない」と中元ファンは憤ることとなる。
では中元はどうすればいいのか。
ファンは中元の悲願である選抜入りを応援するためにはどうすればいいのか。
誰にも文句を言わせないCD売上を達成するしかないではないか。
このような手法は乃木坂46では頻繁に用いられている。
一つ前の記事に掲載した握手会売上部数と次シングルのフォーメーションの相関表を注意深くみると、衛藤美彩と秋元真夏が不利な扱いを受けていることが読み取れる。
握手会でCDを多く売り、本来選抜入りするはずが、アンダー落ち。2列目のはずが3列目、1列目のはずが2列目という状況が長く続くのだ。(秋元真夏は4thで突如2列目に抜擢されたため誤解されがちだが、以降は不利な扱いを受けている)
2人に共通しているのは、握手会が「神対応」であるということ。
握手会で頑張る人間で、運営が推さなくても自力でファンベースを拡大することができるメンバーには、あと一歩、もう少しという状況が意図的に設定され、さらにCDを売り上げることが強いられるのだ。
こんどは中元日芽香とそのファンが標的となる番だった。
13thシングル(2015年10月28日、19歳)
中元は、アンダーメンバーであるにも関わらず、23部全てを完売させるという快挙を達成する。
なかには中元を推すために、1人で何枚ものCDを購入したファンもいるだろう。
なのに、選抜入りしたのは26部中26部を完売させた堀未央奈と25部中25部を完売させた井上小百合。
あまりの見事な乃木坂46の販売作戦に舌を巻いてしまう。
13thシングルが解禁となり、握手会の日程が設定された時点で、中元ファンは23部中23部完売を当然目指す。
一方、これまで中元から選抜争い挑まれてきた堀未央奈には26部、井上小百合には25部と、部数が中元より多く設定された。こちらは完売さえすれば少なくとも中元より上にいくことは確実なのだ。
こうして堀ファン、井上ファン、中元ファンによる3つ巴の「本来の資力」以上のCD購入争いの火ぶたがきっておとされたわけだ。
結果は、堀、中元ともに初の全部完売の快挙。井上も前回に続き2度目の完売を達成し三者とも過去最高枚数を売り上げた。
ここに乃木坂46というグループがいかに巧妙に売上を伸ばすことを達成してきたかの一端が垣間見える。
上位メンバーは30部中30部を売り尽すことが常態化しており、彼女たちの争いをいかに煽っても売り上げはこれ以上伸びないのだ。
売上を伸ばすためには個別握手会での売上が少ないメンバーの底上げをする必要があり、運営サイドとしては、選抜ボーダー組の争いを過熱化させ、彼女たちにさらに売らせることによって売り上げを伸ばしていく。
中元日芽香が選抜争いに加わる直前の10thシングルではボーダー組4人の売り上げは
堀未央奈 33部中完売3部
井上小百合 31部中完売2部
中元日芽香 25部中完売5部
斉藤優里 26部中完売4部
推定売上枚数4万2千枚(6千6百万円)だったのが
13thシングルでは
堀未央奈 26部中完売26部
井上小百合 25部中完売25部
中元日芽香 23部中完売23部
斉藤優里 18部中完売13部
推定売上枚数5万8千枚(9千1百万円)となっている。
そこには、ずっとアンダーで頑張ってきた中元日芽香を選抜に選んであげようなどというような感傷は読み取れない。
そしてついに14thシングル(2016年3月23日、19歳)時、中元日芽香に30部という全部が設定され、初めて公平な条件で競争の舞台に立たせてもらうこととなる。
結果は30部中30部を完売。
それも全体で4番目の速度で達成するのである。
これまで争ってきた堀未央奈、井上小百合、斉藤優里より上なだけでなく、一度も選抜メンバーから外れたことのない高山一実、松村沙友理にも圧勝するのだ。
こうして中元日芽香は、もうこれ以上売ることが出来ない枚数を売ることによって「初めて」選抜入りさせてもらうことができた。
乃木坂46がデビューしてからなんと4年以上たっての出来事だ。
圧勝での選抜メンバー入りを果たした場で乃木坂46が中元に与えたもの。
中元日芽香の立ち位置は3列目の一番端だった。
出典:http://blog.goo.ne.jp/carbona/e/5f7cb85aa11bc0b18c56dd7d42d486ee
3列目というのはバックダンサー扱いに過ぎない。
自分と同じ速度で売り上げた桜井玲香や売り上げ速度の遅い高山一実、松村沙友理が2列目に配置され、中元日芽香には彼女たちの背中を見ながら3列目の末席で踊る舞台しか用意されなかった。
中元日芽香とそのファンはまたも熾烈な戦いの中に置かれる。
15thシングル(2016年7月27日、20歳)でも全体で3番目の速さで30部全て完売させる。
圧倒的な結果を残し、2列目に選ばれるかな? 仮に3列目だとしても、真ん中のほうだろう と思いきや、自分より下位の堀未央奈、松村沙友理、高山一実が前列に。
またもや中元日芽香が立たされた場所は3列目の一番端だった。
出典:http://blog.goo.ne.jp/carbona/e/5f7cb85aa11bc0b18c56dd7d42d486ee
4年以上もの年月をかけてようやく達成した選抜入り。
そこで待っていたものは祝福や歓喜、安寧ではなく、さらなる競争。
仲間内で争わせ、握手を繰り返し、自分を慕うファンにCDをたくさん買わせる。非情な世界である。
終わりのない競争。一種の無間地獄。
ここで中元日芽香はまた頑張るのか。
最速でCDを売り上げるほどの結果を残すまで戦い続けるのか?
16thシングル(2016年11月9日発売、20歳)で、全体で2番目の速度で30部を完売させたものの、中元日芽香は休養を選択。
数ヶ月の休養を経て復帰するものの、2017年8月6日に芸能活動から引退することを発表。この日の意味に思いを致すと何もコメントすることはできない。
これまで支えてくれたファンに感謝の意を述べつつ2017年11月4日、最後の握手を終えた。
(11月7日追記)この稿は投稿後、多くのコメントを頂きました。事実誤認とご指摘いただいた箇所や、推測を断定調に書いている箇所、中元日芽香さんの心情に踏み込んだ箇所などを、ご指摘に沿いながら修文を重ねております。いただいているコメントと記事内容が一致しないのはそのためです。中元日芽香さんを始めとする乃木坂46ファンの皆さまに不快な思いをさせてしまった部分も多いかと思います。お詫びして訂正いたします。