中元すず香の軌跡を追う以上、姉・中元日芽香についても追うことになる。
しかし、乃木坂46所属以降の中元日芽香を追うことは、私のような狭量な人間にはとても難しい作業であり、自分の心を守るためにこれまで避けてきた。
とはいえ、中元日芽香が乃木坂46からの卒業を決めたいま、中元日芽香と乃木坂46について考えざるを得ない。
中元日芽香の魅力を知った者にとって、たいへん残念なのが、中元日芽香は乃木坂46を卒業すると同時に、芸能活動からも身を引くという事実である。
中元日芽香は乃木坂でたいへんな苦労をしたという。
ファンの反応も
「芸能活動をやりきったね、輝いていたね。これからも頑張ってね」
というより
「たいへんだったよね、ゆっくり体を休めてね。ほんとにお疲れ様でした」
というような反応が多い。
なぜなのか。
それが知りたくて、乃木坂のことなど1ミリも知らなかった筆者が乃木坂の仕組みを調べた結果を報告します。
これは、中元日芽香も名前ぐらいは知ってるよ、という程度のBABYMETALファンの皆様向けの内容です。
乃木坂46を愛し、中元日芽香を愛したファンの皆様には、どうか華麗にスルーしていただければ幸いです。
乃木坂46というグループは厳格なグループ内序列をつくっている。
横一線などという言葉は存在しない。
結成当初からメンバーを明確に序列分けしている。
システムその1 選抜とアンダー
乃木坂46最大の格差システムは、選抜とアンダー。
馴染みのない人にはなんのことかわかりにくいが、平たく言えば一軍(選抜)と二軍(アンダー)のことだ。
乃木坂は30~40人のグループだが、これを意図的に2つに割り、一軍と二軍に分ける。
一軍と二軍の分けは固定でなく、流動的。
一軍二軍を分ける時期はシングルCDをリリースするにあわせて。
(シングルCDは概ね3~4ヶ月に1枚リリース)
一軍と二軍の分けで仕事内容がまったくかわってくる。
・シングルCD表題曲を歌うのは選抜のみ(アンダーはカップリング曲を歌う)
→PV撮影、歌番組出演は選抜のみ
アンダーのみで歌うカップリング曲が用意されているとはいえ、歌手グループとしての活動であるPV撮影や歌番組出演は選抜のみで行われる。
これはまあわかります。しかし乃木坂が厳しいのは
・タレントとしてのテレビ出演や雑誌企画などの芸能活動も、原則選抜のみ
ここが実に厳しい。選抜に選ばれなかったら事実上無役になるのだ。
当初は選抜に選ばれていた中田花奈がこんなことを語っていた。
ちょうどこの時期に、私、あの~、アンダーに落ちてしまって、初めて。
で、初めて2週間まるまるオフというのを経験したんですよ
「乃木坂って、どこ?」2015年1月4日放送回より
さすがにこれではあまりにもアンダーメンバーのモチベーションが下がるということなのか、結成して何年かたち、アンダーによるライブ公演が行われるようになったり、テレビ出演などでもアンダーから何人か呼ばれるようになるが、黎明期はアンダーメンバーはまったくの無役ということが多かったようだ。
選抜とアンダーの分けの影響は大きく、芸能人と言えるかどうかすらの分水嶺。
アンダーメンバーはとにかく選抜に選ばれることを最大の目標として活動していくことになる。
システムその2 フォーメーション(1列目2列目3列目)
乃木坂では全シングルのフォーメーションが、1列目、2列目、3列目と3列に分かれている。
今回の曲はこういう振り付けだから、このようなフォーメーションに・・・ではない。必ず3列に分けられている。
4thシングル「制服のマネキン」サビのきめシーン。3-5-8の綺麗なフォーメーションができている
5thシングル「君の名は希望」サビ部分。3-5-8の綺麗なフォーメーション
こちらの動画を見て欲しい。
これは5thシングル「君の名は希望」
前半部分は、メンバー全員に3人ずつ歌パートを割り当てられ、それぞれの顔のカット割りがあるが、サビ部分(1:23~)で3-5-8のフォーメーションが完成すると、そこからはフォーメーションを崩さず曲は進行する。
こうなるとカメラがどのように個々の表情を抜こうとしても、2列目までが限界であることがよくわかる。
3列目は事実上、バックダンサー扱いになってしまうのだ。
せっかく選抜に選ばれても、3列目では「顔一回映ったかな?」という程度の扱いになってしまう。
乃木坂はこのような状況を意図的につくりだしており、雑誌取材やテレビ出演でも、1列目、2列目の者が多く起用されることになる。
雑誌の表紙を飾る乃木坂46のメンバー
BLT2012年9月号
これは3rdシングル「走れ!Bicycle」活動時期。1列目と2列目のメンバーが起用されている。
同時期のCM出演も同じメンバー
このように、1列目2列目3列目という差は、単にフォーメーションというだけの問題ではなく、様々なメディア出演機会に誰を起用するのかという、格差として現れることに乃木坂46の特徴がある。
逆説的に捉えると、フォーメーションは、歌披露やダンスを見せるためのものではなく、序列をつくるために用いられるとすら言える。
システムその3 センター
乃木坂では全シングルで「センター」がつくられる。
こちらも単に立ち位置を表すのではなく、そのシングルCD期を誰が中心となって活動していくかという付随作用が伴う。
上の写真で言えば、メガシャキの商品を持って一歩前にでているのが、当時のセンター生駒里奈。
当時の歌のフォーメーションは前列は4人であり、立ち位置的にはそもそもセンターなど存在しない状況であるにも関わらず、あえてセンターをつくっているのだ。
位置的な意味での「センター」があり得ない状況でも、あえて「センター」をつくっていることから、乃木坂46にあって「センター」というのは、誰がトップなのかを示す概念であると考えられる。
ということで、乃木坂46では
大きなグループだから、一軍と二軍に分けないといけない
ステージに全員が立てるように3列に分けないといけない
代表者が必要なのでセンターを置く
ではなく
あえて様々なポジションを作り出し、意図的に格差をつくっていることに特徴がある。
なお、7福神というシステムもある。
乃木坂では結成当初から、7福神という制度をつくり、差別化していた。
AKB48の総選挙で上位七人が下位を大きく引き離して票を集め、神セブンと呼ばれるようになったことから、神セブンのような存在を乃木坂でもつくったと説明されていた。
一瞬、ふ~んと思いそうになったが、よく考えると、AKBの場合はまがりなりにも選挙結果を受け、そのようなネーミングが生まれたわけであり、結成当初から7枠をつくり、そこにあてはめていくというのは全く趣旨が異なる。
この7福神という制度は、結局1列目と2列目のメンバーと同義語となり、7福神だったのがいまでは12福神まで増えてしまうなどし、あまり意味のない分けとなったため、当ブログでは以降、福神制度については割愛する。
いずれにせよ乃木坂というグループは、意図的に序列をつくり、序列があがればあがるほどメディア出演の機会が増えたりして優遇されるシステムをつくっていることに最大の特徴がある。
このようなグループに入った純粋な少女たちが「テレビに出たい」「雑誌の表紙を飾ってみたい」と思い、「選抜に選ばれたい」「2列目に入りたい」「センターになりたい」といった思いを抱くのは当然のことだろう。
では、乃木坂ではどのように、選抜・アンダー、1列目・2列目などの序列が決められるのか。
こちらは7thシングルの選抜発表シーンの映像である。
このときは、中元日芽香が初めて選抜に選ばれた感動的な瞬間でもあるのだが、初めてこの動画を見られたかたの中にはショックを受けるかたもいるだろう。私自身、選抜発表の映像を初めて見たときは、あまりのショッキングな内容にドン引きしてしまった。
特徴は
〇発表シーンは全て(全シングル)テレビ番組で放映されること
発表による悲喜こもごもを全て記録し、白日の下にさらけ出す。
〇立ち位置も発表され、そこに立たされたまま進行していくこと
私が言い様もない感情に駆られるのはこの立たされたままの場面である。このワンカットだけでもなんと残酷であり、非人間的であろうか。
〇選抜から落とされたメンバーの表情もテレビに映される
取り残されたアンダーメンバーの表情は語るにも忍びない。感情を全て押し殺した表情とはこのようなものなのか。まだ泣いたり怒ったりしてくれたほうがいい。ずっとアンダーに取り残されたままの姿を何年にも渡り撮り続けられた少女たちの表情はこんな無表情になるものなのか。その姿はとてもここに載せることはできない。
〇選抜された理由が一切明かされないこと
最大の肝がここである。
どういう理由で選考されたかが、30分近い放映中、一切言及されないのである。
誰が、どのような基準で、なぜ、どのように選んだのか全くわからないのだ。
なぜ選考基準や理由を明かせないのか。
恣意的に選んでいるからなのか?
好き嫌いで選んでいるからか?
そうではない。
選考基準を明かせない明確な理由があるのだ。
次回は選考方法について考えていきたい。