鳥インフルの冬 間近 韓国 「野鳥から検出」 既に12件
2017年11月07日
今年も大陸から渡り鳥の飛来が本格化する季節がやってきた。韓国では10月、野鳥のふんから鳥インフルエンザウイルスが相次いで検出され、日本でも6日、松江市で前日に回収した野鳥の死骸について、簡易検査で陽性反応が確認された。確定されれば今シーズン初の検出となる。高病原性鳥インフルの発生阻止に向け、防疫対策の強化が急務となっている。
韓国では昨シーズン、高病原性鳥インフルが計383件、殺処分が3787万羽を超す過去最大規模の流行となった。
今季は家禽では高病原性鳥インフルが発生していないが、10月10日に野鳥のふんから低病原性ウイルスを検出。同31日に京畿道で2件、11月2日には忠清南道で、野鳥のふんから相次いで高病原性の可能性もあるH5型ウイルスが検出されたことを受け、警戒を強めている。
今季に入っての野鳥からのウイルス検出は12件。同国は従来、渡り鳥が増える10月から翌年5月までを高病原性鳥インフルの重要な防疫時期としている。今年は10月から、危機警報を最高段階の「深刻」に引き上げ、渡り鳥の監視強化や人の移動制限、該当地域の消毒などを進めている。
韓国では昨秋も、野鳥のふんから低病原性ウイルスが検出されていた。低病原性と安心して対策が遅れ、高病原性ウイルスのまん延につながったと反省する。韓国農林畜産食品部は「直近の3件は検査中で高病原性ウイルスの恐れがあり、油断できない状況」(鳥インフルエンザ防疫課)と話す。
来年2月に開催される冬季五輪・パラリンピック平昌大会を控えていることが背景にある。開催地に近い一部地域では、アヒル飼養を中止する農家も。政府が1羽510ウォン(51円)の補助金を提供し、11月から来年2月まで飼養しないよう呼び掛けている。
環境省は6日、松江市で回収した野生のコブハクチョウ1羽の死骸について、簡易検査で鳥インフルウイルスの陽性反応が出たと発表した。確定検査の結果は1週間程度で判明する予定。確定すれば今シーズン初の検出だ。
昨シーズン、国内では9道県の12農場で高病原性鳥インフルが発生。殺処分された家禽は166・7万羽となった。野鳥では昨年、野鳥や死骸、ふんなどから過去最多となる218例の感染が確認された。家禽に感染したのは全て野鳥と同じH5N6亜型ウイルスで、韓国など大陸で猛威を振るったタイプと同型だった。
昨年11月に初めて高病原性鳥インフルが発生した青森県。厳寒期とあって、着用する防護服が薄手のため作業担当者は3重に着用して寒さをしのいだという。
県は今年度、防護服の数を1・5倍に増やした他、防寒具も用意した。資材の配備場所も県内1カ所だったが、家禽の多い地域にも配備。県の防疫対応マニュアルも見直し、発生時の連絡や指揮体制を強化。7月に生産者などを対象に開いた研修では、畜舎周りのチェックなどウイルスの侵入防止策の徹底を呼び掛けた。
農水省は9月、都道府県に対し、発生予防策として特に人や車両、野生動物を介してウイルスが家禽農場や畜舎に侵入しないようにするなどの対策を通知。併せてウイルスの拡大防止へ発生の初動対応、人員や防疫資材の確保の強化も呼び掛けた。
専門家らの調査によると、渡り鳥の飛来ルートは複数あり、全国で感染リスクがあるという。「今秋以降も、引き続き厳重な警戒が必要だ」(同省)と強調する。
早くも警報「深刻」 冬季五輪で防疫を徹底
韓国では昨シーズン、高病原性鳥インフルが計383件、殺処分が3787万羽を超す過去最大規模の流行となった。
今季は家禽では高病原性鳥インフルが発生していないが、10月10日に野鳥のふんから低病原性ウイルスを検出。同31日に京畿道で2件、11月2日には忠清南道で、野鳥のふんから相次いで高病原性の可能性もあるH5型ウイルスが検出されたことを受け、警戒を強めている。
今季に入っての野鳥からのウイルス検出は12件。同国は従来、渡り鳥が増える10月から翌年5月までを高病原性鳥インフルの重要な防疫時期としている。今年は10月から、危機警報を最高段階の「深刻」に引き上げ、渡り鳥の監視強化や人の移動制限、該当地域の消毒などを進めている。
韓国では昨秋も、野鳥のふんから低病原性ウイルスが検出されていた。低病原性と安心して対策が遅れ、高病原性ウイルスのまん延につながったと反省する。韓国農林畜産食品部は「直近の3件は検査中で高病原性ウイルスの恐れがあり、油断できない状況」(鳥インフルエンザ防疫課)と話す。
来年2月に開催される冬季五輪・パラリンピック平昌大会を控えていることが背景にある。開催地に近い一部地域では、アヒル飼養を中止する農家も。政府が1羽510ウォン(51円)の補助金を提供し、11月から来年2月まで飼養しないよう呼び掛けている。
厳寒の作業に備え 日本 今季初「陽性」
環境省は6日、松江市で回収した野生のコブハクチョウ1羽の死骸について、簡易検査で鳥インフルウイルスの陽性反応が出たと発表した。確定検査の結果は1週間程度で判明する予定。確定すれば今シーズン初の検出だ。
昨シーズン、国内では9道県の12農場で高病原性鳥インフルが発生。殺処分された家禽は166・7万羽となった。野鳥では昨年、野鳥や死骸、ふんなどから過去最多となる218例の感染が確認された。家禽に感染したのは全て野鳥と同じH5N6亜型ウイルスで、韓国など大陸で猛威を振るったタイプと同型だった。
昨年11月に初めて高病原性鳥インフルが発生した青森県。厳寒期とあって、着用する防護服が薄手のため作業担当者は3重に着用して寒さをしのいだという。
県は今年度、防護服の数を1・5倍に増やした他、防寒具も用意した。資材の配備場所も県内1カ所だったが、家禽の多い地域にも配備。県の防疫対応マニュアルも見直し、発生時の連絡や指揮体制を強化。7月に生産者などを対象に開いた研修では、畜舎周りのチェックなどウイルスの侵入防止策の徹底を呼び掛けた。
農水省は9月、都道府県に対し、発生予防策として特に人や車両、野生動物を介してウイルスが家禽農場や畜舎に侵入しないようにするなどの対策を通知。併せてウイルスの拡大防止へ発生の初動対応、人員や防疫資材の確保の強化も呼び掛けた。
専門家らの調査によると、渡り鳥の飛来ルートは複数あり、全国で感染リスクがあるという。「今秋以降も、引き続き厳重な警戒が必要だ」(同省)と強調する。
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北信州「ぼたんこしょう 糀煮」 長野県中野市
長野県の「信州の伝統野菜」に選定されているトウガラシ「ぼたんこしょう」の加工品。中野市永江地区の農家有志でつくる斑尾ぼたんこしょう保存会が製造する。
肉厚な実で、辛さの中に甘味があるのが特徴のぼたんこしょう。この実を2センチ角に切り、県産の米こうじ、みりん、しょうゆなどを合わせて1日保温して作る。発酵の進んだこうじの甘さ、まろやかさと、ぼたんこしょうの辛味がなじんで、茶請けや酒のつまみ、ご飯のおかずに最適の味という。かつては農家がこたつで作っていた昔ながらの味を商品化した。
1瓶(130グラム)540円。地元の道の駅などで販売する。問い合わせは同保存会代表の大内ふじ子さん、電話とファクスは0269(38)3327。
2017年11月02日
日米首脳会談 FTA 依然予断許さず
安倍晋三首相と来日中のトランプ米国大統領との6日の首脳会談で、日米間の通商問題は当面、これまでの経済対話の枠組みで協議を続ける方向で収まった。これで一安心とはいかず、逆に対日圧力が強まる恐れがある。日米同盟を重視するあまり、政府が理不尽な圧力に屈することがあってはならない。
ゴルフ外交、4度にわたる昼・夕食会、実娘イバンカ大統領補佐官へのもてなしなど、安倍首相直々の手厚い待遇が目立ったトランプ大統領の来日だった。そのかいあってか、同氏は安倍首相との絆に感謝し、拉致被害者と面会するなど日本重視の姿勢で応えた。通商問題でも日米自由貿易協定(FTA)への直接的な言及がなかったとされる。
最大の懸案である北朝鮮の核・ミサイル開発問題では、日米の揺るぎない同盟関係を演出しつつ、日米が主導して最大限の圧力をかける方針で一致した。北朝鮮と近い中国への働き掛けを今後も続けるとした。こうした日米の結束は評価できる半面、「戦略的忍耐の時代は終わった」とし、武力攻撃の可能性を排除しないトランプ氏に無条件で寄り添う安倍首相の姿勢には危うさも感じられる。
経済・貿易問題では、中国を念頭に、インド太平洋戦略の推進で合意した。麻生太郎副総理とペンス副大統領による経済対話の枠組みを継続し、投資や貿易の拡大策を詰める。日本側のシナリオが通ったかに見えるが、日米貿易不均衡に強い不満を表明したトランプ氏の発言は国内に波紋を広げそうだ。
同氏は首脳会談に先立つ日米経済人との会合で「日本との間に年700億ドルもの貿易赤字を抱えている。対日貿易は公正ではなく、開かれてもいない」と攻撃した。「貿易協定で日米は公正な合意が速やかに達成できる。私は楽観的だ」とも語った。日米FTAへの階段を一歩上ったとみることもでき、今回の首脳会談で回避できたと判断するのは皮相的である。
米国の2016年の対日貿易赤字額は689億ドル(約7・7兆円)に上る。飛び抜けて大きい中国に次いで日本は2番目で、対米輸出の大半は自動車と関連部品が占める。嫌がる韓国を米韓FTAの見直し交渉に引きずり込んだように、トランプ政権が日米FTAの牙をいつむくか分からない。経済対話で重視すべきは、貿易不均衡の直接の原因である自動車をはじめとする工業分野の市場開放だろう。尻拭い的に農業市場を差し出すことは許されない。巨額の貿易赤字の解消にはならない。
今回は焦点にならなかったが、米国産冷凍牛肉の緊急輸入制限措置(セーフガード)問題も、今後の経済対話に委ねられる。経済交渉は表でどのように語られたかより、何が語られなかったかも重要だ。政府は米国の独善的な日米FTA交渉入り要求を毅然と拒否しなければならない。
2017年11月07日
もやし ようやく値上げの動き 報道、ネット 窮状伝える 消費者が「支持」
もやしの価格低迷と原料高騰で生産者が採算悪化にあえぐ中、一部のスーパーで値上げの動きが出始めた。報道やインターネットを通じて消費者の理解が広がったことを背景に、卸値と店頭価格とも値上げした形だ。ただ、目玉商材であるもやしは、その価格が「消費者が店全体の値頃感を判断する指標にもなる」(流通関係者)一面もある。過度な安売りは後を絶たず、生産、流通、消費の誰もが納得する適正価格が求められている。
大手スーパーなど次々
もやし業界は、原料とする輸入緑豆の価格が高騰する一方、“安売り商材”として販売価格が低迷して採算悪化が続いている。3月、「工業組合もやし生産者協会」が窮状を訴える文書を発表すると、各社が一斉に報道。実態を知った消費者から「値上げ支持」の声が上がり、一部の生産者は小売り側と卸値の値段交渉を進めてきた。
埼玉県を拠点とするスーパー「ヤオコー」(川越市)は9月から、1袋(200グラム)を19円から27円に値上げした。首都圏などで数百店舗を運営する大手スーパーも9月から30%値上げした。両社とも、生産者の実態を踏まえて卸値と店頭価格を上げた。
この大手スーパーは、店頭掲示で原料豆の価格が上がっている状況を説明した上で、値上げに踏み切った。現時点で売れ行きには影響はなく、消費者からも特に目立った反応はないという。「元々の価格が安かったことから、値上げしてもそれほど大きな影響はなかった」(仕入れ担当者)としている。
値上げをしたあるスーパーは「取引先の生産者との信頼関係も大事。原料の高騰や生産費が上がれば、店頭価格に転嫁していかなければならない」と理解を示す。
同協会の林正二理事長は値上げの動きについて「窮状を訴えた文書に対するネット上の消費者の反響が追い風になったのではないか」とみる。
ただ、スーパー側は他店との競争もあり、簡単に売価を上げられない事情がある。
東日本で数十店舗を展開する別のスーパーのバイヤーによると、もやしの価格は競合店の動向を見ながら地域ごとに決めている。「もやしは青果の中でも販売量1、2位を争う品目で、客にとって価格の指標になりやすい。簡単には値上げに踏み切れない」と明かす。
9月には愛知県内のスーパー2社が、もやしやキャベツ、ダイコン、ホウレンソウなどの野菜を1円で継続的に安売りした不当廉売の恐れがあるとして、独占禁止法に基づく行政指導を受けた。不当な安売りで集客した2社は販売量を大幅に伸ばした一方、近隣の他店は客数と売り上げを大きく減少したとの内容だ。
全市場価格に影響する恐れ
もやしに限らず青果物・生鮮食品全般で集客のために卸値を下回る価格での販売が続けば、消費者にとってはその価格が定着し、市場価格全体に影響が及ぶ恐れがある。
納得する価格模索を
青果物の販売事情に詳しい流通ウォッチャーの代田実氏は「もやしは価格競争にさらされやすい商材」と指摘する。消費者の購入頻度が高く、多くは1袋200グラムの同規格で販売され、他店と比較されやすいという。また「2割引き」の特売をしても1袋30円のもやしは6円引きで済み、経営への影響を抑えつつ安売りアピールができることも要因だという。
代田氏は、生産者が経営を続けられる青果物価格の在り方について「生産者が取引相手に適正な価格の根拠を示すことが重要」と指摘する。それにより「生産者、小売業者、消費者の誰もが納得する価格を模索していくべきだ」と話す。(猪塚麻紀子)
2017年11月01日
加工専用果樹 300万トン市場を狙え
果樹の加工専用園に乗り出す産地が出てきた。加工向けは価格が安いなどの課題はあるが、生鮮用に比べて外観品質や大きさなど規格の幅が異なり、省力栽培や選果の簡素化が見込める。加工向け果実需要は約302万トン(2014年)で、9割近くを輸入品が占める。生産者の高齢化や労力不足を考えれば、省力化が見込める加工専用園は検討の余地がある。
農水省の推計によると、果実の国内需要は生鮮用・加工用を合わせて14年で約751万トン。6割の441万トンを輸入品が占める。数字だけを見ると、輸入品に押されている印象があるが、内訳を見ると事情が違う。
輸入品は4割の178万トンが生鮮用、6割の264万トンが果汁など加工品向けだ。生鮮用はおよそ半分をバナナ(95万トン)が占める。これに対し国産果実は、生鮮用が271万トンと国内生産の9割近くを占め、加工向けは39万トンと少ない。輸入品は国産で足りない果実や、加工向けをカバーしている側面もある。
加工向けの国産果実が少ない背景には、価格の問題がある。農水省の調べでは、温州ミカンは生食用が1キロ167円に対し、果汁用が同10円、缶詰用が同25円と価格差が5~17倍ある。リンゴも生食用が同174円に対し、果汁用は同35円。他の品目でも数倍から数十倍の価格差がある。加工向けは、規格外品で販売価格に魅力がないためといえる。
産地の実情を考えたい。多くの産地は、高齢化や労力不足の課題を抱えている。果樹は水田や畑作に向かない斜面を切り開いた産地が多い。急斜面の条件不利地が多く、高齢者に頼る労働は限界に近づいている。
園地整備なども進んでいるが、労働力の現状と将来を直視した場合、加工専用園も産地の選択肢の一つになり得る。価格では生鮮用に大きく負けているが、他のメリットを考慮し、総合判断したい。
ブドウであれば、房形の調整作業などが簡略化できる。袋掛けが必要な品目でも、樹体や樹列をまとめて被覆することなども考えられる。出荷規格も生鮮用よりは細かくない。通いコンテナなどでまとめて出荷できるなど、簡略化できる部分がある。省力化・軽労化ができれば、高齢者や労働力不足でも生産が続けられる園地があるだろう。加工用は、用途別に求められる品質が異なるため工夫は必要だが、産地を維持するという点では有効な手段と考えられる。
生鮮果実の1人当たりの年間購入量は16年で25・5キロだった。この20年で5キロほど減った。一方で、都市部では生ジュースを提供する専門店が登場するなど、果実の消費形態は変わりつつある。
加工専用の産地は限られているため、国内にライバルが少ないという利点もある。経営全体を見れば、300万トン市場は大きな魅力だ。
2017年11月03日
[未来この手で ノーベルの国から 6] 転職が当たり前 一生の職業 決断重く
150ヘクタールの牧草地と70頭の牛舎、300ヘクタールの森林。酪農が盛んなスウェーデン・エステルスンド市近郊で酪農と林業、農家民宿を営むオーカン・ニルソンさん(64)には後継者がいない。2人の子どもは、農業以外の仕事に就いた。「少し悲しいね。多くの投資をして農場を大きくしてきたのに」。ニルソンさんが寂しそうな表情を見せた。
多様な生き方世襲「今は昔」
高校卒業からすぐに大学に進学し、就職する――。こうしたレールがないスウェーデン。経済協力開発機構(OECD)によると、同国の大学入学平均年齢は24歳(日本は18歳)。若者の転職が当たり前で、労働市場の流動性が高い。
農業庁によると農家6万人の平均年齢は55歳。国民全体の平均年齢41歳に比べ高い。さらに、かつて農家は第1子が継ぐのが当然だったが、ここ数十年で「平等」の考え方が広まり、世襲は当たり前ではなくなった。
その分、農家出身でない若者への期待も大きい。そうした若者の大半は従業員としての農業参入で、「親戚・家族が農家でない若者が農業経営者として新規参入するケースはほとんどない」(同庁貿易マーケティング局)。農地価格の高止まりなどがハードルだという。国は40歳以下の新規就農者への直接補助や、就農時のスタートアップなど支援策を講じるが、後継者の確保は日本同様に深刻な課題だ。
後継者不在で離農した農家が手放す農地は、近隣の大規模経営者が引き受けるという構造改革も進む。日本では高く評価されるが、スウェーデンでは必ずしもそうではない。農家人口の維持につながらず、地域コミュニティーの維持が難しくなるためだ。同局は「規模拡大を促すことより、持続可能な農業、農村が重要だ」とする。
ニルソンさんは、将来、兄の子どもで現在従業員のダニエル・エイベルゴーダさん(33)に経営を託したいと考える。幼い頃から牛が大好きで、自然に従業員として働き始めた。だが、ニルソンさんの期待とは裏腹に、ダニエルさんは「ここで農業を一生続けるべきか別の職業を見つけるべきか」と悩んでいる。
それでもダニエルさんは、農業に閉塞感を感じているわけではない。「農業は利益を追求するだけではない価値がある。ライフスタイルからいっても、農業は若者に魅力ある職業だよ」と語る。
農業ブームも高い参入の壁
空前のオーガニックと地産地消ブームが到来しているスウェーデン。スーパーでは、オーガニックマークの国産野菜や乳製品がずらりと並ぶ。レストラン、カフェでは国産で有機の野菜、肉を使っていることが大きな売りだ。同庁によると、オーガニック食品は2013年で全食品の総売り上げの4・6%を占め、年々割合が上がる。ブームと並行し、食材の向こう側にある農業にも関心が高まっている。
ヨンショーピング市で150頭の乳牛を飼育する4代目の酪農家、フィリップ・シェンネラーさん(29)は農村地域省や農協の会議で、積極的に発言する若手農家のリーダーだ。他産業のように若者が参入しやすい政策の必要性を提起する。
「若者は農業に関わりたいと求めている。新規参入の壁を低くすること。きっと難しくない」。意見を言い合うことで未来が変わっていく。そう考える。
キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。
2017年11月07日
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今季に入っての野鳥からのウイルス検出は12件。同国は従来、渡り鳥が増える10月から翌年5月までを高病原性鳥インフルの重要な防疫時期としている。今年は10月から、危機警報を最高段階の「深刻」に引き上げ、渡り鳥の監視強化や人の移動制限、該当地域の消毒などを進めている。
韓国では昨秋も、野鳥のふんから低病原性ウイルスが検出されていた。低病原性と安心して対策が遅れ、高病原性ウイルスのまん延につながったと反省する。韓国農林畜産食品部は「直近の3件は検査中で高病原性ウイルスの恐れがあり、油断できない状況」(鳥インフルエンザ防疫課)と話す。
来年2月に開催される冬季五輪・パラリンピック平昌大会を控えていることが背景にある。開催地に近い一部地域では、アヒル飼養を中止する農家も。政府が1羽510ウォン(51円)の補助金を提供し、11月から来年2月まで飼養しないよう呼び掛けている。
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昨シーズン、国内では9道県の12農場で高病原性鳥インフルが発生。殺処分された家禽は166・7万羽となった。野鳥では昨年、野鳥や死骸、ふんなどから過去最多となる218例の感染が確認された。家禽に感染したのは全て野鳥と同じH5N6亜型ウイルスで、韓国など大陸で猛威を振るったタイプと同型だった。
昨年11月に初めて高病原性鳥インフルが発生した青森県。厳寒期とあって、着用する防護服が薄手のため作業担当者は3重に着用して寒さをしのいだという。
県は今年度、防護服の数を1・5倍に増やした他、防寒具も用意した。資材の配備場所も県内1カ所だったが、家禽の多い地域にも配備。県の防疫対応マニュアルも見直し、発生時の連絡や指揮体制を強化。7月に生産者などを対象に開いた研修では、畜舎周りのチェックなどウイルスの侵入防止策の徹底を呼び掛けた。
農水省は9月、都道府県に対し、発生予防策として特に人や車両、野生動物を介してウイルスが家禽農場や畜舎に侵入しないようにするなどの対策を通知。併せてウイルスの拡大防止へ発生の初動対応、人員や防疫資材の確保の強化も呼び掛けた。
専門家らの調査によると、渡り鳥の飛来ルートは複数あり、全国で感染リスクがあるという。「今秋以降も、引き続き厳重な警戒が必要だ」(同省)と強調する。
2017年11月07日
梨の葉“紅茶”開発 機能性成分 豊富に 鳥取大学大学院など
鳥取大学大学院連合農学研究科と県内企業が協力し、梨の葉を使った“紅茶”を開発した。梨葉には茶葉の3倍の抗酸化力が含まれている機能性も発見。耕作放棄園を活用し、新たな特産として商品化を目指す。
同県は梨「二十世紀」が特産だが、生産者の高齢化などで面積は減少傾向にある。植物病理学専門の児玉基一朗教授は、梨を振興するため、着眼点を変えて葉に着目。2010年から商品化に向けた研究を始めた。
これまで梨葉に着目した研究はなく、葉の成分は特定されていなかった。児玉教授らが調べると、ポリフェノールの一種で抗酸化や細胞活性化の作用が期待される3・5―ジカフェオイルキナ酸や美白効果で知られるアルブチン、がんや生活習慣病の予防効果が期待できるクロロゲン酸を多く含むことが分かった。
桃やビワ、柿、ブルーベリーなどの葉も調べたが、梨が突出して高かった。抗酸化力(ORAC)は茶葉の3倍の機能性を持っていた。
ただ、ポリフェノールが多いため自然乾燥では酸化重合し葉が黒く変色し、機能性成分も失われる。同大学では成分を保てる処理方法も開発し、粉末やエキスにして使えるようにした。
梨の葉自体には風味がほとんどないため、県内で茶の製造を手掛ける企業と協力。梨葉3割に梨の実やカモミール、ルイボスなどをブレンドし、梨の香りをほのかに感じる飲みやすい紅茶風に仕上げた。
児玉教授は「葉の素晴らしい機能性の素材を知ってもらい、鳥取県の活性化につなげたい」と力を込める。原料の安定確保が課題で、葉を取りやすい木の仕立て方なども研究していく。今後は、サプリメントや化粧品などへの活用も検討する。
2017年11月06日
濃厚飼料に大麦OK 裏作、自給向上へ 早刈りで加水不要 群馬県畜試が開発
群馬県畜産試験場は、大麦が国産の濃厚飼料の原料として使えることを明らかにした。麦は水稲裏作で栽培できるため、表作の飼料用米や子実トウモロコシと組み合わせれば、二毛作で濃厚飼料が自給できる。稲ソフトグレインサイレージ(SGS)に比べ生産費が低く抑えられ、手間がかからない。全国でも大麦子実の濃厚飼料化の研究は珍しい。同試験場は、タンパク含量が高く輸入の配合飼料に代わる濃厚飼料として期待する。
2017年10月29日
高速高精度汎用播種機を披露 増収・省力 同時に 最大時速10キロ 正確な点播作業 農研機構など
農研機構とアグリテクノ矢崎は、米、麦、大豆、ソバなど穀物種子を最大時速10キロで播種(はしゅ)できる「高速高精度汎用(はんよう)播種機」を開発した。60馬力以上のトラクターで使え、市販の播種機に比べ最大2倍の速さで、1時間当たり50~60アール分の播種ができる。2018年以降の発売を目指す。26日に茨城県桜川市で現地検討会を開き、時速9キロで小麦の播種作業を披露した。
汎用播種機は、条間30センチの6条まき。溝切り、播種、施肥、土寄せ、鎮圧が同時に作業できる。播種部では「分離プレート」という、一定間隔に切れ込みが入った円盤が回転していて、ホッパーから落ちてくる種子を、切れ込みで定量受け取り、播種していく。
切れ込みの形や大きさが違うプレートを交換することで、多様な穀物や粒数に対応する。株間は14~23・5センチの6段階で可変。種子を正確に1カ所に置く点播ができ、水稲の乾田直播栽培では、倒伏軽減効果も確認した。
検討会では、水稲を収穫した圃場(ほじょう)で小麦を不耕起播種した。参加者らは、鎮圧後の土壌を掘り起こすなどして播種を確認。高速作業に加え、精度の高い点播に驚いていた。小麦、大豆、ソバで開発に協力した同市の菱沼英昌さん(78)は「1台で、2台分の効率がある。速度を出しても苗立ちが良かった」と評価する。
同機構によると、市販の播種機の作業は、最大時速5キロだが、汎用播種機は、水稲で時速10キロが上限。小麦は同9キロ、大豆は同7キロが目安という。乾田直播では、時速8・6キロで苗立ち率7割だった。点播で真空播種やグレーンドリルなど他の播種方法に比べ、倒伏が少なかった。「増収と省力化が一度で実現できる」と、作付面積20ヘクタール以上の大規模農家での利用を考える。
価格は400万円以下での販売を目指し、8条まきの機種も開発中という。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=ulcBqwL7TGE
2017年10月27日
血圧上昇抑制 機能性表示で ナス消費拡大へ 高知県、信州大など研究
血圧の上昇を抑える効果が見込める「コリンエステル」を多く含むナスで、機能性表示の認定を目指した研究が本格的に動きだした。信州大学や生産量日本一を誇る高知県の農業技術センターなどが「ナス高機能化コンソーシアム」を結成し、共同研究する。機能性表示に向けたデータ収集やメカニズムの解明、好適品種の選定、実証栽培に取り組み、機能性表示の認定で、ナスの消費拡大につなげていく。
2017年10月26日
「創エネ」組織を発足 農家の収益向上に 京大とNTTデータ経営研
京都大学農学研究科とNTTデータ経営研究所は25日、農産物とエネルギーの両方を作る「エネルギー創造・利用型農業」の実用化・普及に向けた組織を立ち上げたと発表した。名称は「グリーンエネルギーファーム(GEF)産学共創パートナーシップ」といい、ヤンマーやパナソニック、和郷園、京都府など同日の時点で23団体が参加。京都府木津川市にある同大学付属農場を拠点とし、研究開発や制度設計、政策提言などをしていく。
2017年10月26日
「みちびき」電波受信 吹雪の中 感度良好 トラクター自動操舵実演 誤差1.5センチで走行
今月、4号機の打ち上げに成功した準天頂衛星「みちびき」。内閣府は23日、2018年度から日本版衛星利用測位システム(GPS)として運用を始めるため、「みちびき」の電波でトラクターの自動操舵システムを動かす実演会を、北海道上富良野町で開いた。既存の高精度衛星測位システム(RTK―GNSS)並みの誤差数センチで走行してみせた。RTK―GNSSと異なり、位置情報に必要な地上の基地局が不要で、山間地でも使えるとアピールした。
4基体制になった「みちびき」は、常に1基が日本のほぼ真上にあるため、正確な位置情報を受信できる。農機メーカーなど50人が参加した実演会では、ヤンマー、クボタ、井関農機が、トラクターを自動走行させ、精度や作業効率を紹介した。
実演会では雪が吹き荒れる中でも、電波の受信感度は良好。誤差は実測値で1・5センチと、実演したRTK―GNSSと精度が同じことを確認した。
北海道を中心に導入が進むトラクター向けGPS自動操舵システム。精度の高い位置情報が必要なため、地上の基地局で衛星からの位置情報を補正するRTK―GNSSが利用されている。しかし、基地局の設置や、山間部、防風林の近くで精度が落ちるなどの課題がある。
道技術普及課によると、GPS自動操舵システムの出荷台数は16年度までに3030台で9割以上が道内向け。ロボット農機を研究する北海道大学の野口伸教授は「みちびきを使えば本州の山間部でも高精度な位置情報が得られる」と説明。受信装置の低コスト化も進め、「既存のGPSより安くなれば、全国普及につながる」と期待する。
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https://youtu.be/XFN0UM1TrHU
2017年10月24日
ピラミッドアジサイ 5、6月に剪定 高単価の秋出荷 山梨県
山梨県総合農業技術センターは、ピラミッドアジサイ(ノリウツギ)を5、6月に剪定(せんてい)し、9、10月に開花させる技術を開発した。慣行栽培では夏に開花するが、需要が高まり、高単価が見込める秋の出荷ができる。剪定位置で花穂の大きさも調整でき、出荷先に応じて生産が可能という。
花穂が三角すい状のピラミッドアジサイは、富士山に似ていることから同県は産地化に力を入れる。慣行の露地栽培では7月下旬から8月下旬に開花するが、結婚式のブーケなどで需要が高まる秋の出荷が求められている。
一般的なアジサイ品種は、昨年の枝に花が付くが、ピラミッドアジサイは新梢(しんしょう)に花を付ける。同センターはこの性質を利用。慣行栽培では4月中旬に古い枝を剪定するが、剪定せずに新梢の発生を抑える。
試験では剪定を慣行の4月16日と、秋開花に向けて5月16日、6月16日、7月16日に実施。4月剪定は8月2日に開花したが、5月剪定は9月7日、6月剪定は9月25日に開花した。7月剪定は開花しなかった。
また剪定位置を10センチ、20センチと高くするほど花穂が小さくなった。大きい花はドライフラワー用、小さい花は花束用など、出荷先に対応して大きさの調整も可能とみる。
試験は標高750メートルの甲斐市にある同センターで実施。今後は標高が異なる場所での実証試験を進める。
2017年10月18日
大豆ゲノム編集 初の成功 大きさ遺伝子を改変 北大など
北海道大学などの研究グループは、国内で初めて大豆のゲノム編集による性質の改変に成功した。ゲノム編集した大豆の子実から植物体が大きくなる系統を育成。国内で成功例がなかった大豆のゲノム編集だが、成果を基に研究が加速する可能性がある。横浜市立大学、農研機構との共同研究。大豆のゲノム編集は世界でも数例しか成功例がないという。
ゲノム編集は、他の遺伝子を切る「はさみ」のような遺伝子を組み込み、他の遺伝子を改変する技術。実験では大豆「カリユタカ」を子実の段階でゲノム編集し、植物体が大きくなるようにした。ゲノム編集した植物体は部位によってばらつきがあったが、収穫した子実を育てると、性質が安定した個体が数十あった。
今回は試験的に植物の大きさに関わる遺伝子を改変したが、同大大学院の山田哲也講師は「大豆のアレルギー物質を減らすような改良もできそうだ」と説明する。
特定の遺伝子を狙い、既存品種の欠点を直すようなピンポイントの改良が短期間でできるゲノム編集。「はさみ」遺伝子は交配で取り除くことができ、遺伝子組み換え(GM)作物の定義となる外来遺伝子がなくなるため、国内ではGM作物として扱うかどうかは決まっていない。
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2017年10月16日
高糖度トマト AIにお任せ 葉の状態監視、かん水調節 静岡大「誰でも簡単」技術開発
静岡大学は、人工知能(AI)を使い誰でも高糖度トマト(フルーツトマト)を安定生産できる養液栽培技術を開発した。AIが葉のしおれや環境データを基にトマトのストレス度合いを瞬時に推測し、かん水量を調節する。熟練者の経験と勘が必要だった高糖度化までの水管理を自動化することで、糖度8以上の果実が安定して生産できる見込みだ。
高糖度トマトは、かん水を抑えて糖度を高める。生育と糖度を両立させる水管理が難しい。同大は熟練農家が、葉のしおれ具合や光沢を見ていることに注目。葉の様子をAIに学ばせて、熟練農家並みのかん水量判断ができるか検討した。
2016年8~11月に3段摘芯のポット栽培で試験。(1)茎頂部の草姿写真(2)温度(3)湿度(4)照度――のデータをAIに学習させた。写真は1分に1枚撮影し、しおれる動きが大きい部分だけ抽出したものを、1400枚使った。
葉がしおれる時に茎がごくわずかに細くなることが分かっているが、学習したAIは高精度で予測し、かん水の量とタイミングを判断できることを確かめた。
同大学術院情報学領域の峰野博史准教授は「(AIの予測通りにかん水すれば)糖度8以上の果実を安定生産できる」とみている。熟練農家の技術を数値化できるため、技術の継承にもつながると期待する。今後、現地試験を進める予定だ。
2017年10月15日