パラダイス文書に日本企業も 丸紅や商船三井

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2017/11/6 19:00
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 英領バミューダ発祥の法律事務所などの内部文書「パラダイス文書」でタックスヘイブン(租税回避地)に投資する複数の法人や個人が名を連ねていた問題で、日本企業もリストに入っていたことが6日、分かった。総合商社や海運などの大手企業の名称が文書にあったが、各社は違法性はないと説明している。

 住友商事丸紅は6日、英領バミューダ諸島などにある法律事務所から流出したデータ「パラダイス文書」に記載があることをそれぞれ明らかにした。タックスヘイブンの英領ケイマン諸島にある企業を経由した取引をしていた。両社とも日本の税制に基づいて納税処理しており、「税務上の問題はない」(住友商事の高畑恒一最高財務責任者=CFO)という。

 住友商事は中東で発電を手がけるケイマンの事業体に出資していた。高畑CFOは「途中から権益を取得した案件で、もともとケイマンを使っていたスキームを引き継いだ」と住友商事としての意図はなかったと説明した。受け取った配当は日本のタックスヘイブン税制に基づいて納税しているという。

 丸紅はIHIの航空機エンジン開発プロジェクトでケイマンに設立した特別目的会社(SPC)を利用していた。為替リスクの軽減が目的で、所得はタックスヘイブン税制で納税しているという。

 東京電力ホールディングスは6日、パラダイス文書に自社の記載があったことを明らかにした。東電と丸紅が折半出資で2007年に設立したフィリピンの電力事業会社、チームエナジーが、英領バミューダ諸島に2社を保有していた。

 2社はチームエナジーの不採算部門などを集約したもの。同地域に置くことで事業の清算がしやすいメリットがあったという。東電は「2社ともに10年までに清算済み。組織再編や清算は各国の法制度に従い適切に実施している」と説明した。

 商船三井も同日、パラダイス文書に自社の名前が記載されていたとの一部報道について「船舶の取得、手続きを機動的に行うことが会社設立の目的だ」とコメントした。「文書に記載があるかどうかは未確認」としたうえで「日本の税法に基づいて適切に税務申告している」とした。

 商船三井によると、同社は2006年、ノルウェーの海運会社と共同で液化天然ガス(LNG)輸送船を所有するための特別目的会社(SPC)をケイマン諸島に設立。10年に東京ガス子会社に株式の一部を譲渡した。

 日本など先進国の船籍の船舶には原則として自国籍の船員を乗船させなければならず、高い人件費や人材確保の困難さがネックになる。国外のSPCが得た収益は株式保有割合に応じて日本の株主の所得とみなされるため、日本の税制度に従って課税されているという。

 パラダイス文書に名前が挙がったIHIは、大手総合商社の丸紅が英領ケイマン諸島に設立した特定目的会社(SPC)を通じて航空機エンジン開発への投資を受けていたとされた。IHIによると「個別の契約の詳細は申し上げられないが、違法性はない」(関係者)。航空機エンジン開発1000億円超という巨額のコストがかかるため、欧米のエンジン大手を中心にリスクと利益を分け合う方式での国際共同開発が一般的。IHIはその過程で、一定額の投資を受け入れる見返りに配当で報いる契約を丸紅と結んでいたようだ。

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