富士急行線の観光列車を3種類楽しむ旅!/古谷あつみの鉄道旅Vol.24
みなさん、こんにちは!古谷あつみです。今回は富士急行線の旅。3種類の観光列車を楽しみます。富士急行線といえば、系列の富士急ハイランドが全国的にも有名で、都内から気軽に行ける遊園地として大人気ですよね!けれども、鉄道ファンの間では、日本で最も富士山に近い鉄道として、車窓の美しさからも人気があるのですよ!今回もアドバイザーは鉄道ライターの土屋武之さん、カメラマンには村上悠太さんをお迎えして取材してきました!
今回の見どころはここ!
2.富士山を眺める富士山ビュー特急
3.富士山ビュー特急で味わうスイーツ!
4.富士急行で注目の駅グルメ
5.落ち着いたデザインが魅力!富士登山電車
1.イラストがいっぱい!フジサン特急
今回の旅のスタート地は山梨県にある大月駅。富士急行線はこの駅を起点に河口湖まで走る鉄道です!
私たちは、新宿駅からJR中央本線の特急「あずさ」に乗って、約1時間でやって来ました。
古谷「土屋さん、今回もよろしくお願いします。」
土屋「よろしく!で、今回の旅のテーマはなんだい?」
古谷「いろいろな列車に乗るのをテーマにしてみようかと。」
土屋「富士急行線は観光列車に乗れることが魅力だからね。そして、東京からのアクセスもいい。そこを知ってもらえればいいんじゃないかな?」
古谷「なるほど!今回は、富士急行線の代表的な列車にたくさん乗るスケジュールを組みました。」
土屋「今日一日でどれくらい乗れるかな?」
古谷「まずは、フジサン特急に乗ります!」
土屋「なるほど。」
古谷「富士急行線でいちばん好きな列車なんです。キャラクターが爆発した感じで可愛くないですか!?」
土屋「あぁ、キャラクターがぎっしりと描かれていて可愛いってことだね?君はよくわからない表現ばかりするね。」
古谷「私の表現も謎かもしれませんが、このボディーに描かれているキャラクターも謎ですよね。」
土屋「フジサン特急のキャラクターは165種類あり、そのうち車体の外側に描かれたのは、一般公募からも選ばれた58種類の富士山たちなのさ。」
古谷「全部で165種類もあるんですか?お気に入りのキャラクターを探すのも良いですね!どれかなぁ…。」
古谷「私はこのキャラクターが好きだなぁ…。」
土屋「なんとなく君に似ているね…。」
古谷「え…。私、山に似てるんですか?」
土屋「この車両の魅力は、展望車両さ。前面展望と、座席両側の窓から存分に車窓を楽しめるんだ。」
古谷「富士急行線の車窓のメインともいえる、富士山は左右どちらから見えますか?」
土屋「カーブもするし、富士山駅で進行方向が変わるから、左右どちらからでも楽しめるんだよ。」
古谷「それは最高ですね!」
「フジサン特急」は3両編成。おすすめは1号車で、座席指定の展望車両となっており、乗車券の他、特急券と指定席券が必要です。旅行シーズンや週末は早めに予約しておくのがよいでしょう。
展望車両は運転席側から6列分が2+1席の配置となっています。2列席側の窓下には折りたたみ式テーブルがあります。
観光列車らしい造りですね。
私が気に入っているポイントはここ!
カーテンにも可愛らしいフジサンキャラクターが描かれているのです。
さらには、富士吉田市の特産「ふじやま織り」で織り上げられたヘッドカバーにも注目!細部まで「フジサン」が詰め込まれているのです。
可愛い内装に、旅のテンションも上がります!
贅沢な旅をしたいときはコチラ!1列席です。リクライニングはもちろん足元にはフットレストまで付いています。う~ん、贅沢!
こちらには、木製のテーブルがあり、広い空間を独り占めできます。
土屋「なんだ、優越感に満ちた顔をして…。取材だぞ~」
古谷「この座席、気に入りました!前面展望も良いですが、この独り占めな空間にすごく惹かれます。」
土屋「まだまだ席はあるぞ!」
他にもデッキ寄りには、ガラスで仕切られたセミコンパートメント席が2区画、8席設けられています。
座席は向かい合わせで、間には駅弁などもゆったり広げられる木製の大型テーブルがあり、ファミリーやグループでの利用に向いています。
仲間同士でワイワイ言いながら、富士山を眺めるのもいいですね!
最後に紹介する座席は、なんといっても運転席のすぐ後ろ!この展望席の眺めが一番です!
ここは1号車の指定席券を持っていれば誰でも座ることができ、ダイナミックな車窓を、運転士気分で味わえるのです。
旅の楽しみといえば、車内販売も外せません。
今回、私が車内販売でゲットしたのはフジサン特急のクリアファイル。キャラクター達が、名前付きで描かれているため、自分のお気に入りの名前もひと目でわかります。
このクリアファイルを見ながら、気になったキャラクターの車内捜索をしても楽しいかもしれません。
さらに、記念撮影用のパネルやキッズ運転席もあるので、小さな子供も飽きずに乗っていられる列車です。ファミリーのみならず、誰でも楽しめそうです。
はい、チーズ!
フジサン特急
大月~河口湖間に、平日3往復、土・日曜・祝日下り3本、上り2本運転(旅行シーズンには増発)。ただし、車両点検のため、代わりの車両で運転される日がある。
1号車が指定席、2・3号車が自由席で、乗車には乗車区間の乗車券+特急券が必要。
特急料金は大月~富士山・富士急ハイランド・河口湖間が400円、都留文科大学前発着の場合は200円(富士山~河口湖間のみ利用の場合は特急料金不要)。
指定席利用の場合は、200円の指定席券も必要になる。
指定席の予約は、富士急コールセンター、公式ホームページ、一部の旅行会社で扱う。
0555‐73‐8181(富士急コールセンター)
2.富士山を眺める富士山ビュー特急
続いて紹介するのは、いちばん新しく、人気が高い「富士山ビュー特急」です。
この美しい車両、実は2012年まで小田急新宿駅とJR沼津駅との間を結んでいた特急「あさぎり」をリニューアルした車両なんです!
外観は上品な赤茶色をベースとした色に塗り替え。FUJISAN VIEW EXPRESSなどの文字や、「富士」の字をモチーフにしたロゴが前面や側面に入れられており、光り輝いています。
ではさっそく、車内に乗り込みます!
客車内に入った瞬間から、温かみがあり、洗練された空気が漂います。
古谷あつみの鉄道旅を毎回読んでくださっている方なら、何か気づきませんか?
そう…あの方のデザインです!
JR九州の観光列車などを手がけているデザイナー・水戸岡鋭治さんのデザインでリニューアルされているのです!特徴のある美しいデザインです。
「富士山ビュー特急」も3両編成。1号車は全席指定の特別車両なので、後ほどご紹介。2・3号車は自由席です。木材を多用した内装には落ち着きがあり、富士山をのんびり眺める旅にピッタリです。
モダンな内装は、外国人観光客にも大変人気があります。車両ごとにテーマ色が違っており、自由席なのでどの席に座るのか、考えるだけでもワクワクしますね!
木製の窓枠は、富士山を飾る額縁のような雰囲気です。これが乗車券+特急料金で利用可能とあれば、人気が出ないはずがないですね!
富士山ビュー特急
大月~河口湖間に、平日2往復、土・日曜・祝日3往復運転。ただし、車両点検のため、代わりの車両で運転される日がある。
1号車が指定席(特別車両)、2・3号車が自由席で、乗車には乗車区間の乗車券+特急券が必要。
特急料金は大月~富士山・富士急ハイランド・河口湖間が400円、都留文科大学前発着の場合は200円(富士山~河口湖間のみ利用の場合は特急料金不要)。
特別車両(1号車)利用の場合は、900円の特別車両券も必要になる。
指定席の予約は、富士急コールセンター、公式ホームページ、一部の旅行会社で扱う。
0555‐73‐8181(富士急コールセンター)
3.富士山ビュー特急で味わうスイーツ!
「富士山ビュー特急」の1号車は全席指定の特別車両と先ほど紹介しましたが、ここのサービスがとっても魅力的なのです。
古谷「土屋さん、いよいよですよ!」
土屋「至福の時間がやって来たぞー!甘党にはたまらない!」
土曜・日曜・祝日に運転される2往復は「スイーツプラン設定列車」となっています。富士急ハイランドオフィシャルホテル「ハイランドリゾートホテル&スパ」のシェフパティシエによる「富士山ビュー特急特製スイーツ」を特別車両で楽しめるのです!
「特別車両」と聞いただけでワクワクしますが、その車内を皆さまにご覧いただきましょう。
入口にはカーペットが敷かれ、アテンダントさんがお出迎え。接客も上品で洗練されています。
早くもドキドキが止まりませんが、いざ、車内へ。
古谷「わぁ~!自由席とは全く違う雰囲気ですね。これが特別車両…。」
土屋「スイーツプラン…。」
古谷「甘いものの話はあとにして、車内を見てみましょうよ!」
運転席寄りには6人掛けの円卓と1人席が2席あります。
古谷「この6人掛けのお席で、女子会なんかをしてみたいですね!」
土屋「うん。女子会はいいかもね。」
古谷「女性は、いくつになっても可愛いところがあるものですからね。この車両は、そういった女性の可愛い心をくすぐるデザインです。」
大月発の場合、進行方向右側に2人掛けボックス、左側には4人掛けボックスが3卓ずつ配置されています。
レトロな喫茶店…というのが、まず初めの私の感想でした。
限定26席の1号車は、どの席も高級感があります。
こちらが私たちの席。着席するとすぐ、料金に含まれている「ウェルカムドリンク」の注文を取りに来てくださいました。
土屋「スイーツと車窓を楽しめるなんて、僕のためにあるようなプランだな。」
古谷「私は、甘党ではありませんが、かなりテンションが上がっていますよ!本当に贅沢です。」
席には「スイーツ」の小箱がすでにセットされており、「富士山ビュー特急」のシンボルマークが描かれた蓋を開くタイミングも考えただけで楽しいです。
土屋「さっそく食べよう!」
古谷「え!?もうですか!?まずはコーヒーを楽しみましょうよ~!」
車内販売の紙カップのコーヒーも嫌いではないですが、こうして陶器のカップに目の前で注がれるコーヒーは格別。漂う香りもひときわ芳醇な感じです。これが電車の中だなんて…。
では、蓋を開けてみましょう。
古谷「うわぁ!宝石箱みたい!キラキラしてますね。」
土屋「うん。これ、美味しい。」
古谷「わ…もう食べてる…。どうですか?」
土屋「上品な甘さにまとめられている。車内の雰囲気とよく合っているね。」
このスイーツは、ハイランドリゾートで作られ「富士山ビュー特急」に積み込まれるそうですよ。季節ごとに変わりますが、どれも目で見ても美しく楽しめるものばかり。
皆さんも、スイーツ好きな土屋さんが認める、絶品スイーツを楽しんでみてはいかがでしょうか?
富士山ビュー特急「スイーツプラン」
土・日曜・祝日運転の列車(特別車両1号車)のうち2往復で実施。大人4,000円、小人3,000円(運賃・座席指定料金・特急料金・特別車両料金・特製スイーツ・ドリンク料金込み)。
予約は富士急トラベル、または富士急トラベルの公式ホームページで、出発日の3日前まで扱う。
0555-22-8877(富士急トラベル)
4.富士急行で注目の駅グルメ
さて、話題がスイーツに移ったところで、富士急行で楽しめるグルメを一挙に紹介したいと思います。沿線のご当地グルメとしては「ほうとう」や、「吉田のうどん」などが有名ですが、富士急行ならではのグルメもたくさんあるんですよ!
まずは、定番の駅弁からご紹介します。
しかし、見た目は可愛いですが、炭火焼肉弁当というだけあって、味は本格派。ふんわりしたお肉からは、しっかりと炭の香りがするのです。これには驚きました。
添えられたバラン(緑色の仕切り)も富士山の形をしており、フジサンだらけです!
毎朝手作りされていて、出来たての味を楽しめます。販売数量が限定されていますので、ぜひ早めにゲットしたいですね!
なお、これらの駅弁は、河口湖駅の中にある「Gateway Fujiyama河口湖駅店」で販売されています。
駅弁ばかりではなく、おやつも充実。
同じお店で楽しめる定番メニューが、こちらの「たい焼き(160円)」。富士山に鯛が乗った、なんとも縁起の良いデザインのたい焼きです。
スイーツ博士(?)の土屋さんが試食しました。
土屋「富士山駅に来るといつも食べているけど、飽きない甘さだねえ…。」
ふじやま屋 富士山駅店
山梨県富士吉田市上吉田2-5-1 富士山駅内
[営業時間]8:00~18:00
[定休日]なし
※営業時間を変更する場合や臨時休業する場合あり
0555-72-8900
ゆっくりと落ち着いて休憩したいという方にオススメなのが下吉田駅。
駅の中にあるカフェ「下吉田倶楽部」です。カフェメニューのほか、沿線のお土産物も扱っています。
下吉田駅ではグルメだけではなく、全国から消えてしまったブルートレインを間近に見ることが出来る「ブルートレインテラス」があることでも有名です。鉄道ファンが富士急行と聞いて一番に思い出すのが、まずこちらでしょう。富士急行線内で有効な乗車券を持っているか、入場券(170円)を買えば入れます。
富士急行線ならではのグルメは、この他にもたくさんあります。
ぜひ探してみてくださいね!
下吉田倶楽部
山梨県富士吉田市新倉840 下吉田駅内
[営業時間]10:00~17:00
[定休日]第1月曜(祝日の場合は営業、翌日休み)
0555-22-0144
5.落ち着いたデザインが魅力!富士登山電車
さて、最後にご紹介するのは富士登山電車です。
富士急行線は大月~河口湖までの26.6kmの間に約500mの高低差があり、最急勾配は40パーミル。つまり、1,000m進むごとに40m登るという、ふつうの鉄道では限界に近い急坂もあるのです。富士山の山頂まで登るわけではありませんが、まるで登山電車みたいです。
そこで、富士山を楽しむための日本一ゆたかな登山電車を作ろうと、水戸岡鋭治氏がデザインしたのが、この列車!3本の観光列車の中ではいちばんのベテランで、2009年に運行が開始されました。今でも根強い人気を誇っています。
外観は富士急行線が開業した時の電車・モ1号と同じカラーである、さび朱色で塗装されています。カッコイイですね!
車両は「赤富士」と「青富士」の2両編成です。中を覗いてみましょう。
木や布といった自然の素材を多く使った内装はレトロモダン調。山梨県産の「甲斐絹」なども飾りに使われています。
繰り返し言ってしまいますが、これが水戸岡デザインの真骨頂です!列車が走る土地の名産品をとっても魅力的に使っているのです。富士山の車窓を眺めつつ、車内を見て回っても楽しいですね。
富士急行にちなむ本が並ぶライブラリーや、富士登山電車のオリジナルグッズや飲み物などが購入できるサービスカウンターなどもあります。
富士登山電車
大月~河口湖間に、平日1往復、土・日曜・祝日下り2本、上り1本運転。ただし、車両点検のため、代わりの車両で運転される日がある。
全車自由席だが、乗車には乗車券の他、着席券(全区間200円)が必要。
0555‐73‐8181(富士急コールセンター)
土屋「今日は特徴がある列車に乗れたね。」
古谷「いろんな車両を見られたので、次はプライベートで一つの列車にじっくりと乗ってみたいです。」
土屋「気に入った車両があったかい?」
古谷「『フジサン特急』が可愛らしくて大好きだったんですが、また『富士山ビュー特急』に乗ってスイーツプランでお茶してみたくなりました。」
土屋「僕は『富士登山電車』が昔から好きだよ。アテンダントさんの気配りが行き届いたサービスが、いつ乗っても心に残る。ちなみに、僕のプロフィール写真の背景は『富士登山電車』だよ(笑)」
古谷「それぞれ素敵な車両でしたね!」
皆さんもお気に入りの観光列車を、富士急行へ探しに行ってみてはいかがでしょうか?
※記事内の価格表記は全て税込です。
土屋武之(鉄道ライター)
鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「誰かに話したくなる大人の鉄道雑学」(SBクリエイティブ)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。
古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)
小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道旅行雑誌「旅と鉄道」等で執筆活動中。
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