Abemaの72時間テレビ。
特にSMAPに思い入れのない自分がなんだかんだダラダラ流しっぱなしにするにはいい「抜けた」感じの放送で、結局6割か7割くらい観てたと思う。
視聴数が過去最高だという数値がたとえ大本営発表であれ、地上波ならまず難しい内容をやったエポックメイキング的な番組であったことは間違いない。
各所で語られまくって飽き飽きでしょうが、いくつか気になったことを。
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洗脳
ノー編集の生放送。
出ずっぱりはきついので時折スタジオの女子アナ(という名のAmeba女子社員)が引き継ぎ、ツイートやトレンドを紹介したり、前放送のVTRを流して繋ぐ。
あとはひたすらCM。
CMとは言えスポンサーがない手前の枠なのでひたすら恋愛バラエティの予告だとか、恋愛バラエティだとか、恋愛バラエティだとか、韓国バラエティの番宣が「時計仕掛けのオレンジ」洗脳シーンのごとく延々と繰り返される。
アイキャッチが入り「らんらんららら~ん♪」と流れたかと思ったらまた宣伝リピート地獄……というのも何度もあったが観ているファンからすればあの三人が揃って映っているだけで満足なのかもしれない。
作ってるスタッフの大半はテレビマン。
テレビっぽいのは当たり前。
企画もかつてのテレビっぽく、たとえばユーチューバー草なぎの2トンの鉄球ボーリングなんてのは80年代バラエティぽさ満載の雑さだったりするが、ユーチューバーというイメージに金をかければこうなると言うのをやってみせたようにも見える。
元々ユーチューバーが低予算なアイデア地方局みたいなものなんだからそれに予算をかけてユーチューバーのフォーマットにハメれば当然あんな感じにはなる。
コーラにメントスを入れて爆発させる実験で不発に終わるなんて地上波ならお蔵入りでもおかしくない。
ある種、規制が緩い、スポンサーがいないからこその自由度があるし、さらにいうならまだまだ番組制作がテレビっぽくないところもドキュメントっぽさの演出に一役かっていた感じはある。
トレンド
「トレンドを狙う」と称し、さまざまなワードを仕掛け、トレンド数世界一を狙う企画を72時間かけてやっていたんだけれど、トレンドは自発的ではなく、あくまであの放送をやっていれば自然とトレンド世界一になっていただろうし、狙うことで逆にあざとさが出てしまった気がしなくもない。
もちろんトレンドになることでの宣伝効果を考えれば意図的にトレンドを狙う意味はあったんだろうが、その辺テレビというか、企画優先の面をとても強い。
さらに3日目、香取が来日中のトランプのモノマネをしたり、稲垣がナンパしてそのまま結婚をあげるという下りは鈴木おさむ演出だと言う話があり、どうもツイッターを見る限り評判が悪い。
結局、鈴木おさむにしろ編集ありきの番組づくり前提であれば冗長になるのは必然だし、ファンが観たいのは3人の活躍であって企画ありきの番組ではないというのがファンの反応からよくわかる。
仕掛ける側からすれば、かつてめちゃイケでやっていたような「フィクション・ノンフィクション」的な作りを目指したのかもしれないが、ファンが望んでいたのは三人の「ホンネ」であってフィクションではなかった。
その辺を理解しない番組構成は、作り手側とファン側との、捉え方が平行線だったんだろう。
SMAPというブランド
SMAPというアイドル名はブランドと同じ。
ジャニーズという巨大な事務所がメディアと手を組み、長い時間と広告宣伝と予算をかけイメージを作り上げたブランド。
解散したところでその力は衰えず、SMAPというグループのブランド力は個人に寄与している。
今回のAbemaの放送はそんなSMAPというブランド力を使い、これまでAbemaに馴染みのなかったユーザーにアプローチする手段。
そういう意味でも大成功。
「しがらみがないネット放送」という話もあるが、吉本やマセキのタレントが出ず、松竹と浅井企画中心という辺りゴリゴリにしがらみが感じられたし*1、ライブでSMAP名義の曲を歌えないのもまたしがらみ。
SMAPというアイドルは誰のものでもない、とファンは思っていようが予算をかけここまでにした事務所からすればSMAPというブランドを手放す理由はない。
「AKBとは前田敦子である」と言われた時期もあったが、すっかり新陳代謝は終わり、モーニング娘。にしろかつての浅ヤン時代のメンバーは皆結婚し、ママタレなどにスライドした。
ジャニーズに所属するアイドルは、嵐にしろTOKIOにしろ個人とブランドの結びつきが強い。
(同じ方法論を取ったのがスタダ系のアイドルだが)
海外ブランドを見ても分かるがブランド名とデザイナーは違う。
SMAPというブランドを作り上げ、収益をあげる仕組みを作り上げたのはジャニーズ事務所にあって、元メンバーにはない。
仮にメンバーが自分らで集まり自発的に「自分たちはSMAPだ」と名乗り始めたのであればその名前の使用権も違うだろうが新加勢大周の昔から事務所はそのグループ名やタレント名を売るために金をかけてる。
YOUTUBER草なぎ
「YOUTUBER草なぎ」は試みとしても、とても面白い。
そもそもYOUTUBERは誰でも始められる。一般個人でも動画を撮影すれば始められるもの。
テレビに出る機会がない売れない芸人でもYOUTUBERならなれる。
タレントがYOUTUBERになるだなんて宣言するほどのことではない。
ブログをやってるタレントは山ほどいるし、それはタレントをやりながらブログをやってるだけで、ブロガーなんて名乗るほどのことはない。
ところが、ここに「元SMAPの」という看板がつくだけで前代未聞の出来事に変わる。
ジャニーズのタレントはチャンネルを絞り、ファンとの距離を隔離することで神格化してみせる。
今のアイドルが接触イベントを多発し人気を作り上げるのとは逆に、テレビなどメディアを通じてファンにアイドルを提供。
ネットのデジタルの画像は無劣化なため制限し、規制することでイメージの拡散も抑止する。
そんな元ジャニーズの、デジタル世界での活動は許されなかった元SMAPだからこそ、YOUTUBERになり、インスタグラマーになり、ブロガーになり、ツイッターにツイートする。
SMAPを辞めた森且行に再会し、SMAP最後の日に稲垣が女性とデートしていた裏話を話すことも辞めたからこそできるし、虚構であれなんであれ結婚式のデモンストレーションだってできる。
だからあの番組は、所属アイドルを神格化するジャニーズ事務所のタレントという軛から解き放たれた三人の人間宣言にも見える。
別に放送の視聴数でテレビ局が、脅威に思おうが、どう感じただなんて、短いスパンではなく、これからの、今後の展開こそが本番。
72時間はあくまで狼煙でしかない。
テレビを中心とした収益構造に対して新しい可能性を見せた。それだけでも価値ある放送だった。
今後の三人の活動を楽しみに見ていたい。
※草なぎのなぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀
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*1:あかつって吉本じゃなかったのね