『アズールレーン』などが採用する中国の“間接ガチャ”仕組み。日本産ゲームが悪で、海外産ゲームは優しいは本当か?
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- 2017年11月06日
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『アズールレーン』のヒット以降、「日本のゲームの課金はだめだ」的な意見をネットでよく見る。その中でも、「日本のゲームはガチャに頼っているから駄目だ」という話が多く、『アズールレーン』をはじめとする中国・韓国の基本無料ゲーム(以下、中国産ゲーム)の基本にガチャ課金の仕組み用いられていることを無視していることが多い。
そこで、今回は中国産ゲームの用いているガチャの仕組みについて説明しつつ、「日本は終わっている」わけではないと説明したい。
なお、本記事では知名度があるために『アズールレーン』の画像を多く利用するが、『アズールレーン』をけなす意図はない(できれば、最後まで読んで欲しい)ことは最初に明記しておく。
日本産の基本無料ゲーム(以後、これを日本産ゲームと略す)は、よく「ガチャゲー」といわれる。
これは非常にその通りで、多くの日本産ゲームは直接ガチャに課金して強いキャラクターを当てて、それを育ててクエストを進めるシステムとなっている。
ガチャの結果が良ければその後は全て上手くいく作りを指して「ガチャゲー」と呼ぶのは間違いではないだろう。
さて、先ほど“直接ガチャ”と書いたが、“直接”ガチャがあれば“間接”ガチャもある。
そして、その間接ガチャこそが『アズールレーン』をはじめとして中国産の基本無料ゲームで多く採用されているガチャの仕組みである。
間接ガチャとは、プレイヤーにクエストをこなさせて、クエスト攻略時にランダムでドロップするアイテムをあさらせる方式だ。
つまり、直接ガチャが“石”などと呼ばれる課金アイテムを用いてガチャを回すのに対して、間接ガチャとは「スタミナ」を利用して回すガチャになる。
超低確率のドロップでしか手に入らないアイテム、もしくはスタミナを最大限に有効活用しなければ手に入らない期間限定のポイント景品アイテムを用意してクエストを何周もさせ、足りなければスタミナ課金で稼ぐ方法だ(後者は厳密はではないが)。
直接ガチャの日本産ゲーム
「イベント→ガチャに課金して→低確率で出た!→イベント攻略した!」
※イベントクエストのドロップ率はたいてい海外ゲームよりかなり高い。
間接ガチャの中国産ゲーム
「イベント→クエストをひたすら何回も回す→低確率ドロップした!」
※このほかにノーマルクエストから重要なアイテムが落ちるので、イベントがなくてもスタミナ課金することがある。
という仕組みになる。基本的には、これで日本産ゲームと変わらない売り上げをたたき出すように設計されている。中国政府がガチャ詳細確率の明示を義務化したが、間接ガチャなら確率の明示も必要がなく、中国的に都合が良い仕組みでもある。
▲中国のゲームは本国では詳細確率を表示しているが、日本では良くてレア度別の確率表記にとどまる。なお、中国では確率表記が義務化された際、確率アップ表記のキャラ当選確率が低すぎて炎上した例が相次いだ。
「スタミナなら課金なしで誰も持っているし、クエストから落ちるなら努力すればだれでも手に入るから平等ではないか?」と思う方もいるだろう。そこが間接ガチャのえぐいところで、毎日の限界までプレイするプレイヤー、是が非でもイベントドロップなどを集めて金を払うプレイヤー以外には課金が見えないのだ。
しかし、実際にはスタミナに課金される。
「そろそろドロップしないと、イベントが終わってしまうかもしれない。でも、絶対に限定ドロップは欲しい」
そんなことを考えるプレイヤー……クエストドロップせずに確率の沼にハマってしまったプレイヤーや、毎日ログインし損ねてスタミナが足りないプレイヤーに、高額でスタミナを購入してもらう仕組みなのである。
そのため、日本産ゲームのイベントが開始初日のガチャをピークにするのに対して、中国産ゲームは初日に盛り上がった後に落ち着き、ランキング系イベントでなくともイベント終盤になるほどに課金が増えていくことが多い。
▲アズールレーンのイベント「努力、希望と計画」時の売り上げ。イベント開始の9月28日に大きく上がった後、後半になるにしたがって増えてイベント終了日に最高潮を迎える。この時期にアズールレーンは急速な成長をしていた厳密にはイベントだけが原因ではないが、成長速度が収まりつつある現イベント「紅染の来訪者」ではよりこの傾向が顕著になっている。
スタミナが課金のメインアイテムであるのは、価格設定を見てもわかる。
日本産のゲームは課金すると定額でスタミナが全回復する。
しかし、中国産ゲームはスタミナが最重要の課金ポイントなので一定値しか回復しない。しかも、スタミナは課金を続けると高額になっていく。
▲中国産ゲームは燃料を購入するとどんどん高額になる。一部で「ゆっくり遊んでほしいから」などと誤解されるが、ここが一番重要な課金ポイントなのだ。購入回数が上がるとやばすぎる額になって疲弊するので、1日に買える回数が決まっているゲームも多い。
日本産ゲームは直接的にガチャに課金させるのに対して、中国産ゲームはプレイを間に挟んでの間接ガチャでドロップするまで課金させることが特徴、というわけだ。プレイが間に挟まる分はゲーム的とも考えられるが、これが極まるとクエストのオート周回・スタミナだけを消費してのスキップでドロップを手に入れるようになり、後者に至ってはスタミナを買っての直接ガチャと大差はなくなる。
事実、中国や韓国のゲームではオートやクエストスキップがユーザーから求められる機能として存在する。
▲KOF98UMOLでは、ゲームをプレイしなくてもスタミナを消費してドロップだけを手に入れられる。ここまでくると直接ガチャ。
さて、ここまで中国産ゲームの間接ガチャことスタミナ課金について書いてきたが、「アズールレーンが優しい」のはスタミナ課金が間接ガチャだから見えづらいからなのか、それとも中国産ゲームだから特別なのか、という話をしていきたい。
ネット上で「優しい」とされているのは、
・無課金でもキャラクターが揃って限界突破できる
・SSR輩出率が高いだけでなく、SSRキャラクターですらドロップする
・競わないですむ
・メンテナンスのお詫びが多い
あたりが言われている。結論から言うと中国産ゲーム特有の事情と、『アズールレーン』特有の事情両方の要因が重なって優しいゲームになっているのは間違いないと思う。
間接ガチャを採用するゲームの特徴として基本的な戦力は整いやすいというものがある。周回課金してもらうためにはイベントを遊ぶ戦力を揃えてもらわなければならない。キャラクターの装備を得るために周回するモチベーションを持ってもらうためにも、スタミナに次ぐ人気商品の衣装を売るためにもキャラクターは持っていて欲しい。するとガチャの確率などは甘めにする必要が出る。だから、中国産ゲームのガチャ確率は最高レアの出る確率は高くてもいい。
▲衣装課金は中国のゲームの中でも重要な部類に属する。誰にでも配られたり、ドロップしたりするキャラクターは衣装が多く用意されたり、高額衣装が用意される傾向にある。
そこで満足してもらい、ヘビーにプレイするとスタミナ課金の壁が見えてくるのだが、アズールレーンはそのスタミナ自体も中国版より若干安い。
▲イベント燃料パックは中国の40%引き(半額近い)。
これらは中国産ゲームの構造による特徴だ。しかし、『アズールレーン』固有の事情もある。
他の中国産ゲームは、課金アイテムの衣装を手に入れるとキャラクターの能力自体が変わることも多いが、アズールレーンは外見しか変わらないので購入圧力がない。
また、多くの中国産ゲームはスタミナ課金(プレイヤーレベルが直接キャラクターの能力限界になるなど)の優遇が大きくてスタミナ課金の圧力が高いものが多いが『アズールレーン』にはそれがない。
キャラクターを与えたあとでプレイヤーvsプレイヤー(PvP)やギルドバトルをけしかけ、究極の装備を調えるためにスタミナ課金させるのも中国産ゲームのお約束だが、現段階ではそれもない(PvPはあるが、競うべき限定景品がない)。
▲アズールレーンでは限定景品がない。そのため、心穏やかに遊べる。だが、多くの中国産ゲームはここで大課金をさせる。
また、キャラクターの欠片を集めて強化するようなゲームと比べると、限界突破最大までのハードルも極めて低い。日本式ゲームでいったんのゴールとされる「キャラクター入手」はおおよそ緩いし、中国産ゲームの苛烈な課金システムも現段階でほぼ搭載されていない。
スタミナを購入するたびに高くなることを考えると、本当に極めるには日本のゲームと大差ない金額に行くはずだが、特に無課金と小額課金者にとっては日本産ゲームではありえないほどキャラクターがそろうため、すごく優しく見える設計になっている。
障害対応の良さや広告戦略など多くの要因があるが、この優しさは『アズールレーン』を人気ゲームの座に導いた大きな要因の1つだろう。
『アズールレーン』の課金システムの根底にはガチャ思想がある。しかし、中国産ゲームの中でかなり課金圧が低いし、日本的に見ても優しいゲームに見えるのも間違いない。
余談だが、日本向けにサービスする中国・韓国ゲームは日本版でバランスが変わってしまうことが多い。具体的には、よりガチャの重要性が増すように設定され、スタミナの課金額が引き下げられる傾向にある。スタミナで課金する設計なのに日本人が直接ガチャを回しまくってしまうのでそこでバランスをとったり、日本に受け入れやすい設計にするようだ。また、単純に日本人が気前良く金を払うので課金アイテムの金額を跳ね上げるゲームもある(ときに海外の2倍、3倍の額面にされる上に、スタミナ課金も残っていて2度おいしく売り上げる)。ただ、『アズールレーン』の成功や課金圧の低さを指して「日本のゲームは課金しかない」とか、「厳しい」とか言われることには疑問を感じる。
日本のゲームでもそうだが、完全にスタミナ課金・ガチャ課金に寄っていることは少なく、中国産ゲームでもスタミナ課金の比率が大きいが、日本に渡ってくるときに直接ガチャ課金の比重を強めるケースも多い。
アズールレーンの場合は中国と大差ないようだが、ガチャが引かれやすい日本の環境が売り上げに良い影響を及ぼしている(ガチャ確率が明記されていないので限定キャラのガチャ排出率が下がっている可能性などはあるが)ように思う。
中国産ゲームのスタミナ課金システムは「スタミナを使い切るギリギリか、足りないぐらいを計算してイベントを設計する」ため、1度キャラクターを育てても常にスタミナ不足などで課金が必要になる。これは海外で「グラインド型」と呼ばれていて、常に課金圧を感じる上に合計の課金は日本産ゲームよりはるかに課金額が高くなることから「辛くて止めたい」という声も出る。
さらに間接ガチャを採用し、サーバーを小分けにして、その中で札束を積みあうプレイヤーvsプレイヤーの構造が入った(というかほぼそうなっている)中国産ゲームは日本産ゲームが可愛く見えるほど厳しい課金圧がある。
一方で日本産ゲームの「ガチャで出たものが全て」パターンでは、1回課金して良いキャラクターをそろえると以後のプレイは基本的に無料で進められる。
日本産ゲームは海外ゲームではありえないほどアイテムを配りまくっていて、ほとんどの場合においてゲームに必要な戦力はそろうようになっている。
『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』で、ゲームを楽しむのにでかい課金は必要だろうか?
対戦・ランキングに特別な報酬を持つゲームをのぞき、日常やイベントで配布されるアイテムだけでキャラクターはそろわなくても十分にゲームは楽しめるはずだ。
最高レアはそろわないかもしれないが、そもそも中国産ゲームでは課金しないとイベント衣装意外は手に入らない(課金石を配らないゲームか、現金課金アイテムにするか二分される)からあまり変わらない。
「日本のゲームは課金ばかりで終わっている」的な説を見かけるが、どちらにも課金圧が厳しいゲームがあり、どちらにも長所と欠点がある。
私自身としては「ガチャで強いキャラを当てる」ことがゴールになり、ゲームを究極的に有利にする仕組みには飽き飽きしていて、どんなゲームもガチャを回させるために存在するマンネリで限界にきている気はしている。
また、ガチャイベントをメインにする運営はインフレが増していくので、そういった意味で日本産ゲームについていきづらいとは感じている。
ただ、日本の国産ゲームでもそういった状況は変化を迎えつつある。
過去、カプコンが「納得課金」というキーワードで取り組んでうまくいかなかったりしたが、『艦これ』にて間接ガチャの仕組みを搭載した国産ゲームをヒットさせることができた。
そう、日本ではちょっと芽がでるのが遅かっただけなのである。
日本国産作品のヒットと、海外作品の台頭でちょうど変革期を迎えているなか、中国からいい感じのゲームがいいタイミングでリースされたのが『アズールレーン』というだけで、今後出る日本産ゲームにも期待できると思っている。
少なくとも、『アズールレーン』のヒットやうわべの仕組みを見て中国産ゲーム全般に適応して「日本終わっている」的な意見は違うと言いたい。
コメント一覧
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- 2017年11月06日 16:02
- 「日本でも確率を表示している中国のゲームのスクショ」に「中国のゲームは本国では詳細確率を表示しているが、日本では絶対に隠す」というキャプションをつけてるのはどう理解したらいいの?
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- 2017年11月06日 16:06
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最大手タイトルとの比較から逃げ回ってんじゃねーよ笑わせんな糞ライター
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- 2017年11月06日 16:11
- 実際にアズールレーンをやってはいませんが、この手の課金方式は日本のソシャゲにもありました。ただソシャゲ黎明期にてガチャの課金を模索していた時期にあった方法かつ、集金にいたらなかったため早々に廃れただけというのが肌感です。
おそらく、該当のゲームは「見せ方」が秀逸なんでしょう。また、重度の直接課金に疲れた市場において、古いパターンの課金方法が新しく見えた例に思えます。
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- 2017年11月06日 16:11
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スタミナ制なんだから自分を抑制すれば話は別じゃないの...?
日本のガチャって課金前提で話が出来ているからダメだって言われてるだけでしょ
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- 2017年11月06日 16:13
- 詳細ってのはキャラ1体1体の確率を表示することだろ
アズレンはサンディエゴが出る確率までは表示してねーぞエアプ
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- 2017年11月06日 16:19
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詳細確率だからキャラごとの確率ってことの意味だと思うよ。
ただデレステを楽しむのに課金が必要だろうか?ってのは疑問に残る、だいたいのpは推しキャラが出ると納税とかいって出るまで回すからね。
国産のガチャ偏重ゲーの方が課金通貨自体はたくさん配られていることが多いので、自分の欲望をコントロールできれば無理なく遊べることもある。