ハーバード大が手がける昆虫ロボRobobee、今度は水中から羽ばたけるように
Image: Wyss Institute/Vimeo

ハーバード大が手がける昆虫ロボRobobee、今度は水中から羽ばたけるように

また一歩、生き物に近づく。

泳ぐ能力、そして壁に止まる能力を身につけてきた昆虫ロボRobobeeがさらなる進化を遂げ、水中から羽ばたけるようになりました。

ハーバード大学が手がけるRobobeeは、昆虫から着想を得て開発しているロボット。研究者たちが新たに公開した動画では水面へと泳ぎ、空へと羽ばたく様子が収められています。

Video: Wyss Institute/Vimeo

研究の第一著者であるYufeng Chen博士いわく「これは複雑な環境下を繰り返し進んだり通り抜けたりできる初のマイクロロボット」である今回のRobobee。空中と水中を行き来できるロボットの設計には課題が多く、従来のデザインから大幅に改良されることになりました。

数ある課題の中でも特に問題となったのが、2つの異なる環境下での羽をはためかせる回数と、水の表面張力。水の密度は空気の1000倍もあり、羽をはためかせる回数が少なければ飛べないし、多すぎれば水中で羽が折れてしまいます。研究者たちは理論的なモデリングと実験データを組み合わせることで、羽の大きさとはためかせる回数の最適なコンビネーションを発見。空中では220~300Hzで、水中で9~13Hzになりました。

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Robobeeの特徴的なフォルムは、水の表面張力を脱して飛び立つための工夫の成果。4つのアウトリガー(転覆防止のために設けられた、船外に突き出た「浮き」)、胴体にあたるチェンバーでは水を酸水素に変換、これを燃料として2つの羽を羽ばたかせる。 Image: Wyss Institute

水の表面張力はRobobeeの10倍の重量以上(総揚程の3倍)。空中に戻るためには、この問題を克服する必要がありました。そこで研究者たちは4つのアウトリガーと中央のガス捕集チェンバーをつけてRobobeeを改良。水面に到達すると、周辺の水がチェンバー内に集められ、内部の電解板が水を酸水素に変換します。この浮力で、Robobeeの羽が水面から持ち上がり、また表面張力のおかげで羽が羽ばたき始めても機体が傾くことはありません。その後、内部の点火装置が可燃性のガス燃料である酸水素に引火することで、Robobeeが勢いをつけて水面から飛び立てるようにしたのです。

この仕組みについて「Robobeeの最大積載量は限られているため燃料を運べず、その環境内で資源を開発するクリエイティブな解決策を考えなくてはならなかった」と論文の共同著者Elizabeth Farrell Helblingさんは語っています。「表面張力は水から抜け出すために克服しないといけないものだったが、ガスを捕集する過程で利用できるツールでもあった」とのこと。

ますます本物の昆虫に近づいたRobobeeですが、現段階ではセンサーが内蔵されてないことと現在の動作追跡システムの限界により、水中で泳いでる時に即座に飛び立つことはできません。次にRobobee関連のニュースが入るときには、その点が改善されるのでしょうか?

Image: Vimeo, Wyss Institute
Video: Vimeo
Source: Wyss Institute

(たもり)

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