【カイロ=飛田雅則】サウジアラビアで汚職容疑で多数の王子や現役の閣僚らが拘束されたことが明らかになった。ロイター通信など複数のメディアが5日までに伝えた。サルマン国王は息子のムハンマド皇太子への権力継承を進めており、抵抗勢力の勢いをそぐ狙いがあるとみられる。
サウジは「汚職を根絶し、責任を追及しなければ、国家の存続はあり得ない」という内容の勅令を出した。王子11人や閣僚4人に加え、数十人の閣僚経験者を拘束したもよう。
拘束された王族には、著名な投資家のアルワリード王子も含まれているという。同王子は米国の金融大手シティグループに出資するサウジの投資会社を経営し、サウジ経済のけん引役の一人。米国の著名投資家にちなんで「アラビアのバフェット」とも称される。
表向きは「汚職」の容疑だが、実際にはサルマン国王がムハンマド皇太子に権力を集中させる一環との見方が強い。サルマン国王は6月、王位継承順位が1位だった皇太子を突然更迭し、当時は承継順位2位だった自身の息子、ムハンマド副皇太子を皇太子に昇格させた。
ムハンマド皇太子は2016年、イスラム教シーア派のイランとの断交を主導し、17年6月にも同じアラブの国であるカタールとの断交を進めた。皇太子は原油への依存を減らす経済改革にも積極的だが、国内には急進的な手法への不満もくすぶる。
改革の加速に向けて、反対勢力の取り締まりを強化。9月には批判的な聖職者や学者、活動家を大量に拘束した。今後は、反対勢力に近い王族たちが反感を募らせる恐れがある。経済改革では増税や各種補助金の削減など、国民の負担増を強いており、急進的な姿勢は危うさをはらんでいる。