株価は景気に先行する。史上初となる日経平均16連騰は、日本の景気回復を暗示する力強い兆候だ。
企業の倒産がじわりと増えている。東京商工リサーチが発表した数字によると、今年上半期の倒産件数が前年同期を上回った。実に9年ぶり、リーマンショック以来の増加だという。
株価が高くなっているだけで、実体経済は良くなるどころか、悪くなっているではないか――しかし、そう考えるのは早計だ。実は、この倒産件数の増加こそが、強い日本経済が帰ってきたことの証左なのだという。
「数値の内訳を見ると、倒産企業の7割を占めているのが、従業員5人未満の零細企業です。その原因を東京商工リサーチは『人手不足』だと分析しています。
零細企業が人手を満足に確保できないのは、後継者が不在だったり、大手や中堅企業が今後の需要拡大を見越して、零細企業よりも高待遇で人材を囲い込んだりしているからです。
多くの労働者にとってみれば待遇がよくなっているわけで、これは決して悪いことではありません。
零細企業に比べると、大手企業は業務が効率化されています。効率化された職場に多くの人材が集まれば、日本全体の生産性が高まることも期待できます」(百年コンサルティング代表・鈴木貴博氏)
10月に入って、日経平均株価は16営業日連続で上昇し続け、高度経済成長期の'60年以来、57年ぶりの記録を更新した。景気拡大も今年9月で58ヵ月連続となり、「いざなぎ景気」を超えた可能性が高い。
そうは言っても、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日本銀行などが買い支えている「官製相場」で株価が上がっているだけなのではないか、と見る向きも多いだろう。
だが、株式市場にはこんな格言がある。
〈相場は悲観の中で生まれ、懐疑とともに育ち、楽観の中で天井を打ち、幸福感とともに消える〉
まさに現在は、多くの国民が懐疑的に見つめるなかで、スルスルと株価が上がっている段階なのだ。楽観論など萌芽さえ生まれていない。つまり、まだまだ株価は上昇する余地を残している。
日本総研副理事長の湯元健治氏が言う。
「日経平均株価の2万1000円から2万3000円の間は『真空地帯』で、この価格帯で株を売却する機関投資家は少ないと言われています。なので、日経平均株価は2万3000円まで一気に値上がりする可能性を秘めているのです」
現在、日本株を買っているのは、ヘッジファンドなどの外国人投資家が中心だと見られるが、実体の伴わないマネーゲームではない。日本経済の復活を裏付ける予兆はそこかしこに存在する。
湯元氏が続ける。
「今年に入ってから日本経済の回復傾向が鮮明になっています。経済指標を見ても、製造業の活動状況を表す『鉱工業生産指数』の4-6月期は前期比1.9%のプラスで、7-9月期も伸びそうです。
実質経済成長率も4-6月期は2.5%(年率換算)と加速しており、失業率も3%を下回っている。事実上の完全雇用と言える水準です。
なかでも注目が企業業績です。現在は中間決算の発表が始まっていますが、今期の企業業績について、多くの企業が2期連続で過去最高益を更新すると見られています」
では、いったいどのような企業の業績がいいのか。具体的な企業名を挙げるのは、経済ジャーナリストの片山修氏だ。
「たとえば産業用ロボット大手の安川電機は、過去最高の中間決算を発表しました。
同社のロボットは、これからの人口減少社会でさらなる需要が見込まれます。半導体製造装置のディスコも4-9月期決算で過去最高益を記録していますが、今後の半導体需要の拡大を考えるとまだ伸びる。
大和ハウス工業は今期の連結純利益が2100億円と、2期連続で最高益を達成しそうです。同社はハウスメーカーと思われがちですが、実は物流施設や商業施設の建設も行っています。物流業界の発展を考えると、さらに業績が上がっていくでしょう」