慢性的炎症抑えて心筋梗塞を予防 臨床試験で成功
治療は主にコレステロールや血圧を下げる薬が使われていますが、大手製薬会社ノバルティスファーマと東北大学などは、肥満の人などの体内で起きている慢性的な炎症が心筋梗塞の発症に関係している可能性があるという研究に注目しました。
そして、日本を含む世界39か国で慢性炎症のある心筋梗塞の患者およそ1万人に対し、炎症を抑える薬を使って心筋梗塞の再発をどれくらい抑えられるか臨床試験を行いました。その結果、炎症を抑える薬を投与したグループでは再発を24%少なくできたということです。
慢性的な炎症は、体内の過剰な脂などで免疫細胞が活性化されて起き、この炎症で血管が傷つき、血の塊ができるなどして心臓の血管を詰まらせると考えられるということです。
今回の結果は慢性的な炎症を抑えることが心筋梗塞の予防につながることを示した初めての成果とされ、今後、炎症をターゲットにした薬の開発が加速すると見られています。
臨床試験の日本の責任者で東北大学循環器内科の下川宏明教授は「今後、慢性炎症があるかどうかが心筋梗塞の治療の大きなポイントになる可能性がある」と話していました。
解明始まった心筋梗塞のメカニズム
その後の研究で、肥満が原因で起きる慢性的な炎症によって心筋梗塞が引き起こされるメカニズムが解明され始めています。
ハーバード大学のゴーカン教授らによりますと、肥満の人の体内では、脂を大量に蓄積した脂肪細胞が限界まで大きくなると脂などを異物として攻撃するよう警告するメッセージ物質を放出し始めます。
このメッセージ物質は全身に届けられて免疫細胞は活性化し、分裂するなどしてさらに警告メッセージを放出します。
こうして慢性的な炎症が引き起こされます。
活性化した免疫細胞はその後、血管の壁に入り込み、余分な脂を取り込みますが、大きく膨れ上がり、やがて破裂してしまいます。
その際、免疫細胞が持っていた攻撃用の有害物質が放出され血管の壁を傷つけます。
こうした傷によって血管の壁には血の塊ができます。
血管を撮影すると、緑色に見える血の塊は大きくなると血液の流れに乗って移動する様子が写っていて、こうした血の塊が心臓の血管に詰まることで心筋梗塞が起こっていると考えられています。
リウマチ薬投与で臨床試験進める大学も
アメリカのワシントン大学などでは、心筋梗塞の患者7000人に対して関節の炎症で起きるリウマチの薬を投与する臨床試験を進めています。
臨床試験に参加しているブレンダ・オテイさん(51)は16年前の深夜、自宅で寝ている時に心筋梗塞になり救急搬送されました。
当時のことについてブレンダさんは「発作が起きたときは腕の辺りに焼けるような痛みが走り、あごから背中へと広がっていき、とても苦しい思いでした。なんとか呼吸をしようと努力しましたができませんでした」と話していました。
ブレンダさんは緊急手術により一命を取りとめたものの、その後さらに2回にわたり再発を繰り返しました。現在、コレステロールや血圧を抑える通常の薬のほか、臨床試験で渡されている炎症を抑える薬を毎日服用していますが再発の不安は続いています。
ブレンダさんの主治医で臨床試験の責任者の一人であるワシントン大学病院のシュワルツ医師は「心臓病はアメリカだけでなく世界中で深刻な問題になっている。こうした研究を通じて(心筋梗塞のリスクとなる)炎症に効果のある薬剤を見つけ、患者に使うことができれば今よりもさらに病気のリスクを減らすことができるはずだ」と話していました。
慢性的炎症抑えて心筋梗塞を予防 臨床試験で成功
日本人の死亡原因として2番目に多い心臓病の中で多くを占める心筋梗塞の患者に、慢性的な炎症を抑える薬を投与する大規模な臨床試験を大手製薬会社と世界各国の病院などが行ったところ、心筋梗塞の再発を20%余り少なくすることに成功したとする結果を公表しました。慢性的な炎症を抑えることが心筋梗塞の予防につながることを示した初めての成果とされ、今後、治療法を変える可能性があると注目されています。
心筋梗塞はコレステロールや血の塊などで血管が詰まり心臓が働かなくなる病気で、国内では毎年およそ4万人が亡くなるなど、日本人の死亡原因として2番目に多い心臓病の中でも多くを占めています。
治療は主にコレステロールや血圧を下げる薬が使われていますが、大手製薬会社ノバルティスファーマと東北大学などは、肥満の人などの体内で起きている慢性的な炎症が心筋梗塞の発症に関係している可能性があるという研究に注目しました。
そして、日本を含む世界39か国で慢性炎症のある心筋梗塞の患者およそ1万人に対し、炎症を抑える薬を使って心筋梗塞の再発をどれくらい抑えられるか臨床試験を行いました。その結果、炎症を抑える薬を投与したグループでは再発を24%少なくできたということです。
慢性的な炎症は、体内の過剰な脂などで免疫細胞が活性化されて起き、この炎症で血管が傷つき、血の塊ができるなどして心臓の血管を詰まらせると考えられるということです。
今回の結果は慢性的な炎症を抑えることが心筋梗塞の予防につながることを示した初めての成果とされ、今後、炎症をターゲットにした薬の開発が加速すると見られています。
臨床試験の日本の責任者で東北大学循環器内科の下川宏明教授は「今後、慢性炎症があるかどうかが心筋梗塞の治療の大きなポイントになる可能性がある」と話していました。
解明始まった心筋梗塞のメカニズム
その後の研究で、肥満が原因で起きる慢性的な炎症によって心筋梗塞が引き起こされるメカニズムが解明され始めています。
ハーバード大学のゴーカン教授らによりますと、肥満の人の体内では、脂を大量に蓄積した脂肪細胞が限界まで大きくなると脂などを異物として攻撃するよう警告するメッセージ物質を放出し始めます。
このメッセージ物質は全身に届けられて免疫細胞は活性化し、分裂するなどしてさらに警告メッセージを放出します。
こうして慢性的な炎症が引き起こされます。
活性化した免疫細胞はその後、血管の壁に入り込み、余分な脂を取り込みますが、大きく膨れ上がり、やがて破裂してしまいます。
その際、免疫細胞が持っていた攻撃用の有害物質が放出され血管の壁を傷つけます。
こうした傷によって血管の壁には血の塊ができます。
血管を撮影すると、緑色に見える血の塊は大きくなると血液の流れに乗って移動する様子が写っていて、こうした血の塊が心臓の血管に詰まることで心筋梗塞が起こっていると考えられています。
リウマチ薬投与で臨床試験進める大学も
アメリカのワシントン大学などでは、心筋梗塞の患者7000人に対して関節の炎症で起きるリウマチの薬を投与する臨床試験を進めています。
臨床試験に参加しているブレンダ・オテイさん(51)は16年前の深夜、自宅で寝ている時に心筋梗塞になり救急搬送されました。
当時のことについてブレンダさんは「発作が起きたときは腕の辺りに焼けるような痛みが走り、あごから背中へと広がっていき、とても苦しい思いでした。なんとか呼吸をしようと努力しましたができませんでした」と話していました。
ブレンダさんは緊急手術により一命を取りとめたものの、その後さらに2回にわたり再発を繰り返しました。現在、コレステロールや血圧を抑える通常の薬のほか、臨床試験で渡されている炎症を抑える薬を毎日服用していますが再発の不安は続いています。
ブレンダさんの主治医で臨床試験の責任者の一人であるワシントン大学病院のシュワルツ医師は「心臓病はアメリカだけでなく世界中で深刻な問題になっている。こうした研究を通じて(心筋梗塞のリスクとなる)炎症に効果のある薬剤を見つけ、患者に使うことができれば今よりもさらに病気のリスクを減らすことができるはずだ」と話していました。