未来から来たシャワールーム
アパートのはずだった。
仕事から帰って、へとへとでこの階段をのぼる。就職して3年になるけれど、帰宅時間が深夜にならない日はない。
部屋に帰って、寝る前に1杯水を飲む。
洗い物がたまってるけど、明日でいいや。
トイレにも行く。
トイレットペーパー無くなりそうだけど、明日でいいや。
窮屈だった服を脱いで、全裸でふとんに入る。いいやいいや、今日はこのまま寝てしまおう…
すっかり明るくなった日差しで目が覚める。なんか、いつもと違う朝だ。
!?
なんだ、このガラスのボックスは。
昨日まであったっけ?
恐る恐るのぞいてみると、
何やらバルブのようなものがある。
中に入ってみた。
バルブをひねると…
うわー!上から液体が降ってきた!!前が見えない!
うわーーーー!!
バルブを閉めると混乱が止んだ。
扉を開けて転がり出る。
こ、ここは…!?
特徴的な、和室の名残のようなふすま。
いやいや、間違いなく僕の部屋だ。
おなじみの部屋のはずなのに、
よくよく見ると実家みたいなディティールが今日は懐かしく感じる。
自分が出てきたボックスだけ、
どう考えても部屋から浮いている。
…まさか、タイムスリップとかしてないよな。なぜなら、すっきりさっぱり、生まれ変わったような気持ちだからだ。
そうだ、
アパートから出て人に確かめよう。
「すみません、今って西暦何年ですか?」
なんてこった。
時間が巻き戻っている。
そういえば、
「明日でいいや」が口癖になったのはいつからだろう。それが積み重なって、どうしようもなくなって、あの日に戻れたらって思ってた。
あのガラスボックスは、
そんな願いを叶えてくれたのか?
未来の自分にとっての「あの日」が今なら、今度は少しだけ丁寧に今日を過ごしてみよう。