前向きに読み解く経済の裏側

2017年11月4日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 「老後資金が足りないから投資で増やそう」と思う前に、投資元本を増やすことを考えましょう。もちろん、ブランド品の爆買いなどの贅沢は止めるべきですが、そうかと言ってビールを発泡酒に変えるような倹約は、楽しくないですよね。それ以前に考えるべき事柄について、『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、解説します。

サラリーマンは、老後も働こう

 高度成長期、サラリーマンは15歳から55歳まで40年間働き、70歳代で他界するのが普通でした。人生の半分以上は働いていたわけです。人生90年時代、100年時代と言われる今後は、20歳から70歳まで50年間働くことが当然の世の中になるでしょう。個々人にとって、人生の半分は働いていなければ収入と支出のバランスが悪いでしょうから。

(rurquiza/iStock)

 幸い、少子高齢化に伴う労働力不足の時代ですから、高齢者でも元気であれば仕事を見つけることは難しくないでしょう。仕事をして収入を稼ぎ、公的年金の受給開始を70歳まで待ちましょう。そうすれば、毎回の年金受給額が42%増えるので、老後の安心感が格段に増すでしょう。

 ちなみに将来は、年金の支給開始が70歳になるでしょう。年金財政だって、人生100年時代に昔のままで良いはずがありませんから。その意味でも若い人は70歳まで働くことを当然と考えておきたいものです。

サラリーマンの妻も、働こう

 高度成長期には、サラリーマンの妻は専業主婦が普通でした。洗濯機も掃除機もコンビニ弁当もなく、一方で子供の数が多かったので、到底働きに出ることはできなかったからです。農村に親を残して都会に出て来た「金の卵」たちは、都会で結婚・出産しても、親が育児を助けてくれることもなかったでしょう。

 今のサラリーマンの妻は、洗濯機も掃除機もコンビニ弁当もあり、子供の数は少なく、場合によっては近くに住む親が子育てを手伝ってくれるかも知れません。それならば、働かない理由がありません。

 妻が正社員ならば、結婚や出産で退職するのはもったいないです。子育てが終わって仕事に復帰する際には、正社員になる事が難しいので、安い時給で非正規労働者として働くことになってしまいます。その結果、生涯所得が数分の1になってしまうとの試算もあるほどです。

 そうした事態を避けるためには、何としても正社員の地位を死守しましょう。仮に保育園に入れなくても、家事代行サービスや家政婦サービスなどを活用して乗り切りましょう。短期的には、むしろ赤字かも知れませんが、生涯所得を考えれば、一時的な赤字など気にするべきではありません。

103万円の壁などは気にせず、思い切り働こう

 「103万円の壁」という言葉があります。専業主婦のパート収入が103万円を超えると、夫が配偶者控除を受けられなくなるので、年収が103万円を超えない範囲で働く量を調節している専業主婦が多いことを表す言葉です。実際には、「配偶者控除が受けられなくても配偶者特別控除が受けられる」「2018年から103万円が150万円に引き上げられる」といったことがあるのですが、夫の勤務先によっては妻の年収が103万円を超えると配偶者手当が支給されなくなるケースもあるようですね。

 今ひとつ、「130万円の壁」という言葉もあります。これは、サラリーマンの専業主婦の年収が130万円(諸条件によっては106万円の人もいる)以上になると、社会保険料を払うことが必要になるので、年収が130万円に達しない範囲で働く量を調節している専業主婦が多いことを表す言葉です。

 たしかに、年収が103万円や130万円を超えると、手取り収入は減ってしまいますが、思い切って年収200万円くらい働けば、手取り収入も増えますし、妻が老後に厚生年金を受け取れるようになります。女性は平均寿命が長いですから、このメリットは重要です。考えたくはありませんが、離婚や若い時の死別の際には、特に重要でしょう。

 130万円の壁について「社会保険料の負担が増える」という短期的な資金繰の話だけに終始し、年金受給を含めた生涯所得に言及しない専門家が多いのは、残念なことです。

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