(藤吉)お母ちゃんの言うとおりや。
いっそこの家壊して…。
(啄子)ああっ…。
(てん)やめとくれやす!やめとくれやす!わての命はええからこの柱だけは壊さんといて!のけや!お母ちゃん!
(金貸し)待て!待ちなはれ!待ちなはれ!何にもそこまで…。
わてかてそんな人でなしやおまへんがな。
そんな事されたらもうかなわんがな。
分かった。
また来よう。
今日はもうこれで帰るさかい。
むちゃしなはんなや。
ごめん!お母ちゃん大丈夫か?芝居や。
芝居!?ああ。
驚かせてすまんかった。
(ため息)・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」・「ありがとうと言いたいあなたのために」・「ごめんねと言えないあなたのために」・「パレードはまわり続けてる」どうぞ。
どうぞ。
ホンマはあのまんま振り下ろしたかったんちゃうか?え?わての事恨んでるんやろ。
「のれんや家や」言うて昔からあんたの事縛りつけてきた。
そやから…。
俺は…。
ずっとこの家が大嫌いやった。
お母ちゃんの事も嫌いやった。
ちっさい頃から何一つオモロなかった。
みんなでごはん食べても笑顔が一つもない。
姉さんにはいけずされお母ちゃんはのれんや家が一番で俺の事は二の次。
俺が初めて覚えた芸が何か知ってるか?鳥の鳴きまねや。
お父さんの事でつらい顔してるお母ちゃんにわろうてほしいて一所懸命覚えたんや。
回想お母ちゃん見て見て!ホ〜ホケキョ!ホ〜ホケキョ!そやけどわろてくれるどころかくだらん事するなてどなられた。
立派な商人になれそのためにはこれせえあれせえ。
褒められた事なんていっぺんもない。
認めてほしかったんや。
お母ちゃんのためにここで一発当てたろて…あんな勝負したんや。
結局何もでけへんかったけどな。
藤吉郎…。
ホンマにすんませんでした。
藤吉さん?藤吉郎何して…。
もうしまいやいうのはよう分かった。
そやけど最後の一粒まで売ってやらんとこの米が不憫や。
俺が一粒も無駄にせんと売り切ってみせるさかいこれを北村屋最後の仕事としてやらせてくれ。
うちもやらせて下さい。
米や〜米!北村屋の米はいりまへんか!米や〜米!北村屋の米はいりまへんか!北村屋です。
極上のおいしいお米どうか買うてやって下さい。
お願いします!お願いします!味よ〜し香りよ〜し粘りよ〜し!北村屋の米はいりまへんか!味よ〜し!北村屋のおいしいお米店じまいにつきお安うします。
ほんならただ同然か?すんまへん仕入れ値以下には一銭たりともまかりまへん。
それがこの米への精いっぱいの感謝の気持ちです。
辻の物売りがそんな高飛車で通るかいな。
そやけどその心意気買うたるわ。
米びつの分全部や。
へえおおきに!おおきに!なんとかここまで売れました。
あとちょっとどすな。
ああ。
(キース)よっ!おおキース。
あ〜残ったん全部もろてくわ。
え?晦日に払わなアカン長屋の家賃や。
はあ〜今度は家主から逃げんとな〜。
ハハハハハ。
キース…。
おおきに。
ふん。
おいしい。
そやな。
(歌子)どうぞ。
おおきに。
おおきに。
このオチでええやないかい!そやから俺のオチの方がオモロイ言うてんねや。
お前に落語が分かんのかい!分からん。
けど俺の方がええ。
何や?それ。
おいちょっちょっ…どないしたん?今度祝言の宴席でやる「つる」の噺のオチでもめてるんや。
「つる」のオチ?
(キース)ああ。
つるっちゅう名前は首長鳥のオスがつ〜るっと来て後からメスが黙って飛んできたちゅうオチや。
そのホンマのオチでええやないかい。
そんなオチ…。
ええか?オスが飛んできて「月見うどんは〜」。
次にメスが「卵入ってる〜」。
月見うどんの「つ」と入ってるの「る」でつるや。
どや?分かったか。
(落語家)分かるかアホ!何で月見うどん出てくんねや。
月見うどんうまいやないか!何やそれアホ。
おいおいちょっとちょっと…。
そやったらそのホンマのオチの見方を変えたらええんちゃうか?
(2人)え?いやオスの首長鳥がつ〜ると来て後からメスが何も言わんとそっと寄り添うてついてくる。
これぞ夫唱婦随。
お二人に「鶴は千年のご多幸を。
ご結婚おめでとうございます」。
これどうや?
(万丈目)なるほどな。
そらええわ!なあ!ボンええ事言うな。
そ…そうか?私も同じ事思ってたんです。
嘘つけアホ!
(笑い声)何やそれ!
(手拍子)
(拍手と歓声)
(笑い声)あの人の芸が受けてんの初めて見たわ。
アハハハハハハハ!ほんならほんなら俺はこれや!
(藤吉)何や何や!え〜これから花火をご覧に入れましょう。
(拍手)ボ〜ン!サラサラサラサラサラサラ。
ボ〜ン!
(笑い声)何やそれ!見た事ないわ。
(万丈目)続きましては後ろうどんをご覧に入れます。
「後ろうどん」。
よ〜っ!届いてないわ!
(笑い声)届いてない…届いてない…。
・
(足音)お母ちゃん最後の一粒まで売ってまいりました。
そうか。
藤吉さん。
今日はよろしおしたねいろいろ。
おてんちゃん。
今日までありがとうな。
へ?おてんちゃんは里に帰り。
家なし職なし何の取り柄もない男が嫁さんをもらう訳にはいかん。
俺なんかよりもっとええ人を見つけて…。
情けない!何でそないな事言わはるんですか。
あんたさんには商人の才覚はないのかもしれまへん。
そやけど誰にも負けへんものがあるやないですか。
人を笑顔にしたいいう気持ちです。
うちはこの先が泥道やろうが地獄やろうが何があっても藤吉さんについていきます。
そやから…。
うち決めました。
うちがあんさんと結婚してあげます。
そのかわり今度こそ一生笑わせて下さい。
芸がそないに好きやったらいっそそれを商売にしはったらどうですか?え?笑いを商売にするんです。
これが後に日本中に笑顔を届ける事になる二人の笑いの旅路の始まりでした。
2017/11/03(金) 08:00〜08:15
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 わろてんか(29)「笑いを商売に」[解][字][デ]
北村屋を失った傷心の啄子(鈴木京香)のため、藤吉(松坂桃李)は店の米を全部売り切ろうと決心する。てん(葵わかな)は藤吉と一緒に大阪中を回って米を売り歩いた。
詳細情報
番組内容
店を取り上げられまいと必死に抵抗する啄子(鈴木京香)を見て、藤吉(松坂桃李)は捨て身の芝居を打って高利貸しを退散させる。てん(葵わかな)は店にある米を最後の一粒まで売り切ろうと決心した藤吉を助け、大阪の町中を一緒に売り歩く。万丈目(藤井隆)の店でご飯を食べるてんと藤吉は、そこに居合わせたキース(大野拓朗)たち芸人が景気づけに披露してくれた芸を見て、久しぶりに腹の底から笑い幸せを感じた。
出演者
【出演】葵わかな,松坂桃李,徳永えり,大野拓朗,枝元萌,藤井隆,鈴木京香
原作・脚本
【作】吉田智子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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