これまで挙げてきたリアルタイムで読んだ本とは別に、僕は昔から古本コレクターで、古本屋で見つけた本もたくさん読んできました。
タレント本を死ぬほど集めていた時期に読んだのが『ざまァみやがれ!』です。以前から面白いとは聞いていたけど予想以上でした。いろんな人に悪影響を与える本ですよ、これ(笑)。青島幸男さんが若い人に向かってひたすらアジりまくっていて、常識なんか無視して生きろと怒鳴っている。復刊して欲しい本の一つです。
漫画家のジョージ秋山先生は昔から大好きだったので、岡山の古本屋で『ばらの坂道』('75年発行の旧版)が全巻並んでいるのを見つけた時は震えました。内容もぶっ飛んでいて、読んでさらに震えることに。
精神に異常をきたしている母親を持つ少年が主人公で、これでもかというくらい、不幸が襲いかかるんです。狂気を描く画の表現もトラウマになるくらい凄まじく、ラストの突き放しかたも凄い。
漫画家だと藤子・F・不二雄先生も大好きで、古本屋で買い漁っていました。特に晩年の作品である『未来の想い出』には、意外ですが『ドラえもん』のような子ども向けの漫画を主に描いてきた苦悩、人生をやり直したい気持ちなど根深いダークサイドが表現されている。いくらでも深読みできる作品なんです。
(取材・文/砂田明子)
▼最近読んだ一冊
第1位『極楽TV』
景山民夫著 新潮文庫 入手は古書のみ
テレビを愛するがゆえの毒舌が冴えわたる景山エッセイの神髄。タモリ、たけし、高田文夫らとの対談を巻末に収録
第2位『おたくの本 別冊宝島104』
JICC出版局 入手は古書のみ
おたくを知らずして'80~'90年代は語れない。パソコン、カメラ、ゲーム、アイドル他、おたく文化の源流と生態を探る
第3位『贖罪のアナグラム 宮崎勤の世界』
蜂巣敦著 東京デカド社 入手は古書のみ
宮崎勤の文書に隠された意味を解読する試みなど、事件を多角的に捉えた記録。「醜い報道も含めて記録されている」
第4位『猪木とは何か? キラー編 紙のプロレス公式読本』
芸文社 入手は古書のみ
金、政治、女性問題などスキャンダルまみれだったアントニオ猪木を論じる異色の読本
第5位『梶原一騎伝 夕やけを見ていた男』
斎藤貴男著 文春文庫 743円
『巨人の星』『あしたのジョー』、天才漫画原作者の実像。「作品以上のとんでもない人生」
第6位『ざまァみやがれ! デッカイ気分になる本』
青島幸男著 青春出版社 入手は古書のみ
「'60~'70年代はアナーキーなタレント本が多かった。政治にも踏み込んでいて驚く」
第7位『ばらの坂道』(上・下)
ジョージ秋山著 青林工藝舎 各1500円
少年・土門健に襲いかかる苦悩の連続。光はあるのか。巻末に著者インタビューを収録
第8位『未来の想い出』(『藤子・F・不二雄大全集 中年スーパーマン左江内氏/未来の想い出』に収録)
藤子・F・不二雄著 小学館 1500円
人生に後悔している漫画家が、記憶を保って人生をやり直す。「僕はA先生より、F先生派」
第9位『クーの世界』全2巻(『夢の空地』)
小田ひで次著 講談社 各505円(『クーの世界』/『夢の空地』は続編)
「漫画とは思えないほどの描き込みも、哲学的なテーマも好き。もっと読まれてほしい」
第10位『ぼくらの』全11巻
鬼頭莫宏著 小学館 各562円
巨大ロボットを操り、地球のために戦う少年少女。「残酷かつあっけない死の描き方が好き」
『週刊現代』2017年11月11日号より