世の中のありとあらゆる「成功ルール」を検証した全米ベストセラー『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』が日本上陸。
あなたがこのままではダメになる理由とこれからうまくいく方法が最新のエビデンスつきでぜんぶ盛り込まれている。
自己啓発を科学すると見えてくるものとは? ビジネス・自己啓発ジャンルの書籍を初めて監訳した作家・橘玲氏の解説を特別公開!
本書の著者エリック・バーカーは、大学を卒業してハリウッドで脚本の仕事をしたあと、2009年から個人ホームページの運営をはじめた。最初はインターネットの伝道師(グル)たちのインタビュー動画を載せていたが、やがて自分でブログを書くようになる。
それがBarking up the wrong tree(間違った木に向かって吠える)で、いまや30万人の登録者をもち、『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』などでも紹介される人気ブロガーだ。
ブログは毎週一回の配信で、「悲劇から立ち直る方法」とか、「影響されやすさを止める方法」などのエントリーが並んでいる。
これだけならよくあるまとめサイトと同じだが、バーカーのブログの特徴は、そのあとにかならず「4 Secrets From Research(リサーチからわかった4つの秘密)」のような追記がついていることだ。
バーカーは、ブログのすべての主張に、それがどのようなエビデンス(証拠)にもとづいているかのリンクを貼っている。このちょっとした工夫(コロンブスのタマゴ)によって、うさんくさいものの代表だった自己啓発に"科学"をもちこんだのだ――。
と書いてはいるものの、じつは飛鳥新社の矢島和郎さんがやってくるまで、こんなブログがあることをまったく知らなかった。
矢島さんと会ったのは昨年の夏で、翻訳権を取得したもののまだ一行も書かれていない本の「監訳」をやってくれないか、という話だった。
わたしはプロの翻訳者ではないし、そもそも翻訳書(それも超訳)が一冊あるだけだから、通常はこうした依頼はお断りするのだが、ブログを読んでみるとものすごく面白い。
それで、まだ影も形もないバーカーのはじめての著作の翻訳出版をお手伝いすることになった。
ようやく原稿が書きあがったのは今年2月で、アメリカでは5月に発売され、たちまちベストセラーリストに名を連ねた。アマゾンでは266のレビューのうち89%が5つ星という圧倒的に高い評価を得ている(2017年9月現在)。
その話題作を、ようやく日本の読者にもお届けできることになった。
本書はものすごくわかりやすく書かれているから、内容についての解説は不要だろう。
そこでここでは、「成功法則をエビデンスベースで検証する」という試みの背景についてすこし書いてみたい。
ダーウィンが『種の起源』を発表したのは1859年だが、「現代の進化論」はそれか
ら100年後、ワトソンとクリックがDNAの二重螺旋の謎を解いた1953年が画期になる。
二人は生命の本質がデジタルなアルゴリズムだということを明らかにしたが、だとすれば、いったいだれがそのプログラムを書いたのか?
それは「進化」だ。