ファンの一部から「ガンタンク」と呼ばれる【87式自走高射機関砲】略称:87AW 愛称:スカイシューター(陸上自衛隊HPより引用)
あなたは連邦派? それともジオン派? 往年のガンダムファンにとって、「陸上自衛隊にモビルスーツ(以下、MS)が配属されている」と聞けば、さぞ心が躍ることだろう。実は10年前、防衛省は当時進めていた『先進個人装備システム』のことを“ガンダムの実現に向けて”と銘打って取り組んでいた。あれから10年、東アジアの国際問題がきな臭くなる中、果たして新MS開発の進捗具合はどうなっているのか、防衛省の担当者に聞いた。
攻撃ヘリを圧倒!「ガンタンク」にそっくりな自衛隊装備
自衛隊の中で、非公式の愛称ながら「ガンタンク」と呼ばれる装備がある。それは『87式自走高射機関砲』。防衛省での略称は「87AW」、広報向け愛称を「スカイシューター」としている本機関砲は、捜索・追随レーダーと射撃統制装置が連動することで敵の攻撃ヘリを効果的に撃墜する陸自が誇る対空火器。炸裂弾を使用しており、その攻撃力は堅い装甲を誇る空対地ヘリもひとたまりもない。高価な兵器で日本国内にわずか52両というレア感と相まって、ファンからの人気が高い装甲戦闘車両だ。そのルックスが人気アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するMSに似ていることから、ファンの間で「ガンタンク」とも呼ばれている。元陸自隊員のライター・井上晋太郎氏は、「当時最新だった87式自走高射機関砲は実際に目にしたことはありませんが、こうして見ると『機動戦士Zガンダム』に登場する『ガンタンク2』に似ていますね(笑)。私は首都圏の普通科連隊(歩兵)に所属していたのですが、偵察隊や戦車大隊の機甲科には憧れていました」と、骨太な戦闘車両は“男の浪漫”を刺激すると力説する。
「ガンダム開発」計画は次の段階に突入
防衛省では以前、“ガンダムの実現に向けて”と銘打った企画が進行していた。ガンタンクの次はガンダム? それは聞き捨てならないということで、防衛省の担当者に『ガンダム開発』計画について話を聞くと、当時、旧技術研究本部が主催した『防衛技術シンポジウム2007』において同コピーが記載されていたようだ。担当者は「このシンポジウムは、防衛省が行う研究開発活動において国民の皆様にご理解いただけることを期待し、旧技術研究本部技術企画部が企画し、各研究所等から発表を行っていました。現在は『防衛装備庁技術シンポジウム』と名称を改めていますが、今に至るまで毎年開催しています。従来から本シンポジウムにおいては国民の皆様に親しみを抱いていただけるよう、わかりやすいキャッチコピーを使用するなどの様々な工夫を行っています」とのこと。
つまり「ガンダムを開発する」と防衛省が発表したわけではなく、最新技術を国民にわかりやすく伝えるため、“ガンダム”を例えに出したということが真相だ。前出の井上氏は「当時想定された『先進個人装備シテム』は、装着する隊員が使い易く、防護力・攻撃力が高まるシステムであり、隊員の任務遂行能力向上を目的としたもの」と説明。では、その計画は今どうなっているのだろうか。
防衛省担当者は「『先進個人装備システムの研究』は一定の成果を得て事業を終了。他方、隊員の任務遂行能力向上という目的の技術研究としては、現在は、隊員の機動力を高めたり、不整地でバランスを崩さずに任務を遂行したり、大きな力を出すことを目指した『パワードスーツ』関連の研究に軸足を移している」と、計画は次のフェーズに移ったと語る。
『パワードスーツ』研究の進展次第では巨大ロボットが誕生!?
男性にとって人型の巨大ロボットは永遠の夢。だが防衛装備庁は「隊員の代替となるような人型ロボットの研究については現在実施していない」とのこと。一方で、防衛省担当者が言うように、パワードスーツ関連の研究にシフトしている点は見逃せない。
その点について井上氏は「ガンダムをはじめ、様々なSF作品に影響を与えた、ロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』(1959年)というSF小説があります。この作品内で歩兵が着用する『強化防護服=パワードスーツ』が登場し、これこそMSの“原案”とも呼ばれているんです」と説明。だからこそ、パワードスーツ研究が進めば、いずれはガンダムのような巨大ロボットが誕生する可能性も!? とSFファンの夢は募る。「効率化などで考えれば自律の無人機などが現在の兵器開発の主流です。でも、やはり搭乗型の人型ロボットに憧れてしまうのが、“男の浪漫”ではないでしょうか」(井上氏)
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