ある日・・・
わが社にラフな格好をした
二人組の女性がやってきました。
「どのようなご用件でしょうか?」
総務が対応すると・・・
「〇〇〇が欲しいんですけど!」
と二人組の女性は言うのです。
これは・・・
無理な話です。
『〇〇〇』は当時人気だった、
最新機器の事です。
わが社のような弱小代理店には、
ほんの十数台しか配布されませんでした。
この貴重な十数台の最新機器は、
営業マンにそれぞれ割り当てられ・・
大きな契約やクレーム処理等に、
交渉材料として使われました。
やはり人気商品なだけに、
それなりの効果はあったようです。
だから見知らぬ女性には渡せない!
この二人の女性に対して・・・・・
総務は言います。
「あいにく在庫がありませんので・・」
しかし二人の女性は引きません。
「でも社長ちゃんはあるって言ったよ?!」
「私達は社長ちゃんの友達!」
総務も相当イライラしたそうですが・・
結局、社長にお伺いを立てると、
「くれてやれ!」
の一言だったそうです。
わが社では、
社長(神)の言葉は絶対です。
こうして貴重な最新機種〇〇は・・・・
この二人の女性の元へ旅立ったのです。
この一件は・・・・
スグに会社中に広まりました。
口に出す者は少ないですが・・・・
特に営業マンの間では、
社長に対する不平不満が高まりました。
みんなそれぞれ・・・・・
〇〇〇の在庫があれば、とれた契約。
収められたクレームがあったからです。
そんなある日・・・・・・・
出先で部長からこんな電話が入りました。
「お前に〇〇〇をくれる!って言われた、
そう言ってるお客さんが来てるんだけど?」
(私が〇〇〇をあげる?何の話だ!?)
全く身に覚えがありません。
「オマエ何したかわかってんのか?」
そう言う部長の声は怒りに震えています。
(早く帰らないと殺される・・・・)
急いで会社に戻ると・・・・・
「そう言ってるのはあの二人だぞ!」
と先輩に指で教えてもらいました。
しかし・・
その姿を見ても記憶にありません。
身なりのしっかりしたご婦人と、
高校生くらいの少年。
(一体誰だ・・?)
営業部の面々は私に怒りの眼差しを向けます。
(何を勝手な約束をしてるんだ!?)と
「全く面識ありません!」
そう伝えても不審な目で見られます。
みんな吐き出せない社長への怒りまで、
私にぶつけるつもりのようでした。
これは仕方ない・・・・
私は身の潔白を証明する為に、
ご婦人と少年に話しかけました。
「はじめまして!」
そう言って名刺を差し出して・・
私はみんなに聞こえる声で・・
ストレートにご婦人に質問しました。
「失礼ですがお会いするのは、
これが初めてですよね?」
ご婦人は笑顔で答えました。
「ええ!はじめてですよ~」
(おおっ!やはり!)
これで話は終わりだ!
〇〇〇を渡す必要は無い!
・・・そう思いました。
しかしご婦人はさらに笑顔で言います。
「うちの受付に言ったそうじゃないですか?
〇〇〇を差し上げます!って?」
(そんな話・・知らない・・・)
くわしく話を聞くと・・・・
ご婦人は近所の個人病院の奥様。
私がご近所回りに名刺を配った時に、
「〇〇〇を差し上げます!」
病院の受付けさんに対してそう言った!
と、ご婦人は言うのです。
(そんな事を言うワケが無い・・・)
そもそも私がご近所を回ったのは、
数か月も前の話なのです・・・・
奥様の話は、
まったくのデタラメです。
部長に判断を仰ぐと・・・
「ご近所だし揉めるのはよくない!」
そう言うので・・・・
しぶしぶ〇〇〇を2台渡しました。
ゴネ得。
社会人になってから、
こういう出来事が何度もありました。
ゴネられてゴネられて・・・・
結局、最後に私達が折れて損をする。
結局いつでも得をするのは・・
厚顔無恥で声の大きい人達です。
「ああいう人はどこかで損をするよ」
その時は部長にそう言われましたが・・・
未だにどうもピンッときません。
学校などで教わってきた道徳っていうのは、
得をしたい誰かが作った、
損をする人を作り出す仕組みなんでしょうか?
なーんて・・・
そんな風にすら思えてしまいます。
ちゃんちゃん