毎年この時期は、幼稚園の入園に関する話題をたくさん見聞きします。
3年前の今ごろ、私もアンテナを立てて、入園に備えて少しずつ準備を始めていました。
現在息子は8歳。
幼稚園へは行きましたが、夏休み前に辞めることになりました。
子どもの気質や特性が集団生活に合わなければ、子どもは様々なかたちでSOSを発します。
息子は見た目にはわからなくても、生まれ持った繊細さや感受性の豊かさ鋭さ、敏感さが人一倍。
こういう気質の子のことを、HSC(Highly Sensitive Child)=人一倍敏感な子と言います。
HSCは一般に、集団に合わせることよりも、自分のペースで思案・行動することを好みます。これはその子の独自性が阻まれることを嫌がるほどの「強い個性」とも捉えられるのです。
また、HSCは些細な刺激を察知し、過剰に刺激を受けやすいせいもあって、家や慣れている人や場所では絶好調でも、新しい人や場所、人混みや騒がしい場所が極端に苦手なのです。
そのことで、ママである私はいつも葛藤を抱えていました。
幼稚園や学校は誰もが行かなければならない場所。
当時はそう認識していました。
普通は、どんなに繊細な子でもいつかは環境に慣れ、自分なりの居場所や友だち、モチベーションを見つけて学校生活を送るようになる。子どもはその力を持っていると考えます。
ですが、私たちはセラピスト(精神科医)と心理カウンセラーの夫婦。
誰にもわかってもらえずひとりで辛さや絶望感を抱えた子ども、その息切れで学校へ行かなくなった子ども、そのような過去を抱えたまま生きることに悩む方々の心の叫びを受け止めてきたから、決してすべての人間が同じように適応するわけではないことを知っていたのです。
それでも子どもが幼稚園や学校に拒否反応が起こる、遅れをとるという現実は受け入れ難く、何とか集団にうまく居場所を見つけてくれるよう、親は一生懸命励まし支えながら、平日・日中の子どもの居場所が幼稚園や学校にあることを示します。
私もそうでした。
しかし、親がどんなに望んでも、息子の場合は魂のレベルで「違う」と訴えていることを受け止めざるを得ませんでした。
果たして、子どもの居場所は本当に幼稚園や学校だけなのか?
何を求め、何を選び、どう生きようとするのか。
突きつけられる様々な問いに家族で向き合いながら過ごしてきたこれまでのことを少しづつ綴っていくことにしました。
息子と私たち親の、入園前から入園式、園生活の物語は、普通はあり得ないようなことばかりだと思います。
その物語には、息子、ママ、パパ、それぞれの体験、感情、葛藤、喜び、選択、意志、決断、成長があります。
こういう人がいる。
こういう選択がある。
こういう生き方がある。
もしそれが、誰かが迷い悩んだ時、その方にとってのヒントや勇気になるとしたら、とても有難いことです。
個人や団体が特定されるのはよくないので、名称や数字、エピソードをはじめ、事実と異なる部分も多くなると思いますので、『実話をもとにした、ノンフィクションに近いフィクション』というスタイルで書かせていただきます。
(*これまでクマノミくんだった息子の名前をここでは「たける」に変えています。)
もうすぐ幼稚園
私たちが住んでいる沖縄県の公立幼稚園の多くは、小学校に隣接するかたちで同じ敷地内に建っていて、校長先生が園長先生を兼任されています。
ちょうどアメリカのキンダーガーテン(Kindergarten)のようです。
アメリカのキンダーガーテンは、小学校に付属している公立校が多いのが特徴で、小学校にあがる前の準備期間として、2年間くらいをキンダーガーテンで過ごし、集団生活のルールなどを学ぶのです。
集団行動に慣れるためにみんなで遊んだり、簡単な読み書きを習ったり、本を読んでもらったりなどの活動は、日本の幼稚園と同じで、プレスクールともいいます。
沖縄の公立幼稚園がそうであることは、子どもが誕生する以前から知っていました。
そして、私たちが住む地域の幼稚園は2年保育でも3年保育でもなく、1年保育であることも。
そのため保育園に通う子も多いですし、離れてはいるけれど隣の市にある私立幼稚園で2年か3年保育を受ける子もいます。
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3年前の夏
息子は水が顔にかかるのも苦手。人前で裸になって着替えるのも恥ずかしいから嫌。
それ以外にもところどころで超がつく敏感さや繊細さを見せます。
一般にHSCは、小さいことを気にして嫌がったり、おどおどしたり、他の子どもは問題なくできることを怖がったりするため、HSCの敏感さについての理解がなければ親にとってHSCは「育てにくい子」に感じられます。
きっと、夫の存在がなければ、私は息子の敏感さや繊細さを問題だと否定的に捉え、何でも克服させて早く自信をつけさせよう、自立させようと躍起になっていたに違いないと思っています。
遅れをとること、負けること、適応できないことに、無意識の恐れがあったから。
「たけるくんもプールで一緒に遊んだらいいのに」
「プールより室内が良いんですって」
「たけるくん、幼稚園は緑ヶ丘?」
「はい、一応校区なので。そちらは朝日台ですよね?」
「そうそう。緑ヶ丘って人数少ないんじゃない?」
「少ないでしょうね、小学校もひと学年10人満たないとか」
「すみません、ちょっと行ってきます」
幼稚園かぁ、小人数と大人数、どっちがいいのかなぁ。
そもそも選べるのかなぁ。
「たける、見てみて、あれ朝日台幼稚園だよ。こうたくんは来年あそこに行くんだって」
「いっぱいいるね。みんな楽しそうだね」
「こっちは?」
「大きい建物は小学校。静かだね」
「ふ~ん」
「たける5歳でしょ?本当は5歳ってほとんど幼稚園に行ってるけど、ここはちょっと変わってて6歳になる年に1年だけ行くようになってるんだ。だからたけるも来年幼稚園生になるの」
「知ってるよ。ゆうちゃん幼稚園行ってる」
「そうだね。どっちがいいのかなぁ」
「ん?」
「人数がたくさんなのと少ないの」
「うーん・・・少ない方かなぁ」
「今度見学させてもらおうか」
「うん」
こうして、夏休みが明けてまもない幼稚園へ、息子とふたり、見学に行ってみることを決めました。
次回につづく・・・