【ロヒンギャ危機】スーチー氏、揺れるラカイン州を訪問
ミャンマーの実質的指導者アウンサンスーチー氏は2日 、今年8月下旬にラカイン州で武力衝突が発生して以来初めて、同州を訪問した。
事前に公表されていなかった日帰り訪問で、スーチー氏は州都シットウェなどを訪れた。
スーチー氏は、ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャへの民族浄化が疑われる中、軍事弾圧を止めなかったとして、世界中から非難されている。
8月25日以来、約60万人のロヒンギャが隣国のバングラデシュに逃れている。
ラカイン州での今回の混乱は、州全土の警察署がロヒンギャ武装勢力に襲撃され、多数の死者を出したことがきっかけだった。襲撃は、新興武装集団「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)によるものだと言われている。
軍部によるその後の弾圧では多数の死者が出た。また、村が焼かれ、ロヒンギャが追い出されていると言われている。
ミャンマー軍は、軍の作戦の狙いは過激派の根絶にあると主張し、民間人を狙ったものではないと繰り返し否定している。しかし目撃者や避難者、報道陣はこれに異を唱えている。
ミャンマー政府のザウ・ハティ報道官 は2日、AFP通信に対し、スーチー氏が「現在シットウェにおり、マウンドー やブティーダウン にも行く予定」だと語った。
「日帰りでの訪問だ」とも加えた。
スーチー氏が、ロヒンギャの村を訪れるかは明らかにされなかった。
ロイター通信は、2日朝にシットウェで軍用ヘリに乗り込むスーチー氏を同社の記者が見たと伝えた。スーチー氏は20人ほどを引き連れていたという。
スーチー氏は先ごろ、ラカイン州の衝突を収め、同州にさらなる発展をもたらすための新たな施策の概要を明らかにした。
地元の経済団体や外国の援助組織と連携の上、民政で施策に取り組むと説明した。
ただしBBCのジョナサン・ヘッド記者によると、衝突発生地域ではいまだに国際支援機関の立ち入りが許されていない場所が一部ある。
ヘッド記者はさらに、ロヒンギャ難民のミャンマー送還について、バングラデシュ政府とはまだ何も取り決めがなされていないと加えた。
アウンサンスーチー氏は9月 、重要な演説の中で権利の乱用を非難したものの、軍を責めたり、民族浄化の主張に触れたりはしなかった。
仏教徒が多数を占めるラカイン州で少数派のロヒンギャは、大多数がイスラム教徒。独自の国家を持たないロヒンギャは長年、彼らを不法移民だと考えるミャンマー当局の迫害の対象になってきた。
9月にはバングラデシュ政府が、ロヒンギャの移動制限方針を発表。政府が割り当てた固定の場所にロヒンギャは留まらなければならず、他に移動してはならないと定めた。
政府はさらに、コックス・バザール市の近くに最大40万人収容可能な避難所を建設するつもりだと明らかにした 。
(英語記事 Rohingya crisis: Myanmar's Suu Kyi visits troubled Rakhine)