25人搬送 過換気症候群の連鎖か

25人搬送 過換気症候群の連鎖か
それは合唱練習を始めてしばらくした時のことでした。
1日、岡山市の小学校で、音楽会に向けた練習中、息苦しさを訴えて倒れる子どもが相次いだのです。病院に搬送されたのは25人。ネット上では「何があったのだろう」「不思議だ」という声があがっています。いったい何が起きたのか。「それは過換気症候群ではないか?」専門家が聞き慣れない症状の可能性を指摘しました。
(ネットワーク報道部記者 佐藤滋 宮脇麻樹 野田綾)
岡山市南区の福田小学校の4時間目の授業でした。6年生の児童およそ110人が体育館に集まり10日後に控えた音楽発表会に向けて、合唱の練習を始めていました。消防によると5分ほど経った頃、気分が悪いと訴える男の子が出ました。学校によるとこの時、けいれんのように激しく体が震え、動かせないような状態でした。

学校は午後0時54分、消防に連絡を入れます。その間にも体育館では「呼吸がしずらい」「息が苦しい」と具合の悪さを訴える子どもが相次ぎます。救急車など消防の車が次々と校庭に入り、病院に運ばれた子どもは25人にのぼりました。

岡山市の小学校 午後0時54分

岡山市南区の福田小学校の4時間目の授業でした。6年生の児童およそ110人が体育館に集まり10日後に控えた音楽発表会に向けて、合唱の練習を始めていました。消防によると5分ほど経った頃、気分が悪いと訴える男の子が出ました。学校によるとこの時、けいれんのように激しく体が震え、動かせないような状態でした。

学校は午後0時54分、消防に連絡を入れます。その間にも体育館では「呼吸がしずらい」「息が苦しい」と具合の悪さを訴える子どもが相次ぎます。救急車など消防の車が次々と校庭に入り、病院に運ばれた子どもは25人にのぼりました。

証言1 “呼吸が速い”

その時の状況を1日のインタビューから振り返ってみます。
岡山市消防局の林郁夫担当課長「子どもたちは手足のしびれや呼吸が速いといった症状が見られた。5人は自分で歩けない状態だった」

証言2 “1人が倒れさらに周りも”

搬送された6年生の男の子「1人が急に倒れて、さらにほかの人が倒れた。それを見ていた自分も気持ち悪くなり、手足がしびれてきて怖かった。衣がえで上着も着ていたし、体育館はとても暑かった」

同じようなケースは過去にも

学校で生徒が息苦しさを訴え相次いで搬送されるケースは過去にも起きています。10月27日には千葉県鎌ケ谷市の道野辺小学校で4年生の児童が掃除中に相次いで息苦しさを訴え14人が病院で手当を受けました。1人の児童がほこりを吸い気分が悪くなったあと、同じクラスの生徒が次々と息苦しさを訴えたのです。

7年前には、大阪市東淀川区の瑞光中学校で、吹奏楽部で練習をしていた生徒7人が、やはり息苦しさなどを訴え病院に搬送されています。岡山、千葉、大阪、いずれのケースでも子どもたちの症状は治まり、ほとんどが軽傷でした。

過換気症候群の連鎖ではないか?

岡山市の小学校で起きた状況について「過換気症候群の連鎖の可能性がある」と指摘する医師がいます。呼吸器が専門で東京・豊島区でクリニックを開く大谷義夫医師です。

「過換気症候群は興奮状態となった時、交感神経が活発になり、呼吸の回数が通常よりも多くなる症状」「通常、1分間に15回程度の呼吸の数が30回から40回、場合によっては60回になってしまう過呼吸の状態。それによって手足のしびれやけいれん、時には失神したり周りに連鎖したりすることもある」

パニックでさらに過呼吸

岡山市の小学校では、100人を超える児童が集中力が必要な「合唱」に取り組んでいて、高い興奮状態にあったと想定されます。興奮状態にあった子どもの1人が、過換気症候群を起こして倒れると、それをきっかけに、いわば“パニック状態”に陥り周りの子どもたちの興奮はさらに高まります。すると呼吸も一層速くなって過換気症候群を起こす…。そうしたことが連鎖的におきた可能性が、状況からありえると大谷医師は話していました。理由ははっきりしないものの子どもや若い女性が過換気症候群の連鎖を起こすケースが多いそうです。

対策はゆっくり“吐く”

では「過換気症候群」が起きたとき、どう対処すればいいのか。
大谷医師が強調したのが「ゆっくり息を吐くこと」です。通常、「吸う」時間と「吐く」時間の割合はだいたい1対2で吐く時間が長くなっています。

ところが、過換気=過呼吸の時はほぼ「1対1」という状態になってしまいます。そこでしっかり、ゆっくり、息を吐くことによって、深く吸うことができ、呼吸を整えられるのです。

やり方としてすすめているのが「口すぼめ呼吸」。口をすぼめることでゆっくりと長く息を吐くことが自然とでき、そのあと落ち着いて息を吸い込むこともできるそうです。

紙袋はダメ

もう1つ大谷医師が強調していたことがあります。それが「過換気症候群に紙袋を使ってはダメ」ということ。「過換気症候群になったら紙袋を口に当てた状態で呼吸をさせる」という方法が広まっているそうですが大谷さんは危険性が高いといいます。

呼吸が困難な原因が心臓や肺の病気にあると、紙袋を当てる方法では酸素が足りなくなり、死に至るケースも実際にあったそうです。「過換気症候群は誰にでも起こりえます。まず慌てず冷静に、救急車を呼び、『名前は何』といった言葉をかけて冷静にさせゆっくり息を吐かせるようにしてください」と話していました。

過換気症候群はライブでも

先月、児童14人が運ばれた千葉県の道野辺小学校では「体調が悪い子どもがいたら別の部屋で休ませ、ほかの子どもを動揺させない」など連鎖を防ぐ対応を決めました。過換気症候群は学校内だけでなくライブの会場でも起きることがあります。

「もしもの時は口をすぼめてゆっくり吐く」私たちも忘れないでおきます。
25人搬送 過換気症候群の連鎖か

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それは合唱練習を始めてしばらくした時のことでした。
1日、岡山市の小学校で、音楽会に向けた練習中、息苦しさを訴えて倒れる子どもが相次いだのです。病院に搬送されたのは25人。ネット上では「何があったのだろう」「不思議だ」という声があがっています。いったい何が起きたのか。「それは過換気症候群ではないか?」専門家が聞き慣れない症状の可能性を指摘しました。
(ネットワーク報道部記者 佐藤滋 宮脇麻樹 野田綾)

岡山市の小学校 午後0時54分

岡山市の小学校 午後0時54分
岡山市南区の福田小学校の4時間目の授業でした。6年生の児童およそ110人が体育館に集まり10日後に控えた音楽発表会に向けて、合唱の練習を始めていました。消防によると5分ほど経った頃、気分が悪いと訴える男の子が出ました。学校によるとこの時、けいれんのように激しく体が震え、動かせないような状態でした。

学校は午後0時54分、消防に連絡を入れます。その間にも体育館では「呼吸がしずらい」「息が苦しい」と具合の悪さを訴える子どもが相次ぎます。救急車など消防の車が次々と校庭に入り、病院に運ばれた子どもは25人にのぼりました。

証言1 “呼吸が速い”

証言1 “呼吸が速い”
その時の状況を1日のインタビューから振り返ってみます。
岡山市消防局の林郁夫担当課長「子どもたちは手足のしびれや呼吸が速いといった症状が見られた。5人は自分で歩けない状態だった」

証言2 “1人が倒れさらに周りも”

証言2 “1人が倒れさらに周りも”
搬送された6年生の男の子「1人が急に倒れて、さらにほかの人が倒れた。それを見ていた自分も気持ち悪くなり、手足がしびれてきて怖かった。衣がえで上着も着ていたし、体育館はとても暑かった」

同じようなケースは過去にも

同じようなケースは過去にも
学校で生徒が息苦しさを訴え相次いで搬送されるケースは過去にも起きています。10月27日には千葉県鎌ケ谷市の道野辺小学校で4年生の児童が掃除中に相次いで息苦しさを訴え14人が病院で手当を受けました。1人の児童がほこりを吸い気分が悪くなったあと、同じクラスの生徒が次々と息苦しさを訴えたのです。

7年前には、大阪市東淀川区の瑞光中学校で、吹奏楽部で練習をしていた生徒7人が、やはり息苦しさなどを訴え病院に搬送されています。岡山、千葉、大阪、いずれのケースでも子どもたちの症状は治まり、ほとんどが軽傷でした。

過換気症候群の連鎖ではないか?

過換気症候群の連鎖ではないか?
岡山市の小学校で起きた状況について「過換気症候群の連鎖の可能性がある」と指摘する医師がいます。呼吸器が専門で東京・豊島区でクリニックを開く大谷義夫医師です。

「過換気症候群は興奮状態となった時、交感神経が活発になり、呼吸の回数が通常よりも多くなる症状」「通常、1分間に15回程度の呼吸の数が30回から40回、場合によっては60回になってしまう過呼吸の状態。それによって手足のしびれやけいれん、時には失神したり周りに連鎖したりすることもある」

パニックでさらに過呼吸

岡山市の小学校では、100人を超える児童が集中力が必要な「合唱」に取り組んでいて、高い興奮状態にあったと想定されます。興奮状態にあった子どもの1人が、過換気症候群を起こして倒れると、それをきっかけに、いわば“パニック状態”に陥り周りの子どもたちの興奮はさらに高まります。すると呼吸も一層速くなって過換気症候群を起こす…。そうしたことが連鎖的におきた可能性が、状況からありえると大谷医師は話していました。理由ははっきりしないものの子どもや若い女性が過換気症候群の連鎖を起こすケースが多いそうです。

対策はゆっくり“吐く”

では「過換気症候群」が起きたとき、どう対処すればいいのか。
大谷医師が強調したのが「ゆっくり息を吐くこと」です。通常、「吸う」時間と「吐く」時間の割合はだいたい1対2で吐く時間が長くなっています。

ところが、過換気=過呼吸の時はほぼ「1対1」という状態になってしまいます。そこでしっかり、ゆっくり、息を吐くことによって、深く吸うことができ、呼吸を整えられるのです。

やり方としてすすめているのが「口すぼめ呼吸」。口をすぼめることでゆっくりと長く息を吐くことが自然とでき、そのあと落ち着いて息を吸い込むこともできるそうです。

紙袋はダメ

もう1つ大谷医師が強調していたことがあります。それが「過換気症候群に紙袋を使ってはダメ」ということ。「過換気症候群になったら紙袋を口に当てた状態で呼吸をさせる」という方法が広まっているそうですが大谷さんは危険性が高いといいます。

呼吸が困難な原因が心臓や肺の病気にあると、紙袋を当てる方法では酸素が足りなくなり、死に至るケースも実際にあったそうです。「過換気症候群は誰にでも起こりえます。まず慌てず冷静に、救急車を呼び、『名前は何』といった言葉をかけて冷静にさせゆっくり息を吐かせるようにしてください」と話していました。

過換気症候群はライブでも

先月、児童14人が運ばれた千葉県の道野辺小学校では「体調が悪い子どもがいたら別の部屋で休ませ、ほかの子どもを動揺させない」など連鎖を防ぐ対応を決めました。過換気症候群は学校内だけでなくライブの会場でも起きることがあります。

「もしもの時は口をすぼめてゆっくり吐く」私たちも忘れないでおきます。