これまでスタートアップ役員・従業員の給与について記事をまとめてきました。
スタートアップ従業員の平均給与はいくら貰えるのか?と直近上場スタートアップの平均年収ランキング上位10社
今回は中でも、スタートアップCTOのストックオプションで得られる報酬に焦点をあてて、スタートアップの実態を明らかにしていきたいと思います。企業が上場する際に公開される有価証券届出書を基に、株主の持株比率と上場した時点における資産の価値(公募時点資産価値)を算出し、CTOが上場時に自社の株をいくら分所有しているかを明らかにすることで、上場時のストックオプション収入がどれくらいなのかを調査しました。
調査の方法と対象
2015年から2017年に上場したスタートアップ計16社が対象です。持株比率及び公募時点資産価値の算出は、有価証券届出書(新規公開時)の株主状況に記載されている潜在株式数を含めた総株式数を基に算出することとし、株主が保有する株式数(潜在株式を含む)を総株式数で割ることによって持株比率を算出しました。また公募時点資産価値の算出は、株主が保有する株式数(潜在株式を含む)に公募価格を用いて算出しました。対象者は、新規上場申請のための有価証券報告書の役員状況において、役名にCTOと記載されている者、もしくは、最高技術開発責任者に匹敵する役名を持つ者(例:取締役技術担当、技術開発本部長)とし、CTOと分類しました。また記載がない者に関しては独自の調査を行い、CTO役職に相当する者をCTOと分類しました。
調査対象企業は下記の通り
シャノン、うるる、ユーザーローカル、Fringe81、UUUM、PKSHA Technology、ユーザーベース、アトラエ、アカツキ、はてな、App Bank、富士山マガジンサービス、マーケットエンタープライズ、Gunosy、Aiming、ファーストロジック
スタートアップCTOの公募時点資産価格の平均値は1億5695万円、中央値で9280万円
結論としては、CTOの公募時点資産価格の平均値は1億5695万円、中央値は9280万円でした。上場時のCTO持株比率の平均値は1.58%、中央値も1.58%でした。また今回の調査では、CTOが在籍していた会社数は16社でした。それぞれの分布は下記の通りです。
技術系の最高責任者にしてはあまり大きな持株比率および金額ではないと言えそうです。
CTO持株比率低すぎ問題
「IVS CTO Night & Day 2016 powered by AWS」にてCTOの年収および持株比率が低すぎるのではないかという話がありました。
「なし(ストックオプションあり)」というのが一番多い結果で3割ですね。「ストックオプションもなし」という方もけっこういらっしゃいます。
この結果で、さっきの給料とパッと並べてみたときの感覚ってどうでしょうかね? 安武さん、なんか首振ってませんか?(笑)。
(会場笑)
安武 正直に言って、これは問題じゃないかなと思うんですよね。
松尾 うーん……。やっぱり少なすぎる?
バタラ そうですよね。「ストックオプションあり」というこのカテゴリも、何パーセントかわかると一番いいんですけどね。なんとなくわかるんじゃないですか。まだストックオプションになってても、パーセンテージで。
今回の調査でも4%以上保有しているCTOはおらず、大半を創業者もしくはVCが保有しており、CTOといっても、ストックオプションを含めても大きな比率を保有していない現状が明らかです。CTOの持株比率がここまで低い理由は不明ですが、CTOがもっと持株比率を持てるようになり、Exitして技術のわかるお金持ちエンジニアが増えて、エンジェル投資をするようになると、日本のスタートアップも技術にもっともっと強い会社が増えるのではないかと考えています。
まとめ
どうしても技術一辺倒の人の場合、持株比率やストックオプションなどの待遇部分がよくわからずに、CEOの言うがままになってしまっているケースも少なくないと思っています。こういった情報を提供することで、CEO、CTOがもっと持株比率やストックオプションについて深く知識をもった上で、適切なコミュニケーションができるようになってほしいと思います。