愛読書は『失敗の本質』

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 小池都知事の愛読書は、『失敗の本質』だそうだ。現・帝京大教授の戸部良一氏ら6名の学者によるこの書は、戦時の日本軍の動きを詳細に検討。組織論として論じて版を重ねる、ロングセラーである。

 小池氏は以前からこれを絶賛し、文庫版の推薦の帯文も書いたほど。ならば、さぞかしこの本を読み込んでいるはずだが、では、今回の失敗は一体、何だったのか。「読み込み」は卓上のものだけに過ぎなかったのか。

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 彼女の場合、失敗の「本質」は明らかだ。

 もともと小池氏は、権力者の傍にいることで、自らをフレームアップして力を得てきた。しかし、都知事選、都議選の圧勝で自らが権力者に。「排除」発言で、その“女帝”然とした振る舞いが、全国民の目に明らかになってしまった。

愛読書は『失敗の本質』

「ワンマンぶりは内部でも際立っていました」

 と内情を明かすのは、「希望の党」のさる関係者だ。

「中山成彬・元国交相はマニフェストのことで何度も提言をしたものの、“黙ってて”みたいな感じで邪険に扱われたそう。中山さんは“(小池氏は)自分に都合よく人を使っているだけ”と怒っていましたし、小池さんに選挙出馬を促すショートメールを何度も送っていましたが、これにも返信すらなかったそうです」

「公約担当責任者」に指名されたのは中山氏ではなく、後藤祐一代議士である。

 しかし、この後藤氏も、

「実際、小池さんの指示に従ってマニフェストを書くと、矛盾点が出てきた。それを指摘すると、“私の言うとおりやってればいいのよ!”と叱られた、と」(同)

崩壊した「三都物語」

 もちろん、リーダーシップは必要だが、人の言うことを聞くのも必要である。

若狭氏は落選(撮影・堀田喬)

「そうした独善的な姿勢は、『三都物語』の崩壊にも表れましたね」

 と言うのは、大村秀章・愛知県知事の周辺である。

 小池氏が、選挙直前、大村知事、大阪府の松井一郎知事との連携を発表したのは、ご記憶のとおり。しかし、直後に大村氏が離脱し、「希望」失速のひとつの証左となった。

「小池さんサイドが勝手に大村を『顧問』にしたり応援に駆り出そうとしたりしたのがキッカケ。大村は『希望』に加わるとも言ってないのに、利用しようとするのが我慢ならなかったのです。そのくせ、小池さんは大村に近い候補者たちの『希望』公認をガンとして認めなかった」(同)

 その大村氏が離脱した後、小池氏が慌てて招き入れたのが、名古屋市長の河村たかし氏である。しかし、

「小池さんは、今年の初め辺りから河村さんを無視し続けていたんです。“国政政党を作るなら、一緒にやろう”との売り込みにうんざりしてね。その人と手を取り合うなんて、貧すれば鈍する、でしょうか」(同)

シールで「小池隠し」

 こうした強烈なリーダーの元には、その威を借る「君側の奸」が現れることは歴史が証明する通り。「希望」にもさまざまな場面で、小池氏の威光を借りる「ミニ小池」が出てきたという。先の党関係者によれば、

「中でも最側近の若狭勝さんは顰蹙ものでした。『希望』の候補者選定は旧民進党系が玄葉光一郎・元外相、『希望』プロパー系が若狭さんの担当でした。しかし玄葉さん曰く、2人の間で調整が必要になると、いつも若狭さんが“小池の意向だから”で押し切ってしまう。苦々しく思っていました」

 全国紙の政治部デスクが受けて言う。

「10月14日の日経新聞に希望の東京での全候補者を紹介する全面広告が出たんです。しかし、なぜか若狭さんの写真だけがなかった。党本部に聞くと、若狭さんは単独の広告を出したいのでこっちを外してくれ、と要求してきた、と。“全員まとめて載せたかったんだけどね。選挙広告は税金でまかなわれており、出せる回数が決まっている。普通の候補者なら、それは困りますよ、と言えるんだけど、若狭さんに言われたらしょうがないでしょ”とこぼしていました」

 若狭氏は議員になってわずか3年。その身勝手が通るのだから、小池氏の威光恐るべしである。

 周知の通り、この選挙で若狭氏は落選し、ただの人になった。

「でも、彼の政治塾『輝照塾』は11月に2回目の講義が予定されている。落選者が教える塾に誰が行くんでしょうね」(先の党関係者)

 こうした党の歪みを敏感に感じ取ったのか、チャーターメンバーの1人である長島昭久氏は、

「選挙終盤になると、ポスターの小池さんと写っている箇所に、ペタッとシールを貼り、自分だけの写真に変えていました。まさに“小池隠し”です」(同)

 皮肉なことに、小池氏のお膝元・東京で、選挙区で勝ち上がったのは、23人中、この長島氏のみ。僅差での勝利の秘訣は、小池隠しにあったのかもしれない。

「週刊新潮」2017年11月2日号 掲載